私は私が嫌いだ
私は私が嫌いで。
だから好きになろうと思った。
だって。彼に申し訳ないから。
好きです。
そうまっすぐに伝えてくれた君に失礼だから。
中学卒業。
高校は別。
幼なじみでもご近所でもなく。
そもそも誰かと遊ぶということを知らない私は、部活がないなら帰宅する。塾に行く。習い事に行く。という選択肢しか頭にない私は、彼と遊びに行くなど頭の片隅にもなくて。
だって教室のなかでの関わりだから。
共通の友人たちを交えて話をするだけ。
そんな私を彼は好きだといった。
私が嫌いな私を。
彼とは中学で知り合って。
席が近いから話をしていて。共通の友人がいて。
その友人とも私は放課後遊ぶということもないのだけれど。
私は特別かわいいわけでも。
愛嬌があるわけでも。
賢いわけでも。
運動ができるわけでも。
中心になるわけでも。
なんでもない。
なんでもない。
そんな私が嫌いで。
それでも。
それなりの点数で。
それなりの評価で。
だからクラスで浮くこともなく。
目立つこともなく。
なにか1つでも秀でていると自信があるものもなく。
なにもない。
だからといって。
なにか出来るようになろうとか。
好きなことを突き詰めようとか。
それもなくて。
なにもなくて。
ただただ。
学校にいって。
授業を受けて。
部活にいって。
塾にいって。
その道だけを歩いて。
それが嫌とかなくて。
それが当たり前で。
それ以外、考えになくて。
門限?
その時間はすでに習い事にいっている時間で。
放課後遊ぶ?
帰って宿題して習い事に行く準備をするよ。
友達と公園で親が迎えにくるまで。はたまた門限まで遊んでいる?
それは本や画面の中の出来事で。
私の現実にはないもので。
それが私の小学校からの生活で。
それがほしいとも思わなかった。
面白味のない子供だと思う。
それが私で。
そんな私が嫌いで。
嫌いなら変わる努力をするべきなのに。
でもそれが面倒で。
別に今の状態で困っていない。
私はそれでいい。
別に自分のことを嫌いでもやっていける。
コミュニケーションはとれる。
クラスで話をする人がいる。
部活動にだって参加している。
学校行事にも、クラス行事にだって参加する。
なにも問題ない。
きっかけをくれたのが、彼だった。
好きだといってくれた。
どこがいいのか分からない。
どうして好きなのか分からない。
でも。
好きといってくれた。
それが純粋に嬉しかった。
どうして自分のことが嫌いだったのかもう分からないけれど。
きっとなにか特別な理由があったわけではないのだろう。
ただ純粋に、周りをみたとき。
あの子に比べたら。
この子に比べたら。
そうやって勝手に比べて。比べて。比べて。
一人で勝手に落ちていったんだ。
ーーーー!
彼の声だ。
私を呼んでいる。
ーーー。ーー。ーーーーーーー。
うん。そうだね。
ありがとう。
まだまだ私は私の嫌いなところがあるけれど。
私の全てが好きにはなれていないけれど。
それでも。
君が好きといってくれた。
笑顔がかわいい。
話していて楽しい。
守りたい。
そういってくれた。
そんな私を。
君がみている私を。
好きになる。
君が好きな私でいたいから。
君に嫌われたくないから。
君に好きでいてほしいから。
だから。
君が好きだといった私になる。
その私を好きになる。
君が好きだという私を好きになれたら。
きっと。
君の好きという感情を理解できるだろうから。
そうしたらきっと私は。
心から。
君に。
好きといえるだろう。
私を好きな君を、好きになれるだろう。
だから好きになろうと思った。