表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第三部 違約

 ところで、ここまで細かく日付を明記していたのには、理由がある。

 実は、(筆者にとっての)「会社見学」、(担当者さんにとっての)「第一回打ち合わせ」の日、7月14日。この日の時点で、その先半年間のタイムテーブルが、既に定まっていた。


 8月中旬: 担当編集者との第一回打ち合わせ

 9月27日: 初稿提出日

 10月18日: ゲラの確認

 11月1日: 校正稿提出日

 11月20日: SS締切日

 11月23日: 情報解禁(ネット上で書籍化について筆者が語って構わない)

 11月28日: 第二稿の確認

 12月5日: 最終稿締切日(前述の、著作権法に基づく原稿提出日)

 12月13日: Web上での最終話掲載日

 1月23日: 書籍発売予定日


 ところが、前述の事情も相まって、8月の末になっても担当編集者は決まらなかった(どうやら外注編集者と契約する予定だったらしい)。

 そんな最中の8月22日21時12分、例の担当者からのメールが。曰く、「色々と事情が込み合って、発行スケジュールに変更があるかもしれない。1月末発売予定が4月末になるかもしれないけれど、問題はないだろうか?」と。

 これに対して同日23時22分、筆者からの返答。「発行スケジュールの変更自体には問題はない。12月にWeb版完結⇒1月に書籍発売、というスケジュールを崩す営業上のメリットがどこにあるのかは不明だけど。そして変更はあくまで発売日の話であって、それ以前のスケジュールには変更がないはず。なのにいまだに担当編集者が決まっていないということの方が問題ではないか?」と。


 ここで問題になるのは、例の「出版契約書」。出版社からの初期案に明記されていた日付は、「12月5日を締め切りとする」、という部分だけ。発売日その他の「日付」は契約書に記載されていなかった。

 だから改訂契約書には、(この契約の効力が及ぶ原稿は)「1月に出版予定(・・)の原稿」に限る、としていた。あくまで予定だから、これが4月に変更になってもこれは問題ない。けど、「12月5日」に関しては、変更するのなら契約書自体を書き換えなければならなくなる。しかも前述の著作権法に規定されている「6か月」の基準日なのだから、そうそう簡単に変更出来る日付でもなかった。

 契約変更をしないのなら、最終締め切り日は12月5日のまま。ならそれ以前のスケジュールも予定通り。

 なのに、初稿の締め切りまであと一ヶ月という時点で、まだ担当編集者が決まっていない。こっちの方が、問題なのでは?

 ところが、この件に関する返事は、無かった。


 それから二週間後の、9月12日14時40分。再び担当者からのメール。曰く「資金繰りに憂慮しており、9月発売予定の作品の印刷代が捻出出来なかった。よってそれ以降の発売予定日も最低1ヶ月ずつ延期されるだろう」と。

 だから、それ以前の問題なんだが。さすがにブチ切れた筆者は、12日16時01分に、最後通牒を突き付けた。


「御社は、契約を遂行するつもりがあるのかないのか。

 契約を遂行するつもりがあるのなら、速やかに担当編集者を決定して紹介しろ。但し初稿締め切り日まであと二週間というタイミングでは打ち合わせもへったくれもないから、原稿は出来ているから添付するのでそのまま校正に回せ。

 契約を遂行する意思はあるけど現状の契約のままでは不可能だというのであれば、契約変更の手続きをしなければならない。担当者では役に立たないから、社長を呼べ。

 契約を遂行出来ないというのなら、次は契約破棄について話をしなければならない。


 どうすべきか。9月27日までに返答しろ」と。


 実は、著作権法の条文に、あるのだ。著作権者(作者)或いは出版権者(出版社)のいずれかが、契約を履行出来ない(或いは大幅に違反する)状態に陥った場合、猶予期間を設けて是正を促し、なおも是正されない場合は契約を破棄したうえで違約金を請求出来る、という条項が。

 そして9月27日。初稿締め切り日を、この猶予期間の期限に設定した。


 このメールに対し、9月12日23時00分、出版社の社長からメールが。9月27日までに誠意をもって回答する、とのことだった。


 そして運命の日まで一週間を切った9月21日。出版社はHP上で、一つの告知を行った。それは、ライトノベル事業からの撤退、であった。



 現在筆者は、「出版社を潰した」とか「逆書籍化詐欺を持ちかけて、出版社から違約金名目で金を毟り取った」などという、謂れのない悪評に曝されている。

 前者は半分冗談だろうけれど、後者は。違約金を受け取ったという事実は、それこそ守秘義務条項に規定されているから、関係者以外は知らないはず。それが常識として流布しているというのなら、当該(元)出版社(倒産。社長も自己破産済み)の元社員(多分あの担当者)が、面白可笑しく吹聴したに違いない。


 こちらは契約を遵守して沈黙を守り、にもかかわらず先方(の一末端社員)がそれを無視してこちらの悪評を広める。なら。

 あれから6年。これ以上、沈黙を保つ意味はないと判断し、本稿の執筆を決意した。

(2,046文字:2023/07/26初稿)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いやー、面白かったです(面白がるなとも)w 某OVLも結構作者有利に確約が細かったので、「適当で良いですよ、あれだったら土壇場で反故で良いですからねヽ(=´▽`=)ノ」と契約書出さずにい…
[気になる点] 普通の人なら絶対引き当てないようなのを何故にそんなにも高確率で、そのヒキの強さは流石だなぁと……
[一言] こ、これは。 例のあれでつな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ