3-2 ヴァルと僕は毎日いっしょに遊ぶ
おばさんが言ったとおりで、僕はヴァルのことをなるべく秘密にしておきたかったんだけど、おじさんたちにはその日のうちにばれちゃったし、三日もしないうちにうわさは村じゅうに広がった。
実をいうと、おとなたちは村にドラゴンの子どもが迷い込んだことをよく思わなかった。悪いことの起きる前ぶれじゃないかと不安がる人もいたし、僕が悪い子だから引きよせたんじゃないかと言う人もいた。
だから、おじさんたちもヴァルを追い出さないだけで一緒にいていいとは言わなかったし、村の子どもたちも、みんな珍しくって見ているけど、うんと遠くからで、近づいたり、僕にヴァルのことをきいたりすることはなかった。まるでドラゴンに興味をもつなんていけないことみたいだった。
それでも僕は、ヴァルが来てうれしかったんだ。みんなが僕のことをひそひそとうわさするのも、学校や教会で一緒に座りたがらないのもここへ来てからずっとのことでなれっこだったから気にならなかった。僕は毎朝なるべくおそくに学校へ行って、お昼に授業が終わるといちもくさんにうちへ帰った。ヴァルも待ちかまえていて、僕がパンとチーズを食べるのをじれったそうに
「そんなまずそうなメシ、はやく終わらせろ」
って急がせた。僕がお昼ごはんをのどにつまらせたりしながらようやく胃ぶくろへ押し込むと、僕たちはすぐに外へ飛びだしてゆく。おばさんが
「宿題をしてからになさい」
なんて言おうものなら、
「うるせぇ、ババァ」
って、ヴァルが言った。
ヴァルは本当に口が悪くて、行進ごっこをしてる子たちを見て
「あいつらは何がたのしくて、あんなバカみたいに声はりあげて歌なんか歌いながら歩いてるんだ?」
って僕にきいたりした。
「兵隊ごっこだよ。とりでに向かって行進してるんだ」
ヴァルのキンキン声はよくとおるから、僕は(本当は僕もみんなの歌はヘタクソだと思ってたけど)子どもたちに聞こえないか心配になりながら教えてあげた。ヴァルはいつも鼻でわらって言った。
「くだらねぇな。俺たちはもっとおもしろい遊びをしよう」