ヒコイチ一座
申し訳ございません。ダイキチさんと『先生』については、よろしければ『蓮池 』をひろい読みしてください。。。
「 ―― なあ、ヒコ、こりゃちょっと、『先生』もつれていったほうがいいかもしれないな」
「は?『先生』も?ってことは、ダイキチさんもかい?」
『ダイキチ』さんというのは、二人の知り合いの下駄屋の隠居で、一条のぼっちゃまと『百物語会』をするのが好きな年寄りだが、すこし『不思議』がみえる質で、街から離れた《お屋敷》でいっしょに暮らしている『先生』は、《ヤオビクニ》という不老の女だ。
「ダイキチさんもいるといいが、そんな大所帯で行くとなると・・・。ああ、そうか、そうすると、ほら、ヒコがまえに、あたしのとこに来たんじゃないかって心配した、『あやしい坊さん』にでもなってみるかい?」
「・・・だれが?」
「あたしらだよ。《ヒコイチ一座》で、サネの妹さんのところへゆけばいい」
「じいさん・・・そういうろくでもねえ考えは」
「楽しくなってきたねえ。冥途の土産ばなしがまたふえそうだ」
さっさと立ち上がって硯箱をさがしにゆく。
「ろくでもねえなア・・・」
困ったように背をのばして後ろ手を畳につけると、いつのまにか姿を消していた黒猫がヒコイチの膝にとびのった。
『 おれはいかねえよ。いい女としっぽりする場面があるっていうなら、行ってやってもいいけどよ 』
丸くなろうとする猫を片手ですくい、むこうへほうった。