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あらためて《見習い》に
大工は朝が早くて仕舞いは早い。
だが、亡くなった祖父の気持ちをはかったのか、ヘイジはまじめにつとめ続けた。
ただ、雨や雪などの天気のせいで休みになったときなどは、母親に起こさないでくれといって、やはり一日寝ている。
だが、稼いだ金を酒にもつかわず、遊びにも出歩かない息子に、タイゾウなどは、やはりおれの息子だ職人気質なんだ、などとよろこんでいたが、サダは、こどものころよりも心配になっていた。
なにしろ帰ってきてからも仕事のはなししかしない。棟梁にきけば、ほかの大工ともうまくやっているというはなしなのに、サダは大工仲間のだれの名前も知らない。
タイゾウは、ヘイジにときどき木に関することや道具のことで相談をされ、それだけで十分だという顔をしていた。
もともと手先は器用で、仕事もこまかいところまできっちりこなすとほめた棟梁に、どうだい、このまま大工にならねえか、ときかれたヘイジは、その日に父親に、あらためて《箪笥職人》になりたいことを伝えた。
そうして、親父の工房で、《見習い》からはじめさせたのが、三月前ほどだ。