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『家宝』



 もちろん、親子の話であるし、漏れきいただけでもあるし、首をつっこむところではないとわかっているが、ヒコイチの口はきかずにとじておけなかった。


「 ―― ってエことは、あの箱ンなかに、トメヤさんの『家宝かほう』が入ってるわけで?」


「 あたしは『家宝』とは思わないが、ご先祖様がそう伝えるように添え状をつけててね。『これはトメヤ初代が天女よりたまわりし羽衣はごろもで候』なんて書かれてるが、あれは何代目かがあとでつけた話さ。ただの《しゃ》の着物だが、大昔、唐からでもきたものだろう。 たしかに、いまだに目をみはるような出来だし、むかしのひとはあんな織物はみたこともなかったろうから、そりゃ『天女の羽衣』だとも思うだろうさ」

 セイベイがつまらなそうに庭をみて、たしかにあれはお上の蔵にしまってあってもおかしくはないぐらいだよ、などとつけたす。


「そりゃ、お宝じゃねえか」


「 ―― いつ、どうやって先代が手に入れたのかわからないし、それを考えると店にお咎めがくるかもしれないしね。おもてにだせないってことで、家の者だけがみる宝って意味の『家宝』だよ」

 あの柄の浮き上がりかたといい、いまものこる糸の染め色といい、いまだにあれより上の絹織物はみたことがないしね、と自慢でもなさそうに口にしたとき、サネがお茶をもってやってきた。




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