ゴーストNo.7:四神<4>ギフトスキルと聖雷神大剣
俺たちは四神と組んで、合計8人でゴースト退治をすることになった。
俺とコーチャンは庁舎の周りを飛行しながら、茎がもつれたような植物ゴーストと戦っている。
ゴーストは、こちらが作戦を立てている間にも蕾や花をつけて一層成長していた。壁面がなかなか「芸術的」なことになってるぜ。
コーチャンは胸に魔石をかけたままだ。魔石に閉じ込めた飛行魔法はまだ残っているのだろうか。とっくに尽きていて、今飛んでいるのはコーチャンが会得したスキルなのかもしれない。
ともあれ飛行は抜群に上手い。つるからの攻撃を器用に避けて、俺が斬りやすいように滞空する。つるの隙間をくぐり抜けたり、少々アクロバティックな飛行も身についている。
「空を飛びたい」というコーチャンの願いを叶えてよかった。乗り心地最高!
攻撃はファイヤーソードだ。剣を振る度に「ゴッ」と景気のいい音がする。明らかに魔力レベルが上がっているのはコーチャンに乗っているからだろう。
ファイヤーソードで斬り裂いたつるが、炎の熱で水分を奪われ縮んでいく。コーチャンが啄んだ葉や茎も妖気を失いシナシナと地面に落ちた。これらを後でユキが祓い浄める。無力化と祓い浄めのセットでゴースト退治は完結するのだ。
トイロととらちゃんも絶妙のコンビネーションだ。ふたり同時に斬ると切れ味が増すらしい。声を掛け合って同時に剣を振っている。
その度にギャラリーが沸く。とらちゃんは「とら家」でアルバイトをしていた数日間のうちに、ファンが出来たらしい。「とらちゃん、頑張って!」という声が聞こえる。すっかり人気者だな。
看板では鯛焼きだったけど、今の姿は着物にエプロン姿で勇ましく戦う小柄な女の子だ。これが「看板娘」ということなのだろうか。
「イクゾトイロ!」
「オウ!」
トイロととらちゃんは、左右別方向に駆けながら、トゲつるの藪を斬り祓った。あっという間に開ける視界。
ふたりが持つ聖剣は種類も形も違うが、持ち主の息はピッタリだ。トイロの『エクソシグナス』は祓いの最強剣、とらちゃんが持つ『クサナギ』はこの世界に古くから伝わる伝説の聖刀らしい。
「頼もしいです! 中から眠っているお姫様が出てきそうですね。あっ、すみません。そういう童話があるもので」
としおのつぶやきが聞こえてきた。
ユキと玄太さんは交互に、守備力アップや攻撃を効果的にする支援魔法をかけ続けてくれている。
このペアはどことなく雰囲気が似ている。物静かで戦闘中の動きは最小限なところ、しかし放つ魔法は強大で時に恐ろしささえ感じるところ。
北を護る玄武は四神の中で最も位が高いらしい。ユキも討伐隊時代は滅多にいない賢者として注目されたから、デキるやつ特有のクールさなんだろう。
ところで玄太さん、魚は釣れたのだろうか。パチンコと映画には行ったの? といらん心配をする俺である。
それにしてもだ。ゴーストは斬っても斬っても新しく出てくる。大地のエネルギーが溜まり続けた結果だと言っていたけど、一体どれだけ溜まっていたんだ。いっそまとめて出てこい!
地面には新しい芽がいくつも頭をもたげ、葉やつるを出していた。ひとつひとつがデカいし成長も速い。
足に巻き付いては動きを鈍らせるので、気づいては斬る繰り返しだ。
「下からも来る、足を取られるな!」
よりによってそう言った直後に俺は、地中から勢いよく伸びてきたトゲつるにガッチリ足をつかまれ、宙吊り状態になってしまった。浮遊魔法をかけたが、ローブがトゲに引っかかって浮けない。
「何やってんだマコト!」
ゲラゲラ笑うトイロ。クソ、見られたか。
「悪い見本を見せたまでだ!」
逆さまのまま開き直っていると、とらちゃんが跳び上がり、つるを斬って俺を抱え着地した。イヤン。
小さいのに力があって可愛くて……って、この子は鯛焼きだった。イカンイカン。
今度は慎重に、出てくる芽を避けつつ斬った。そろそろ魔法で一気に片付けたいぜ。シイタケの時のようなことにならないといいが。
斬り進んでいると「わっ!」と声が上がった。見ると、ミクトが羽をパタパタさせて抗っていた。腰にはつるが巻き付いている。
はっは、俺だけじゃなかった。ミクトそれ今日二度目だし……って笑ってる場合じゃない。
ミクトを持ち上げたつるは、蕾のある方へミクトを近づけていく。
蕾が開き、花の中心には口が、その中に鋭いギザ歯が見えた。
「ミクトを食うな!」
トイロが幾つものつるをステップにして跳び上がり、花の後ろに回って花柄を斬った。同時に、伸びてきた蛸の足がミクトを花から引き剥がした。龍子さんだ。蛸の姿に戻ったのか。
「ありがとう! 龍子さん」
ミクトが着地した。
「オレモ」と言って、玄太さんも蟹の姿に戻った。
赤い甲羅の巨大な蟹が、ハサミで茎を切っていく。斬られた瞬間、ゴーストは消滅。聖なるハサミだな。
別の角度から伸びてきたつるが甲羅に鞭打って攻撃しているが、まったく効いていないようだ。ハサミに掴まってチョキンと切られてしまった。
玄太さんの合図で、ユキが甲羅に飛び乗った。
ユキを狙って伸びてきたつるが、ユキ近くに来ると何故かサッと避ける。
ひょっとして、これがペアの効果、ギフトスキルか!
ユキを乗せたまま玄太さんは勢いよく空中を飛行し始めた。しかし、ユキはぐらつくことなく、しっかり立ったまま乗っている。完璧な飛行魔法……マスターしたのはどちらだろう。
白い髪とローブをなびかせ、蟹に乗る王子様。御伽話に出てくるシーンのようだ。
杖でつるの塊を撫でながら移動する。撫でられたゴーストは砂のように細かい物質に変化し、サラサラと落下しながら消えた。
一方天使は蛸の頭に立って乗っている。蛸は複数ある手足を伸ばしてゴーストの茎や花をちぎり、手折りながら歩いていた。トゲがあっても痛くないようだ。
蛸と天使に近づいたつるは弾かれ、何度か繰り返すうちに近寄らなくなった。
蛸がちぎったり手折ったりしたゴーストの残骸に、天使は粉を振りかける。粉末聖水だろう。辺りに赤や黄色や紫の花の幻影が浮かび、すぐ消えた。
これもギフトスキルなのだろうか。ゴーストの走馬灯とも断末魔ともつかないが、美しい光景だった。
案の定ギャラリーからため息とも歓声ともつかない声が上がった。
「ワレモ」と、とらちゃんも鯛焼きに戻った。横向きになった巨大な鯛焼きにトイロが乗ると、トイロの剣『エクソシグナス』が白っぽく発光し、見たことがない大太刀に変形した。
「それは……おそらく『聖雷神大剣』です! 持つ者を選ぶ神からの祝福とされる剣で、普通の人間には持ち上げることすらできないだろうと言われています。トイロさんが使い手として選ばれたんですね!」
としおが興奮口調で捲し立てた。
「ああ! 手応えのある重さだぜ。俺の手と一体化しているように離れやしねえ」
実際、トイロの右腕の肘から先と聖雷神大剣は同化したように発光している。
「いくぜ!」
トイロが飛行する鯛焼様の上で腰を低く構え、両手で持った太刀を勢いよく振ると、太刀に触れたつるだけではなく、周辺に生えたつるや葉や花までもがスパークしながら一瞬で燃え尽きた。
「すごい威力だ!」
途端に、植物の成長スピードが倍速になった。動きが速くなったことで、もはや植物には見えない。茎やツルがウネウネと動く姿は蛇のようだ。無数の邪悪な花が踊るようにあちこちを向く。
としおが「昔流行ったアレみたいです。サングラスかけた花」と、わけのわからないことを言うので、緊張感台無し。
次々と生えるゴーストを、手分けして次々と斬る。祓う。
俺とコーチャンはトイロたちの補助に回り、斬り残しや背後から伸びてくる「つる」を始末した。
蟹、蛸、鯛焼、鶏が空を飛ぶ。戦う色即是空を乗せて。
としおやギャラリーから見た姿を想像すると、最高にカッコいいな!
「エネルギー値は?」
ゴーストの手応えが弱くなってきたのを感じ、ユキに聞いてみた。
ユキの眼鏡がスカウターに変わる。
「残りあと10%…………いえ、15、20、30……再び増えていきます!」
「まだ何か出そうだな」
「そのようですね」
「四神5」に続きます




