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足の裏に
「《あれ》は、ヘイジさんから『生えて』いるのではございません」
先生がヒコイチの頭のなかをみたかのように首をふる。
「 ―― あれは、あのかたまりからのびた《髪》が、ヘイジさんへとはいりこんでいるのでしょう。ほら、枕から、ヘイジさんの頭にささってはいりこんでおりましたでしょう?」あれとおなじでございますねえ、とため息をつき、あしもとに目をおとす。
つられてじぶんのあしもとをみたヒコイチは、きゅうに、素足の裏にあたる、細く柔らかいような硬いような重なりの、いやな感じをうけた。
黄金色にかがやいているのだとおもったこの岡には、いちめんに、あの《紗》の糸がしきつめられ、そのほそくやわらかいたくさんの『糸』の感触が足の裏から伝わって ―― 。
ぞぞ、とはしりぬけた寒気で、つながった先生の手をつよくにぎりこむ。