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嘘くさい
八、
「さて、本当の芝居みたいに、うまいことはなしがおさまたっじゃないか」
「なあにが。 あんな嘘くせえ芝居。サネばあさんはいいとして、サダさんとタイゾウさんにあんなに頭さげられて、こっちはなんだか居心地わるくて、すまねえ気になってきたぜ」
「べつにいいだろう。騙したわけでもないし、すこしはなしをつくったぐらいなんだから」
セイベイがすましていうのに、膝にいる黒猫がにゃあ、と鳴いてみせる。
ヘイジが無事に目をさまし、枕からも頭がはなれ、もうひと月ちかく経った。
弱っていたからだを慣らし、前とおなじように工房へも出始めているという。
タイゾウとこんどはよく話し合い、それでもやはり、そのまま『見習い』を続けることにしたヘイジは、きっと立派な職人になるだろう。