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《親方》に見つかる
ようやく、箪笥のことを聞いたのは、その日新しく箪笥を頼んだ大店の家でふるまわれて帰ってきた父親だった。
「 おい、これは・・・いったいどこから持ってきた?」
木の削りかすなどをためた工房のすみにある、黒い箪笥のそばに膝をついてきいた。
あれ?おれはあんなところに箪笥をおいただろうか?
「 あ、申し訳ありません。 親方にはすぐ言おうとおもっておりましたのに ・・・そうだ ・・・おかしいなあ、すっかり忘れていました」
工房でも家でも、見習いであるうちは『親方』とよぶことになっている父親に、頭をさげる。
自分の工房に、よそでつくられた箪笥などいれたくないのだ。
すぐにその箪笥をここからだそうとおもってかけよると、親父が腕をのばし、ヘイジが寄るのをとめた。