82ジョブチェンジスライム無双
俺が呆然として、冒険者達も唖然としているが、クリスもアリーやリーゼも目が生暖かい。
「またご主人様が一人で根こそぎ……」
「もう驚かないと思ってたのに……」
「アル君、アル君が悪いんじゃないよ。アリーはいつもアル君の味方だよ」
や、やめて。
俺が悪いんじゃない。
俺はいつもの耐えきれない感じに耐えきれず。
「どうも生き残りの冒険者の最後の頑張りに……め、女神さまがね、その」
「はいはい、女神様がアルに微笑んでこんなことになったのね」
「アル君、恥ずかしがらなくてもいいんだよ。それも個性だよ」
「ご主人様は馬鹿なのか? ご主人様が頭おかしいのみんな知ってるのに」
うるさい!
リーゼ!
チクショウ。
売り飛ばすことが出来んのが悔しい。
俺はできればだな。
みんなで力を合わせてだな。
努力と友情で勝ちたいんだ。
なのに何も考えてないのにね。
あんなにいっぱいいたデュラハンが一瞬だよ。
こんなことするヤツ、頭おかしい……よね。
ぐすん。
俺は膝を抱えて隅っこで泣いてしまった。
すると。
「我ら近衛騎士団が来たからには安心しろ?」
「魔物の大群は何処だ?」
「おい、あそこの隅っこで膝を抱えているヤツのせいじゃ?」
「例の終末の化け物の時のあの頭のおかしいヤツか?」
ひ、酷い。
酷すぎる。
「馬鹿、口には気をつけろ! 気に入らないと殺されるって言う噂だぞ」
違うもん。
俺、そんなことしないもん。
そんな俺をクリスもみんな慰めてくれない。
この子達何のためにいるの?
その時、頭にまた天の声が聞こえた。
『アル君、いじけてる場合じゃなくて、このままだと魔物がまた来るわよ。スライム達に掃討作戦を命じて! アル君のデータリンクも繋げてね!』
はあ。
ため息を吐きながらスライム達に命じる。
「スライムのみんな、ダンジョンの魔物を掃討して!」
「「「「「「「「「「「「わかりました! アル様♪」」」」」」」」」」」」
スライム達は早速前進し始める。
というか。
ヒュンと残音を残して1号のアイリス達ステルスのスキル持ちのナイトスライム達がダンジョンの奥に向かって疾走する。
それを追ってイージスのスキルを持つロードスライム達。
「ちょ! そんなに突出したら!」
『大丈夫よアル君。ナイトスライムはステルスのスキル持ち。魔物は彼女達を探知できないわ。それだけじゃないわよ。彼女達もイージスのスキルと同様の能力よ』
「は?」
敵に見つからず、イージスのスキル使えるって?
俺の悪い予感が当たった。
俺の脳裏にはスライム達の視界や五感、探知や探査のスキルの膨大な情報がなだれ込んできた。
そして。
「あわわわわわ!!」
や、ヤバい。
俺の頭上に無数のフレアアローが。
そして案の定。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
ナイトスライムの探知した魔物に向かって俺のフレアアローが飛んで行く。
スライムの情報でヤバい量の魔物が瞬殺されていく。
更には。
「長距離巡航極超音速マジックミサイル攻撃行きまーす♪」」」
スライム2号他、アークウィザードの魔力弾が次々と打ち出されてナイトスライムの更に前方を攻撃する。
「ドローン攻撃入りまーす♪」」」
4号スライムのデリカ達からちっちゃいスライム達が無数に生まれて先に進む。
『ドローンスライムはファイターのスライム位の実力よ。4号さん達のスキルのレベルが上がるともっと強くなるわよ』
そんなに強くならんでいい!
ていうか、ドローン、100匹以上いないか?
あれ1匹がファイタースライムと同等って……
俺が惚けてると、頭上のフレアアローも射程距離外になった。
でも1号アイリス達ナイトスライムはドローンを引き連れてドンドン先へ進む。
3号クララ達イージスのスキルを持つロードスライム達はマジックミサイルSM-6で1号達を支援しつつ残敵を掃討する。
2号ベティ達アークウィザードからは1号達が探知したより遠くの敵をその長距離極超音速マジック巡航ミサイルで次々と撃破していく。
4号デリカ達アークプリースト達は時々ドローンを回収したり新たなドローンを出して行く。
10分程すると……
まだスライム達がこのダンジョンの半分の5層にいる段階で最下層10層のダンジョン主の終末の化け物を倒した。
2号達の長距離極超音速巡航マジックミサイルの集中砲火で、会的することもなくアウトレンジからの一方的な攻撃で決着がついた。
『忘れてた。魔物30万匹と終末の化け物討伐で経験値200億が入ります。アル君のレベルが2000になりました。アル君にもステルスのスキルが宿りました。あと、イージスのスキルがベースラインIからIIに進化しました』
「へ?」
スタンビードが発生したダンジョンを10分で制覇とか。
これ、マジキチだ。
俺のことだけど。
「アル殿、つい惚けてしまいましたが、我々と一緒にダンジョンを攻略しましょう」
「そうです。いくらアル殿とはいえ、スタンビードの起きたダンジョンを一人で踏破するのは……我ら未熟者ですがアル殿の肉壁になる覚悟です」
「どうか我らにアル殿と名誉ある共闘の機会を!」
惚けていた近衛騎士団の面々が突然思い出したように俺に向かって熱く語る。
ヤバい。
こいつら命をかけて王都を守るつもり。
俺は仕方なく言った。
「さっき先頭のアイリスたちがこのダンジョン制覇しちゃったみたい、はは」
「まだ10分もたってないのにダンジョン制覇、は、はは」
「いや、は?」
「無理だろ?」
近衛騎士団からおかしな空気が生まれる。
「大丈夫だよアル君。私はアル君が何しても、いつまでもアル君の味方だからね」
アリー。
お願い。
俺がなんか悪いことしたみたいに言うのマジ勘弁して。
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