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寒気(さむけ)
「 生きて・・・ん だよな?」
おもわずつぶやくと、サネがひ、っと息をのんだ。
「生きておりますよ。ほら、鼻からゆっくりとした息もでていますでしょう?」
『先生』がヒコイチの手をとってヘイジの鼻元へやる。
「なんだいヒコさん、おどかすんじゃないよ」
サネにおこられて、すまねえすまねえ、といいながら枕に顔をよせた。
たしかに、木の台に木綿の布をとめる釘がみえた。
あまりの数と染みだした錆びにぞっとしたが、ほんとうにさむけがしたのは、その薄い布をよくみようとさらに顔をよせ、ふれたときだった。
ぞぞぞぞ と、いつもの寒気がうしろくびをかけぬけ、おもわず背が伸びる。
つづけて
ふうぅ と、 右の耳に息がかけられた。