ルージュとニンジャとサイボーグと騎士とギャル 5
「結局、それがなんであるかは教えてくれなんだな」
陰陽師はそういった。相手はこくん、と頷き、
「そうだ。言う必要はないだろう」
と言って、彼の手から棒状の物=〈スキュア〉を受け取った。
「星に帰るのか」
そういって陰陽師は空を見上げた。黒、というよりは巨大な穴の様な深い夜空。そこに点在する無数の星々。
「我々は原則、特定の星に帰属しない。まあ、今はそうだな、帰投するのは確かだが」
そういいながら相手は〈スキュア〉を、持ってきていた箱に収める。随分と大事なものなのか、まるで刃のように輝く大きな銀色の箱にしまい込んだ。相手は子供。声からして女なのは間違いないが、ぴんとした背筋に冷たい言葉遣い、そうとは思わせない力強さがあった。
「しかし、あれだけ手間取っていたのによく手に入れたな」
「それがある場所はここよりはるか遠くの場所。故に、乃公の力もすべてを送り込むのは無理であった。それでも、最初はできる限りで力が強い鬼を送ったのだが、これは頭が悪く使い物にならなかった。二回目は力を抑えてみたが、これも駄目だった。しかし、卜占の通り〈すくあ〉を見た。故に、三回目はさらに力を絞り、〈すくあ〉を持ち帰る以外に影響を及ぼさないように調整した。〈すくあ〉を手に入れること以外は、他人の記憶に残る事すらできぬほど弱いが、役に立ったであろう」
「最初からそうすればいいものを」
「それはできぬ。あの絵だけではそこまで力を絞った鬼は作れん。二回目で〈すくあ〉を知った鬼を元に、その力を薄めて成ったものだ」
「やはり、お前の理屈はわからないな」
相手はそういうと、箱を抱えて自分が乗ってきた駕籠、否、巨大な空飛ぶ家のようなものに足をかける。
「一応、礼は言う。有難う」
「要らぬ。それより、乃公の頼み、忘れたわけではあるまいな」
「全て占いの通りなんだろう。ならば、我々がこれを手にし、使えばおのずとお前の『失せ物』の在処に辿り着く、という話じゃないのか」「いつか乃公に報せが下る。だが、念押しも大事なものよ」
「実のところ、仮に我々がお前の失せ物を見つけたとして、それを報せる方法をわたしは知らない。〈スキュア〉とお前の失せ物の情報を交換するという取引だが、失せ物のありかを報せる方法はそれしか思いつかない。特にお互いに罰則は指定していないし、わたしはこれから宇宙へ戻るし、〈スキュア〉を手にした以上、あとはお前とのやり取りを反故にする選択肢もある、が。せいぜいの我々の誠意として、それは受け取れ」
彼女はポケットより黒い箱を取り出し、振った。同じものを陰陽師は彼女より受け取っている。小型の超長距離通信機、といわれていたが、彼にはそれがどういう意味なのか判然としていない。ただ、彼女がその場にいなくても、奇怪な音とともに彼女の声を届ける装置らしい。一方、彼女の方はといえば、それが超光年級の生活圏を持った〈コロンズ〉の器官を利用した装置であることは承知しているが、果たして時間を超えて通信ができるとは思っていない。一応、約束を果たそうとした、という体を取って自分を慰めたいだけなのかもしれない、と自己分析している。
「知っておる。乃公は乃公の卜占を、否、星を信じている」
「報せは、わたしの権限の範囲内で誠意をもって対応する、ということだ。では、さらばだ」
「うむ。では、これにて」
彼女はそういって巨大な建物の中に入る。それはたちまち巨大な音を立て、星に帰っていった。




