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サネの甥


「《しゃ》の織物でつくってある『枕』かい?さっき『麻みたいな色』っていうんで、織があらくって隙間もみえるような《羅》を思い浮かべたが、『薄くてつるり』としているのだろう? うすい色味の絹糸の目の詰まった織物じゃなく、たしかに、すけるくらい布が薄いのかい?」枕になんて不向きだろうに、とセイベイは腕をくむ。


「 おいサネばあさん、その《紗》でつくった『枕』がほんとうにあるわけじゃねえだろう?そういう『枕がでてくる不思議なはなし』を聞いたんで、そういう《はなし》がよそにもあるのかを知りたいってことだろう?」


 ヒコイチののんきな聞きように、サネが、きっと眉をつりあげた顔をむけた。


「その『枕』を、ほんとうにつかったあたしのおいが、目を覚まさなくまっちまったんだよ。あるときからなかなか目をさまさなくなって仕事に行くのも遅れるようになって叱ったら、じつはこれは『枕』のせいで、その『枕』が、《天女の羽衣はごろも》でできていて、眠ると天女の夢をみられるんで、なかなか目をさますことができないなんて言うもんで、あたしの妹はその『枕』をとりあげて川になげ捨てたんだ。 そうしたら、 ―― いつのまにか『枕』が戻ってて、甥はその『枕』でまた眠ってて、 もう、 ひと月ちかくずっと、 眠ったままで、 まくらが ―― 」

 


 そこで、涙でぬれたサネの目が、ヒコイチをとらえた。



   ずぞぞぞぞぞ、と後ろ首を寒気がはしる。





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