いまのあつかい
申し訳ございません。セイベイ親子うんぬんは、『西堀の 』をひろい読みしてください。。。
この『トメヤ』の親子も、いろいろと越えなきゃならないものを越え、あのとき隠居が口にしたように、どうにかおさまるところにおさまり、あの頼りなかった息子はいまでは立派な店の主だ。
反物の仕入れもなにも、すべて息子に引き継いだ、とヒコイチにもらしたときのセイベイの顔は、すこしわらいをこらえるようなものだった。
「 ―― こちらから失礼もうしあげます。ご隠居さんに、松庵堂の柏餅でもどうかと、おうかがいいたしました」
「おお、ヒコかい」
「ああ、ヒコイチさん、たまには表からおはいりくださいな」
今では息子のセイイチは、初めてあったときのあの様子がこちらの思い違いだったような、丁寧な言葉で接してくるようになった。
いや、最初の態度が正しいのであって、いまのこのもてなすような扱いが間違いだとヒコイチは首の後ろがむずかゆくなるような気持ちで頭をさげる。
「 客でもねえのに表からなんてとんでもねえ。ご隠居のお顔をおがんですぐ帰りやす」
「なんだい。 あたしはご開帳された観音様かい?」
「どうぞごゆっくりなさってください。いまサネがお茶をもってまいります」
障子をひらいて顔をだしたセイイチはヒコイチにあがるよう促し、セイベイの前におかれた箱をあらたまったようにもちあげると、ではこれはまた蔵へ、と両手でかかげながらさがっていった。