寸法
「 ひきだしも外側とおなじケヤキでつくってあるようだな。おれたちが桐でつくるような、きっちりはまるつくりじゃなくていいんだろ。 脚もあるし、置き箪笥なんだろうが・・・、この右の片開きの戸が、どういう仕組みなのかが、・・・やっぱり、ひらいてみねえとわからねえなあ」
腕を組んで紙にかいた箪笥の長さをじっとみる。
「・・・おやかた・・・、この寸法は、合っていますか?」
「ああ?そりゃおめえ、だれにきいてんだ?」
「あの、右の、扉の中は、たしかに中も、その寸法で?」
「ああ、やっぱりおめえもそうにらんだか?」親方である親父はすこし嬉しそうに紙にかきとめた数をさす。
「そうなんだよ。みただけじゃわからねえ仕掛けをここにいれるとしたら、底板か、側と内の板の合間にいれるしかねえだろう? だからおれも、内側はじっくりながめて測ってみたさ。だけどなあ、内はケヤキじゃねえ板でつくってあるようだが、ひらきの中の板と外の板は、ほとんど隙間がねえとみた」
「そ・・・れは・・・」ヘイジは一度口をとじ、あらためて親方の顔をみると、じぶんもみていいかとたずねた。
たしかめろ、と親父の顔でいった親方は、息子がすっかり職人らしくなってきたと心の中でよろこんでいた。
つぎの言葉をきくまでは ―― 。