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また音がした
家についたとたん、タイゾウは風呂敷に包まれたそれを、部屋まで運んでおくようにヘイジにいって、湯をわかすようかまどにかけよると、家じゅうのろうそくをだせ、とサダに言った。
きっと親父は夜通しこの箪笥をながめまわし、細工の《仕掛け》をさがしだすつもりなのだろう、とヘイジは親父の部屋の板の間の上に箪笥をおろした。
ごと
また、中で重いものが動いた音がする。
かついでいる間はなにも音はしなかった。
かたむけたときにだけ音がするならば、きっと細工につながるなにかが動いて音がするのだ。
ヘイジはむこうにいるタイゾウがまだこないだろうとうかがいながら、ホウオウの細工をつまんで箪笥をあけた。