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第十一話「釣り大会への参戦」

 

 フィッシュアローをマスターした翌日、俺は港の掲示板を眺めていた。新しいクエストや面白そうな情報がないか探していると、目を引く告知が貼られていた。


『第1回アルネシア釣り選手権 開催決定!』

『日時:今週土曜日 14:00~18:00』

『場所:オルディア港およびノースリーフ』

『優勝賞品:レア釣り具セット』

『参加費:100G』


「釣り大会か!」


 俺は興奮した。これまでソロや仲間との釣りばかりだったが、他のプレイヤーと競い合う機会は初めてだ。


 詳細を読むと、大会は4時間の制限時間で、釣った魚の総ポイントで順位を決めるらしい。魚種やサイズによってポイントが設定されており、レアな魚ほど高得点になる仕組みだった。


「面白そうだな。参加してみよう」


 参加登録をしようとすると、後ろから声をかけられた。


「ウシオ、釣り大会に興味あるのか?」


 振り返ると、カイトが立っていた。


「カイトさん!はい、参加しようと思ってます」


「俺も参加予定だ。君なら上位入賞も狙えるんじゃないか?」


「そうでしょうか。まだまだ初心者ですよ」


「謙遜するな。現実の知識と動物交感スキル、それにフィッシュアローまで覚えた。十分に戦える」


 カイトの言葉に勇気づけられた。


「でも、他の参加者はどのくらいのレベルなんでしょう?」


「様々だな。釣り歴数年のベテランもいれば、君みたいな新人もいる。大事なのは技術じゃなくて、海への理解度だ」


 その時、掲示板の前に他のプレイヤーがやってきた。


「おい、これ見たか?釣り大会だって」


「へー、珍しいイベントだな。参加する?」


「釣りなんて地味すぎるだろ。戦闘の方が面白い」


 通りすがりのプレイヤーたちは興味なさそうに去っていった。


「やっぱり釣りは少数派なんですね」


「だからこそ、やりがいがあるんだ。少数精鋭で競い合える」


 俺は参加登録を済ませた。参加者リストを見ると、現在15名の登録があった。


「思ったより多いですね」


「海洋系プレイヤーも増えてきたってことだ。君の影響もあるかもしれないな」


「俺の影響?」


「掲示板で話題になってるだろ?海で活動してる狩人がいるって」


 そういえば、最近他のプレイヤーから釣りについて質問されることが増えていた。


「参加者の中には、君を見て釣りを始めた人もいるかもしれない」


 それを聞いて、俺は身が引き締まる思いがした。注目されているということは、それだけ期待もされているということだ。


「頑張らないとですね」


「その意気だ。ところで、大会に向けて準備はどうするんだ?」


「準備?」


「釣り大会は運だけじゃ勝てない。戦略が必要だ」


 カイトが詳しく説明してくれた。


「まず、時間配分だ。4時間をどう使うかが重要。最初から最後まで同じペースでやってたら、疲れて集中力が切れる」


「なるほど」


「それに、ポイント制だから、量より質を狙う場面もある。レア魚一匹で、普通の魚10匹分のポイントになることもある」


 確かにそうだ。ただ闇雲に釣るのではなく、計画的に動く必要がある。


「場所選びも大切だ。オルディア港とノースリーフ、どちらでやるかで戦略が変わる」


「港は安全で確実に釣れますが、ノースリーフの方が高得点の魚が狙えますね」


「そういうことだ。リスクとリターンのバランスを考える必要がある」


 俺は頭の中で戦略を練り始めた。


「まず最初の1時間は港で確実にポイントを稼ぐ。その後ノースリーフに移動して、大物狙いに切り替える」


「いい考えだ。でも、天候や潮汐も考慮に入れろよ」


「あ、そうでした」


 大会当日の潮汐表を確認する。満潮が午後3時、干潮が午後6時の予定だった。


「満潮前後がチャンスタイムですね」


「その通り。みんな同じことを考えるから、場所取りも激しくなるぞ」


 大会まであと3日。準備期間を有効活用しなければならない。


 翌日から、俺は本格的な大会準備を始めた。まずは装備の点検。釣り竿、ルアー、餌、全て最高の状態にしておく必要がある。


 ガンソウ爺さんの店を訪れた。


「おお、ウシオ。釣り大会に出るそうじゃな」


「はい。何かアドバイスをもらえませんか?」


「ふむ、大会では普段と違う魚が釣れることがある。特別な餌を用意しておくと良いぞ」


 ガンソウ爺さんが特別な餌を見せてくれた。


「これは『プレミアムルアー』じゃ。レア魚に効果的だが、値段も高い」


 1個500Gもする高級ルアーだった。


「大会で使うなら、3個は欲しいところじゃな」


 1500G。かなりの出費だが、優勝賞品のことを考えれば投資価値はある。


「買います!」


 プレミアムルアーを購入し、他の装備も最終チェックした。


 大会前日、俺は一人でノースリーフに向かった。最終調整として、実際の釣り場を確認しておきたかったのだ。


 現地では、他の参加者らしいプレイヤーも何人か見かけた。みんな同じことを考えているようだ。


「明日は激戦になりそうだな」


 夕方、港に戻ると、カイトが待っていた。


「調子はどうだ?」


「バッチリです。明日が楽しみです」


「その意気だ。でも、忘れるなよ。大会は楽しむものだ。結果も大事だが、まずは釣りを楽しめ」


「はい!」


 大会当日の朝、俺は早めに港に到着した。既に多くの参加者が集まっており、会場は熱気に包まれていた。


 受付で参加者証を受け取る。番号は『7』だった。


「よろしくお願いします」


 隣の受付にいた参加者に挨拶すると、相手も笑顔で応えてくれた。


「こちらこそ。お互い頑張りましょう」


 参加者は最終的に20名になった。年齢も職業も様々で、中には女性プレイヤーも数名いる。


「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」


 運営スタッフが大会の説明を始めた。


「本日の『第1回アルネシア釣り選手権』のルールを説明いたします」


 改めてルール確認。制限時間4時間、魚のポイント制、使用道具は各自持参、フィッシュアローも使用可能。


「それでは、14時ちょうどに開始いたします。準備はよろしいですか?」


 俺は深呼吸をした。現実の釣り部での経験、ゲーム内で積んだ知識と技術、全てを出し切る時が来た。


「よし、やってやる」


 時計の針が14時を指した瞬間、大会が開始された。


「第1回アルネシア釣り選手権、開始!」


 俺は準備していた戦略通り、まずは港の桟橋に向かった。確実にポイントを稼ぐことから始める。


 竿を投げると、すぐにアタリがあった。


「よし、幸先いいぞ」


 コモンフィッシュを釣り上げる。1ポイント獲得。


 大会が始まった。俺の挑戦が、今始まろうとしていた。

【アルネペディア】

・第1回アルネシア釣り選手権:オルディア港で開催された初の釣り大会。制限時間4時間、魚のポイント制で順位を決定。参加費100G、優勝賞品はレア釣り具セット。


・プレミアムルアー:レア魚に効果的な高級ルアー。1個500Gと高価だが、大会などで使用される。ガンソウが販売。

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