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93エピローグ~え? 婚約してるのにヤラせてくれないの?~

俺とクリス、アリー、リーゼの4人は王城の謁見の間の前室にいた。


国王からお褒めの言葉を頂戴するためだ。


邪神クトゥルの従者を仕留めた訳だから当然だと思う。


意外と簡単に倒したからなんかあまり過大な褒美とか用意されると困るな。


そんなことを思っていると騎士の一人が案内をしてくれた。


「英雄アル様、準備が整いました。さあ、謁見の間にお入り下さい」


「ありがとうございます。では、入ります」


「英雄アル様をご案内できて光栄です!」


大げさな騎士は俺に敬礼すると、ドアを開けてくれた。


俺の後にはクリス、アリー、リーゼが続く。


「「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」


俺が謁見の間に入ると大歓声が聞こえた。


ちょっとびびったが騎士や官吏、そして王族、上級貴族達の歓迎の意だと気づいて躊躇うことを止めて国王の前まで敷き詰められた赤い絨毯の上を歩いて行く。


国王の前に来ると王に敬意と忠誠の証として膝を折り、頭を下げた。


「顔をあげよ、英雄アルとその仲間よ」


「は! ありがたきお言葉に感謝します」


俺とクリス達は国王へ顔を上げる。


王は穏やかな顔をするもどこか寂し気だった。


実の息子が邪神に魅入られた末、葬られたのだ。


当然だろう。


勇者レオンの所業は彼があまりにも有名人が故に王都中の人々に知られていた。


国王陛下は包み隠さず本当のことを伝えた。


レオンが王城の地下の聖剣を抜いてしまい、穢れた聖剣に乗っ取られて王都の人々を殺害したり、都民の財産を損壊させたこと。


王は国民に先日謝罪した。


歴史上はじめて王が王城のバルコニーより王都民に対して謝罪と頭を下げた。


国民は最初驚き、ざわめいたが、国王の謝辞が真剣なものと受け止め、王家の信用の失墜は免れた。


国王は柔らかい笑みを浮かべると、俺に向かって言った。


「先ずは英雄アルよ。人類の真の敵、邪神を倒した功績、見事である。王として国民を代表して感謝の意を表すぞ」


「ありがたき幸せにございます。そのお言葉だけで俺の心は満たされます」


国王がとんでもない褒美を用意するとか言われると困るから少し謙遜気味に言った。


いや、第一王女様をくれるんなら歓迎なんだけどな。


代わりにアリーを返品とかだといいな。


でも、できれば一発ヤッてからじゃダメかな?


アリーは闇がヤバいけど、可愛いもんな。


「はははは。またアル君は謙虚だのう。普通、褒美を欲しがり、駆け引きになる所じゃぞ」


「いえ、俺は当たり前のことをしただけですので」


「邪心の僕を退けておいて当たり前のこととな! まさしくあっぱれ! 私、いや、この国は女神に愛されておるぞ! これほどの人物が英雄としてこの国のために働いてくれるとはな!」


いや、そんなあげはいらないから、早く第一王女くれないかな?


それとアリーと一発ヤッた後に返品を認めてくれないかな?


でも、真正面から言うとこれはさすがに体裁が悪いな。


第一王女リナ様もアリーもキープだな。


アリーは闇は多いけど、ヤルには闇は関係ないもんな。


アリー、可愛いいし。


「まあ、アル君が褒美を辞退することは見えていたが、今回はどうしても受け取ってもらうぞ。君には真の勇者の称号と後継ぎが不在となったヒンデンブルグ家を継いでもらう。我が親戚筋じゃ。それと第一王女リナを嫁としてもらってくれ」


「ヒ、ヒンデンブルグ家といえば名家では? 真の勇者? それに第一王女様は帝国の皇子様と婚約をされたばかりでは?」


「先方から遠慮の連絡が来ての。第一王女リナがアル君にご執心なことが伝わっての。先方の皇子がアル君と比べられたら敵わんと遠慮というか、アル君と幸せになって欲しいとのことじゃ」


ナイス皇子!!


勘違いだけど、リナ様を嫁にもらえる!


クリスが怖いけど、もうアリーもリーゼもいるからもう一人位増えてもあまりかわんないだろう。


「アル様、よろしくお願いいたします」


涼やかな顔と共に第一王女が笑みを浮かべる。


「こちらこそよろしくお願いします」


俺はリナ王女に笑みを浮かべる。


もちろん心の中でガッツポーズを決める。


内面がまともな女の子とやっと結婚できる。


しかし、次の瞬間。


「ふっ、散々脅した甲斐があったわ。あのクソ皇子、空気が読めるヤツで良かったわ」


ふにゃりとアリーそっくりな歪んだ闇を含んだ笑みを浮かべてリナ王女は薄笑いする。


俺は冷や汗がダラダラと出て来た。


聡明で可愛くて内面も最高と思っていた第一王女も基本スペックがアリーと一緒?


そう言えば姉妹だもんな。


俺は何かを諦めた。


「それとな、アル君には猫耳族から礼の品として献上品が贈られておるぞ」


「猫耳族ですか? 俺は大したことはしておりません。献上品だなんて」


俺は謙虚にそう言った。猫耳族は自然を愛する種族で基本質素倹約に生きている。


前族長のルナのおかげで潤うようになったとはいえ、人族とは豊かさが違い過ぎる。


俺への礼の品なんか考えるより、人身売買の犠牲者の為に富を使って欲しい。


これは偽りのない本音だ。


「アル君、謙虚もいいが、献上品はモノではない。そなたが遠慮すると彼女らが傷つくぞ」


「彼女ら? どういうことなのですか?」


王は左手を上げて合図をすると。


何故かそでから猫耳族の戦士リリーと族長アイラが現れた。


「リリー? アイラ? どうしたの?」


「アル様。そ、そんな恥ずかしいことを聞かないでください。私とお姉様は、その」


「アル殿、私とアイラは供物です。たっぷりと姉妹どんぶり三昧を味わいください」


「はっ?」


何言ってんの? リリー?


「まあ、そういう訳じゃから猫耳族の里からアイラ殿とリリー殿が供物としてアル君に差し出された。我が国としては丁重にアル君に受け取ってもらいたい」


「わ、わかりました。二人とも俺にはもったいない女の子です」


俺は内心やったー! と思った。


姉妹どんぶりは置いておいて、アイラもリリーも可愛いし普通だから歓迎だ。


猫耳も可愛いもんな。


だが。


「ふっ、族長をサリに押し付けてやったわ」


「ふっ、私も戦士の長をエリリンに押し付けてやったわ」


そう言うと二人共。


ふにゃりと歪んだ笑みを浮かべた。


ヤバい、クリスやアリーと同類だ。


え? まともなのリーゼだけ?


いや、リーゼはクソ生意気だぞ?


実質まともな女の子、一人もおらんの?


「まあ、めでたく褒美も受け取ってもらえた訳じゃがな。アル君にはお願いがある」


「なんでしょうか?」


「アル君は未だ17歳だ。結婚できる年齢にはあと1年足らん、じゃからそれまで結婚を待つ必要がある。それに未成年が淫らなことをするのは未だ早い、くれぐれも自重を頼むぞ」


「は、はい。もちろん承知しております」


俺は力なく国王陛下に言った。


え?


せっかくいっぱい婚約者いるのに一発もできないの?


1年もお預けなの?


そこへ突然魔力の翻弄と共に一人の人物が現れた。


「し、師匠!」


それは魔族の王、というより自治会長の俺の師匠アルべルティーナだった。


「久しぶりじゃの、王よ」


「あなたは……魔王」


「そんな呼び方は止めてもらえんかな? そなたは私の兄のひ孫じゃろう」


え? 師匠のお兄さんのひ孫が国王って?


「あなたには心苦しい。ですが、我が国としては……」


「我が英雄アルの婚約者だと知ってもか? アルと1か月も同棲したのにか?」


何突然カミングアウトしてるの師匠? 同棲の話は誤解しか生まないじゃん。


俺と師匠の間に何かあったとしか思われないじゃん。


「魔王がアル君と? アル君、ほんとなのか?」


俺は冷や汗をかなりかいたが、諦めて言った。


「本当でございます。俺は師匠に魔法や剣術を習い、1か月間一緒に住んでいました」


結婚の約束はしてないよ。師匠が一方的に言ってるだけだし。


しかし、王はほうとため息をつくと。


「魔王とすら関係を持っているとはアル君の胆力には驚かされてばかりじゃ。それに、アル君と魔王がそういう関係に既になっているなら男として責任を取るべきじゃろう」


今度は俺の方がため息をついた。


俺の周りは残念な女の子しかいない上、1年以上一発できないとか寸止めが過ぎる。


「これより魔族と和平の話しあいを設ける! 長い魔族との抗争に終止符をうつ!」


俺、何やってたんだろう?


師匠ともアリーともリーゼともさっさと一発ヤッとけば良かった。


そう思うとふとクリスと目があった。


「(後で殺すからね、アル!)」


「(いや、不可抗力だろ?)」


俺はこの後クリスに袋叩きに合うことが確定して、謁見の間を寂しくトボトボと退出した。


退出の間際師匠がこんなことを言った。


「アル、お前が慢心せぬようにアルの能力のステータスはレベル99の者の半分の50と言ったが嘘じゃ。もちろんとっくに気が付いているとは思ったが、役にたっただろう?」


「はっ?」


俺、ほんと、何してたんだろう? 全然気がつかなかった……




終わり

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支援職、最強になる~パーティを追放された俺、微妙なハズレスキルと異世界図書館を組み合わせたらえらいことになった。は? 今更戻って来い? 何言ってんだこいつ?~
― 新着の感想 ―
[一言] この回が最終回となってしまったのなら、悲しいです。 ずっと楽しみが消えなくていつまでも楽しめていました。 誤字はあれど、報告を受けた時点で直していて、とても読みやすかったです。見てて飽きませ…
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