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夢の中
「 っな、 」
あわててみるが、右側には誰もいない。
いや、右どころか、あたりは白く靄がたちこめ、だれもいない。
こりゃあ、カスミってやつか・・・
あたりにただよう白いモヤをみておもう。
冷たく湿った山に溜まるものでもなく、あたたかい朝にまだ弱い陽をぼんやりと通すものでもなく、その白い雲のようなものは、そこにあって、匂いもなく、肌にもあたらない。
そこでヒコイチは気づいた。
「 ああ こりゃあ 夢の中か 」
おのれの声がどこか遠くから響くようにきこえ、目がさめた。
「 ―― ああ こりゃあ 夢の中か 」
そう口が動いている最中に、目がさめたようにさっきまでみていたものがもどってきた。