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くう
うなずいたセイベイは、だがね、とつけたした。
「 どうやら先生は、枕よりも、あの箪笥のほうが嫌だと腹をたてていたようだ。 なんだか、 ―― 『天女』がきにくわないらしくてね」
「そりゃあ、・・・、どういうわけだ?」
ヒコイチの横にきた先生が冷たい声で『いね』とだれかに命じたのを思い出す。
先生と手をはなしたときにそばにきた異国のあの女も、『天女』だったのか?
「先生が怒ったかおで、『人魚』と『天女』は、おなじようなものだって、言ってたよ」
「『人魚』と『天女』じゃあ、すんでるところもずいぶんちがうじゃねえか」
「ああ、だけどおなじように、人の男を喰うそうだ」
「くう!?・・・・『天女』が?」
空をたおやかに舞っていた、アレが?