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気づかぬうちに立つフラグ

 男の名前は黒井透也隊長補佐。

 女の名前は天藍(てんらん)天音(あまね)大隊長補佐。

 どちらもネームドキャラであるのだが、天音はその……所謂『馬鹿な、あの人がこんなに簡単に!?』されるキャラだ。

 成人版ではエログロシーンが多い。

 まあ過去を知って『ランちゃん救出し隊』なんて存在が生まれるけど。


 少なくともこうして生身で対面する俺からしたらクソ生意気な後輩だけどな。因みに教習生時代からチビでからかわれていたが自分の母は背が高く胸もでかいから、と将来有望とのたまっていたが未だ142センチぐらい。原作開始時は143センチだっけ?

 年は22。合法だ。


「なんか失礼なこと考えてません?」

「気の所為ですよ、天藍大隊長補佐」


 因みに佐条美波の補佐をしている少女だ。青髪どうし気が合う………とかではなく、佐条家の天才と天藍家の落ちこぼれで一方的に敵対心を持ちその座を狙っているから。美波葬儀官は懐かれてると思ってるらしいが……。

 まあ結構鬱屈した感情を向けてるんだよな。自分に目も向けず主人公ばかり構うから。


「どうせ小さいとか考えていたんでしょ? 何度も言いますけど、私のお母様はそりゃもう大きいんですからね!」

「それで透也、俺に何か用か?」

「聞けよ!」


 だってこいつ散々人を煽ってから本題を言うんだもん。なお、煽り8割本題2割だ。なんで絡んでくるのこいつ。


「そこまでにしておけ、天藍」

「はぁ? 黙れよ、腰抜け……」

「吼えるな、チビ」


 ピリッと二人の間の空気が張り詰める。透也の影が煙のように立体的に立ち上り、天音の周囲が陽炎のように揺らぐ。


「ここは医療階層だぞ。怪我人を増やすな」


 が、パキンと硝子が割れるような音とともに周囲の変化が砕け散った。

 声のした方に振り向くと下着姿に白衣を纏った目のしたの隈が凄い美女がいた。ふむ、黒か。


「ちょ!? 四条女医! 服、服を着てください!?」

「着ているが?」


 ボリボリと髪の乱れた頭をかくのは四条( しじょう)世看(よみ)

 五条宗一郎の幼馴染にして調整体能力者の家系四条家のご令嬢。

 この世界超能力も普通にあるんだよな。


 第5次世界大戦時に生み出された遺伝子改造型強化人種。所謂超能力者は、当時は兵器という扱いだったが平和になればやれ人権だと騒ぎ出し戦時の英雄として地位を与えられた。

 四条家はその際反旗を翻した超能力者、或いは敵国の超能力者を無力化するために生み出された対能力者用能力者。


 まあアンデッドやただの人間、装具による後天的能力にはなんの効果もないけど。その場合超能力のエネルギーを体に回して素手でぶっ飛ばすだけだけど。


 そんなとても強い人だが、やっぱりこの人も死に別れる。

 隈から理解る通り、寝れてないんだよね。 四条家の能力とは別に装具による後天的異能に目覚め、その力が戦闘の役には立たないうえに目茶苦茶使い勝手が悪いから。


「君達は教習時代からの知り合いだったね? ただ、佐々木隼人葬儀官は先日の戦闘後の検査がある。明日にしてくれ」


 くぁ、と欠伸をしながらしっしと手を払う四条女医。女医ではあるが、階級は特尉。単独で大隊に匹敵しうる戦力だ。

 因みに美波葬儀官も特尉。本来ならその強さから団体行動を苦手とする中、彼女は持ち前のカリスマで大隊長もやっている。


 因みに四条女医は悪堕ちルートも多く、成人版では手足を切り取り飼われるというエンドもある。脳味噌を動物に移植され飼われるのもあったな。

 とりあえずフラグ高い状態で悪堕ちさせたらトラウマ級のことをしてくる相手、と覚えておけば良い。


「佐々木隼人葬儀官、ささっと来てくれ」

「はい。というわけで、明日な」

「………は〜い」

「ああ……」


 天音は不服そうに、透也は素直に引き下がった。

 俺は四条女医についていく。

 下着に白衣故に後ろから見える白い足、膝裏。うん、見た目だけは良いんだよなあ。まあこの人の好感度あげられるのは主人公だけだろうが……。

 この人だけは男でも女でも恋愛関係に発展できるんだよな。


 というか四条女医が主人公に執着する。その執着理由は男女関係なく主人公の特異性ゆえ。

 だからこうして墓守達の治療班の長みたいな立ち位置にいるが、幼馴染みの宗一郎総長を含めて誰一人として信じてない。

 だから寝れてないんだよな。


「それじゃあ血をとるから、増血剤を飲んでくれ」


 医療も目茶苦茶発達して、医者の腕にもよるが設備さえ整っていれば死んでない限り治せる医療レベル。

 失った血液をあっという間に回復することも出来る。それがこの薬。

 でも目茶苦茶苦いんだよな。


「………………!!」


 意を決して飲み込む。口の中に広がる鉄錆のような味に、顔を顰めたくなるほどの苦味。


「相変わらず、子供のような反応をするね君は」

「苦い薬は苦手なので………」


 腕に針が刺され、血が抜かれていく。

 装具を使った肉体の体内洗浄も兼ねているのでどんどん抜かれていく。

 薬の副作用で眠くなってきた。


「そのまま寝ると良い。私も後で寝させてもらおう」

「では、お言葉に甘えて………」


 そのまま眠気に任せて目を閉じた。





 気が付けば人間の世界の端に生まれ育っていた。高く分厚い壁は黒く、夜の明けぬこの世界では星のない曇り空の日にはどこまでが壁なのか解らなくなる。

 特殊な電磁波で自立兵器を通さないが、それでも時折その壁を越えアンデッドが現れる。


 そんな場所に住むのは社会的地位の低い奴等。何時来るかも解らぬアンデッドの襲撃に怯え、アンデッドが現れたら外から聞こえる悲鳴に怯えながら息を殺す。


 アンデッドだけならマシで、クズみたいな人間も時折現れる。自分と同じ最底辺のくせにそれでも毎日飯を食ってるのが気に入らないと浮浪者がナイフを持って暴れたり、麻薬で頭がアッパラパーになった奴とかが護身のために買った銃でトリガーハッピーが現れたり。


 最低限スラムになりきれない無法地帯のような場所だった。生者に反応するアンデッドを足止めさせるために政府が用意したもう一つの防波堤。

 宗一郎総長が見張りを回しているが、一部役人共の口出しのせいで人員が限られてるんだよな。あそこで良くない取引や人買いがされてるから。


 証拠を隠し、バレた時のために異能家系や改造人間、戦闘用アンドロイドに護衛をさせてるからぶっ殺すのも難しい。

 確か百鬼夜行の時に騒ぎに乗じて何人かぶっ殺して人員を増やせるようにするんだっけ?


 まあ、そんなのを壁際で待っていたら百鬼夜行に巻き込まれて死ぬだけだろうが。だからこそ、墓守になるために葬儀社の門を叩いたわけだ。





「………うっ」


 薬の副作用で体の節々が痛い。ただの増血薬ではなく、装具の副作用を抑えるための体内洗浄剤でもあるから、副作用がキツイんだよな。風邪ひいた時に似てる。


 適性が高けりゃ違うんだろうが、生憎と俺の適性率じゃ装具の使用時に残る毒素めいたそれは濃く残るからなあ。


「…………ん?」


 左腕に違和感。

 なんか、重い? 副作用………ではないだろう。なにか乗っている………ていうか絡みついている。

 ちょっとしっとりとした柔らかい何かと、サラサラとした……布?


「…………は?」


 左を見て、固まる。そこに俺の左腕を抱き枕代わりに抱きつく四条世看がいた。


「!??!!!??」

「んぅ………」


 白衣に下着という背徳感たっぷりな姿をした美女に混乱していると、四条女医は目を覚ます。


「ああ、起きたのか。まだ副作用がきついだろ? 今日はこのままここで眠りなさい」

「いや、え………な、なんで寝てるんですか?」

「? 寝させてもらおうと言ったが?」

「なんで俺と同じベッドで寝てるんですか!?」

「抱き枕を家に忘れて」


 そういや抱きまくら無いと眠れないって設定あったな。


「いやだからって俺を抱き枕にしないでくたさい! せめて同性に………!」

「やだ……」

「やだ、って………」


 可愛いなおい。


「ごちゃごちゃうるさいな。私の睡眠時間を奪うな」


 片手が頭に触れる。とたんに薬を飲んだ時とは比較にならない眠気に襲われた。





「………まだまだ弱いな。仕方ないけど、心配だよ」


 《《本来なら》》もっと適性率が上がっていてもおかしくないのに、未だ上昇は緩やかなもの。

 スルリと蛇のように絡みつく指先が装具を撫でる。制限機能が他のより強い。宗一郎の仕業だろう。


 勘の良い彼のことだ、正体は解らぬまでも資質は見抜いているのだろう。そして、彼の精神性も……。

 だからこそ他の装具より制限を設け成長を阻害している。彼のことを知ったつもりだと言うなら、お笑い草だが。


「私より君を知っている人間なんているわけないのにね?」


 四条世看は2つの異能を持つ。人工設計された四条家の対能力者能力………そして後天的に目覚めた読心術。

 特定の条件を満たさねば発動しないその異能故に、彼女は人を信じられなくなった。


 なんならいっそ、アンデッドに傾倒した未来もあったかもしれないと、本人は思っている。

 アンデッドが生者を疎み殺し、嘲笑う存在で無ければあり得なくはない未来だろう。


「いいや、実際その未来もあったのだったね」


 それを彼女は佐々木隼人を通して《《知っている》》。

 隼人もまた、世看の読心の異能の対象内。

 人の悪意に触れ、しかし常時読めるわけではなく心の読めない相手に不信感を抱き人間不信になっていた彼女の前に現れた、己が全てを知れる相手。


 四条世看は知っている。彼の全てを、前世に至るまで。

 本人は認めないだろうが聖人ではなくとも善人よりであること、この世界の両親が殺される時ただ震えていただけだということ、給料を毎月一定金額貯金しているが酒をやめられないこと、風呂で何処から洗うのかも、何時自慰をしたかも全て知っている………前世や、その前世において自分がゲームの世界の住人であることも。


 自分の人生がただの作り物なのか、それとも他所の世界を覗く力があったのか受信でもしたのか………まあ、その辺りはどうでもいいのだ。

 自分には自分の記憶がある。歩んできた人生がある。


「何時か全部、教えてあげたいな………」


 自分だけが彼について一方的に知っている。全て、余すことなくその心を。

 この世で唯一疑う必要のない存在に、世看は恍惚とした表情で体を擦り寄せる。


「君は私の姿で自慰していたよね? 必要なら、言ってくれればいいのに」


 はぁ、と熱を孕んだ吐息を首元に吹き付ける。

 彼が望むなら、この体のすべてを捧げてもいいとすら思っている。

 彼の記憶の中にある自分のように、手足を切り取り自分だけしか知らない場所に閉じ込め独占すればどれだけ幸せなことだろうか。直にこの世界の主人公、彼と同じ読心の対象が来るらしい。


「結局はどちらが先に会ったかだけど………尻軽な私を許してくれるかい?」


 その代わり、君が強くなれるように手伝うから、と腕に体を絡み付ける。

 自分で思っている以上に非情になりきれない彼は、死にたくないと思いながらも目につく範囲で人を救おうとするだろう。その結果死ぬかもしれないし、救えず傷つくかもしれない。

 だから自分が手を貸す。彼が死なぬように、彼が傷つかぬように……。


 恋する乙女のように、獲物に執着する肉食獣のように、愛に溺れる娼婦のように、興奮した顔で愛する男の体を抱きしめる世看の姿は、この世界で知っているのは一人だけ。

 この世界で見たことがある者は、誰も居ない。




超能力者

遺伝子改造で生まれた生物兵器達の子孫。

第5次世界大戦終了後に人権問題で色々あり最終的には人権を得て、その後も戦争で活躍するうちに地位を高めていった。

血は広がり一般人家庭にも能力者が目覚めることがある。

制作者曰く人間が辿り着く進化の先取り。

数字付き 一条から七条まで存在する。

一条 不明

二条 不明

三条 不明

四条 能力無効

五条 喪失。家の方針を変えアンデッドの研究をしていた

六条 不明

七条 不明


天上五家

天藍を含めた五家

天藍

天眼 取り潰し

天河

天照

天青


色付き

名前に色が入っている

青村(あおむら)

赤城(あかぎ)

緑董(ろくどう)

茶崎(ささき)

金盛(かなもり)


異能始祖三家 能力開発を行った始まりの一族

佐条

祐星

正陣

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