30/71
手ごたえ
押してみると、 ごぞり となにやら硬そうな手ごたえがあるが、柔らかくもある。
昔のもので、藁や草をいれたものもあるときくから、そういうものかもしれない。
もういちど押すと、やはり、 ごぞり とした感じがあって、布はへこんだ。
それにかけられた《紗》は、なんだか絹より張りがあるようで、押した手に、はりついた。
「この薄いのは、なんのための上掛けだ?」
どうやら夏場用として、肌につくのを防ぐためにかけられたのではないらしい。
さらに造りをみようとしたとき、「おいヘイジ、ろうそくを運べ」とむこうから声がかかった。
はい、と返事をして枕を箪笥へもどし、扉をしめて立ち上がった。
その夜、親父は夜通し箪笥をあらため、寸法や造りを紙へとかきとめ、つぎの朝ヘイジを呼んでそれをみせてきた。