表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/71

病をはらう坊主



 五、



 むかいあったタイゾウは、ヒコイチがおもっていたよりもずっとやつれて疲れていた。


 それにくらべ、サネの妹のサダは、顔色はわるいが、しっかりと気を張っていた。

「ほら、おまえさん、こちらが姉さんのお店の大旦那さまで、はなしをきいて、悪い病をはらってくれるっていう《お坊さま》をみつけてくださったんですよ」


 四十路よそじまえだというサダは、たしかにサネに似ていた。はっきりしたしゃべりかただが、声はやわらかく、初めてあったヒコイチたちに頭をさげ、よろしくおねがいもうしあげます、とすがるように頭をさげると、姉の手をとり、しっかりとうなずいていた。



「坊さまなあ・・・どこの宗派だい?」

 タイゾウは疲れ果てた声できく。



    があっはっはっはっは


 いきなりの大きなダイキチの笑い声に、ヒコイチもおどろいた。


「『宗派』だと?このわしに『宗派』があるとでも?そんなもんにとらわれておる坊主に『病』をはらえるとでもおもうか? いいか、おまえさんの息子についとるのは、医者には治せん悪い病だ。そういう悪い病のもとは、たいがいが悪い《念》でできておる。 死んだ者が残したものか生きておるものがつくったか、そオいう悪い《念》を、ひろってしまう者がいて、その者はあるときからいきなりおかしなことになる。 家人も手をつけられぬようなことになり、医者になど治せんどころか、みたこともなくわからぬようなものばかりだ。だがな、 ―― ここで見捨てたり、あきらめたならば、その者は戻ってはこられぬ。 よいか、親御殿。息子をたすけたくば、この坊主を信じて会わせろ。いままでもわしを信じられぬ家人に軒先で追い払われ、たすけられぬ者が多くいた。 だが、信じろ。わしは、あんたの息子をたすけたい」

 いいきったダイキチは両膝にこぶしをおき、ぐうっと身をのりだした。


 むかいあったタイゾウの顔は赤くこわばり、みひらいた目はうるみ、ダイキチをにらみかえすようだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ