表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/93

84勇者レオンと決闘、なんか俺が悪者にされてる

――王都の中央広場。


その日の王都は初夏の空が青く澄んで絹のように光る快晴だった。


中央広場。広場の真ん中には多くの民が見物の為に集まっていた。


「こりゃ……すごい人だな」


王子にして勇者レオンと英雄の俺はとの決闘。公にはリーゼを巡って男と男の戦いとされていた。市民の好奇心は当然だろう。多分、工作済みで必要以上に好奇心を煽るように情報操作されてるな。アリーから聞いた話だと俺がリーゼを性奴隷として購入して、レオンがそれに見るに見かねてという設定だ。まるで俺が悪者だ。


まあ、おおむねあってるんだけどね。


ただ、リーゼが一発ヤラしてくれなかったの。


なんか俺って損してるよね?


まあ、本当の決闘の目的はどちらが真の勇者に相応わしいか? をはっきりさせたいのだろう。俺に勝って市民に力をアピールして真の勇者に近づきたいのだろう。


そして残念ながら市民の大半は王子の思惑通り、レオンの味方のようだった。


「殿下! 頑張ってくださいー!」


「女の子を泣かすヤツなんかに負けないでくださいー!」


「フツメンなんかぶっ飛ばしてー!」


……まあ、王都は殿下のホームグラウンド。これまでのレオン王子の功績がどれほどだったか伺いしれる。もっともアリーの話を聞くと女たらしは王子の方らしい。


まるで悪役のような扱いに閉口するが、それは割り切ってと、思っていると。


「アル、私がついてるからね!」


「アル君! 負けるなー!」


「ご主人様頑張ってーっ!」


「!?」


クリス、アリーとリーゼの声が聞こえる。そうだった、今の俺は一人じゃない。みんながいる。


更に。


「アル殿! 御武運を!」


「我らダンジョンの街の冒険者はあなたの味方です!」


「アルの兄貴! 俺の惚れ込んだ兄貴の力! 見せてください!」


「アル君、私もついてるからね!」


冒険者のみんな。気圧されていた俺は、ほんのひと握りだが、とても心強い声援に送り出されて、闘技会場に足を進めた。


日差しが強い。そして眩しい光の下に佇む王子レオン。


まあ、普通に俺が勝てる相手じゃないけどなんとか勝利しないとリーゼが奪われる。


いや、返品したいのだけど、女の子の目に涙は……


俺、ほんと女の子の涙に弱いよな。


「よく来たね。逃げずに僕と手合わせしてくれることは褒めてあげるよ」


なんか上から目線。


実績から言うと仕方ないか。


だが俺もそこそこ強くなった。殿下相手でもそれなりの闘いはできると思う。


正直、俺には勝ってもメリットがない。


ただ、女の子の涙のためにやるしかないのだ。


全部あのクソ奴隷のおかげだ。


一応俺の婚約者だし、今はリーゼのこと意外と好きだからいいけど。


可愛いもんな。


いかん、ついニヤニヤしてしまった。はっ!? と気がついてクリスの方を見ると。


凄い鋭い目つきで俺を睨んでいた。さすが俺の幼馴染。


俺の考えていることが見透かされている。


「お手柔らかにお願いします。殿下の実力はよくわかっております」


「褒めてあげるよ。惨めに負けることがわかっていても対戦するなんてね」


この王子イケメンだし言葉も温和だけど上から目線が酷い。


「最後に言い残すことはあるか? クズとはいえ、最後の言葉くらい拾ってやろう」


「…………」


酷い上から目線はいいけど、殿下は俺を殺すつもりらしい。普通、決闘で命までのやりとりはしない。昔は命をかけていたが、今はあくまで両者の力の差を見極めるだけだ。そのため、立ち会い人が指名される。この決闘の場合、王子の配下の騎士だ。


つまり、殿下は何があろうとタオルを入れない立ち合い人の元、合法的に俺を殺すつもりなのだ。この王子……クズだ。


「殿下。決闘とあれば、対戦者への敬意を抱き、雑念は捨てて全力を尽くせ――そう魔法学園で教わりました。教師はあなたでした」


「はは……。そんなたてまえを信じているなんてね」


だめだ。この人クズだ。


こんな奴でも、勇者。それに。


殿下は勇者のジョブに恵まれ、既にレベル99、スキルにも恵まれて普通30位のところ100は持っているという噂だ。


勇者という最強のステータスの上、スキルを100も持つチート中のチート。


王子への声援があがる。威風堂々と白銀の鎧を纏い、パッと見た目はあちらの方が見栄えがいい。見た目だけで騙されている観客たちが声援をあげる。


リーゼの為、勝つしかない。


……さあ、決着をつけるか。


俺は剣を抜き放ち、剣を構えると、王子がふっと笑った。


「僕はうさぎを狩るにも全力を尽くす獅子なんだ」


謎の言葉を発すると審判が手をあげ、宣言する。


「これより、第一王子レオン、英雄アルの決闘を始める。双方卑怯な手は禁止とする」


そして決闘の開始を待つ。


「始めぇーーーーー!」


かけ声と同時に、王子は魔法詠唱に入る。身体強化の魔法だろう。


王子の聖なる鎧は絶えず防御結界が張られている。


1体1だと一番厄介な相手だ。


俺も当然身体強化(極大)あたりのスキルを使うべきだろう。


そうしないとダメージが通らない。


だが。


「!」


俺は構わず王子を斬りつけた。


「な……んだとッ!」


王子が驚愕の目で俺を見る。


わかる、わかる。俺もびっくりした。


まさか、無銘の剣で王子の防御結界が破れるとは思わなかった。


代わりに無銘の剣が折れたけど。


どうも貧乏性の俺はセール品の無銘の剣を使っていた。だから……折れた、多分。


剣は折れた。


え?


なんで聖剣使わないのかって?


マグレが起こったら困るだろ?


それに王都自体が吹っ飛びそうな気がする。


王子を見ると驚いて魔法詠唱を中断していた。神級魔法は3節の呪文詠唱が必要。


つまり。


殴りに行こう。


俺は素で王子に近づくと、ぐーで王子を殴った。


「な、え? ちょ――っ! うぽぉぉぉぉぉお!!!」


王子は奇声を発すると、空高く飛んで行った。


綺麗な青い空。飛んでいる王子。


「……え?」


「……は?」


「……へ?」


さっきまで王子を応援していた王都の観客たちが、急にシーンとなる。


「ば、馬鹿なっ……!」


大声で怒鳴る審判。


「あ、ありえんない……? 魔法もスキルも使わず、勇者である殿下を? あり得ない……!!!」


審判はブルブルと震え、狼狽していた。

連載のモチベーションにつながるので、面白いと思って頂いたら、ブックマークや作品のページの下の方の☆の評価をいただけると嬉しいです。ぺこり (__)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ちょっと面白かった!」 「島風の新作を読んでみたい!」 「次は何を書くの?」 と思って頂いたら、島風の最新作を是非お願いします。リンクがありますよ~☆ 読んで頂けると本当にうれしいです。 何卒よろしくお願いいたします。ぺこり (__)
支援職、最強になる~パーティを追放された俺、微妙なハズレスキルと異世界図書館を組み合わせたらえらいことになった。は? 今更戻って来い? 何言ってんだこいつ?~
― 新着の感想 ―
[一言] 殴られてお空に飛んでいく王子! バイバイキ~ン!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ