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その日から
いや、これはやりすぎだろうと首をふりながら《紗》に手をおき、またおしてみる。
ごぞり
詰め物は容易にへこむ。
古いとはいえ、藁などの堅いものではなさそうだ。何度か押して、中の木綿の布が何重にもなっていそうだと気づき、やはりこの《紗》は、汗かきな持ち主のためか、と思いながら、どれ、と横になり、畳に置いた枕に頭をのせてみた。
「ヘイジ!いつまで寝てるつもりだい?」
つぎに目をあけたのは、つぎの日で、母親が障子をあけてあきれた顔で見下ろしていた。
そうしてその日から、ヘイジはその枕で眠るようになっていった。
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