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家宝

 ヒコイチの『友達』の西堀の隠居の顔をみにきただけなのに、そこで下女としてはたらくサネに、ヒコイチのしってる『不思議話』に、天女の羽衣でつくられた枕のことをきかれて。。。年寄りたちと『ヒコイチ一座』としてサネの甥におこった不思議を片付けにゆき、また寒いおもいをするはなし


   カスミってやつか・・・



  あたりにただよう白いモヤをみておもう。


 冷たく湿った山に溜まるものでもなく、あたたかい朝にまだ弱い陽をぼんやりと通すものでもなく、その白い雲のようなものは、そこにあって、匂いもなく、肌にもあたらない。


 そこでヒコイチは気づいた。



    

   「 ああ  こりゃあ  夢の中か  」





 おのれの声がどこか遠くから響くようにきこえ、目がさめた。





  ―――――  




  一、



  ヒコイチが《元締め》のところへゆくのは、三日に一度ほどで、それはそういう決まりというわけでもなく、ヒコイチが背負って売り歩くための品をとりにゆくと、次に売る物がもうだいたい決まっていて、三日後にまたとりにこいといわれるのだ。

 なので、次に売る物が決まっていなければ、十日ほどもあくことがある。


 そういう、十日ほどあいたときに、たまには顔をだしてみるかと西堀の方へと足をむけ、裏の木戸をいつものように通って、隠居のいる離れへと、柏餅片手にやってきた。




 池をみるための縁側へまわり、いつものように声をかけようとしたとき、その手前で男の勢い込む声がきこえてきた。


「 ―― ほんとうにこれは『家宝』だよ、ありがとう親父、なんだか・・・はじめて、息子としてみとめられたような気がするよ」


「こんなものでそんなこと感じるなんて、まだまだのようだね。もっと目を肥やさないと、このさきのご時世わたれなくなる。 あたしの息子ってことは、このトメヤの主人だ。まがいものに騙されたりしたら、ご先祖様にも申し訳がたたない」


「わかってるさ。うちもこのさき、もっと手をひろげられるよう、気をいれていくよ」

 力をこめて答えるのは、西堀の隠居のせがれの声だ。



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