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枕
木の台にはなんの装飾もなく、この明るい木肌はツゲだろうか?濃く黄身がかって時が経っているのはわかる。
だが、上にあるこれは?この枕は・・・。
みたことのないつくりをしている。
下の台が平たいぶん、上にのせるのも平たくしたのだろうか。
それに、この布はなんだ?
たしか、《紗》とかいうもので、前に坊さんが羽織っているのをみたことがある。
だが、これは ―― ?
この枕も古いのだろうかと、その黄ばんだ布にそっと手をおくと、おもっていたような柔らかさではなく、漁の網に手をおいたような硬く冷たい感じをうけた。
いや、みためは細い糸で織られた布だし、織り目はすこし粗いが、どうみても網ではない。
だが、この糸は絹糸ではないのかもしれない。手ざわりは、知っている絹織物とはちがうものだ。
それに ――
この《紗》は、上掛けか?
うすい布の下に、ふつうの木綿の布に詰め物をした枕がみえる。