黒い髪
もうすぐ終わります。。。チョウスケうんぬんは、よろしければ『長屋の 』をひろい読みしてください。。。
尻尾をたてて縁側からとびおりていった猫を見送り、ヒコイチもお茶で口をながした。
「 ダイキチさんからか?いいや、しりあいの坊さんに、箪笥と枕をおさめたってところまでだが、 ・・・まさか、あの括り枕みてえなモンの中も・・・?」
「髪だったんだよ」
「 ―― か 」
ごぞり
ヒコイチはその布まくらを押したことがないはずなのに、音と感触がよみがって、からだがかたまる。
「 あの布枕は、なにも《括り枕》を下の木の台にうちつけているんじゃあなくてね、ようは下の台は、木の箱になっていて、そこに、ながい髪束が、とぐろをまいていくつもいれてあるのを、おしこんでおくために、布が幾重にもかぶせてあったんだよ。 中の髪は、あの色のぬけた異国のひとのやわらかい髪ではなく、あたしらのような黒い髪だったようだ」
ぞくり
さきほど思い浮かべた男の影と、同じ長屋に住むチョウスケからいつか聴いた、庭に女の骨と髪をうめた男を思い出し、ヒコイチは舌をうった。
それをわらったセイベイがつづける。
「先生がいうには、その黒い髪は男のもので、《逃げないよう》に、釘でうちつけてあったんじゃないかってことだよ」