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63族長マジか?

「何をしている!」


「げっ! そんな馬鹿な! なんで人がいるんだ!」


俺は猫耳族の女の子を担いで逃げようとする人攫いに声を荒げた。


しかし、人攫いは明らかに動揺している。


里の中で人に出会うことがある筈がないというおかしな発言だ。


無論、族長の魅了の魔法に皆が影響されていると考えれば至極当然だ。


しかし、動揺している人攫いに中に動揺していない人物が一人。


「どうもなにかしくじったようだが、安心しろ。その時のために俺がいる」


「用心棒ということか? だが、お前、自分のやっていること、わかっているのか?」


そう。


人攫いの用心棒は人攫いと同罪だ。


捕まれば当然、人攫いとして死罪になる。


「まあ、見合う報酬を提示されるとな、それに俺に勝てるヤツに会ったことがなくてな」


「なるほど、相当な自惚れ屋という訳か」


とは言ったものの、実際、こいつは強い。


立ち姿だけで、無駄のない動きが見て取れる。


こいつ、相当な使い手だ。


「それにしても……わざわざ上玉な猫耳族だけじゃなく、なかなか美しい娘も連れてきてくれるとはな。高く売れそうだ。なあ、大人しくその娘達を俺に渡さないか?」


「うふふ。美しいだなんて。アル君、この人お世辞上手いね」


アリー、事態が理解出来てないんかい!


「みんなを連れて行かせる訳にはいかないな。酷い目にあうとしか思えん」


「そうでもないぞ。薬漬けにして快楽の絶頂を得られるそうだ」


薬漬け? おそらく麻薬だ。人攫いだけでも死罪級の大罪。


ましてや麻薬絡み。これはちょっとした人攫いじゃない。


背後に大きな組織があるな。


「悪いが、俺の仲間も猫耳族の女の子も……誰一人お前達には渡さん」


「はははぁ! 君は馬鹿だなぁ。君が俺に勝てる訳ないだろう!」


ああ、ムカつく。


なぜならこいつイケメンなの。


「さあ、子猫ちゃん、今俺のものにしてあげるからね」


「旦那、止めて下せえ。何回伯爵様に怒られたんですかい。そんな下品な趣……ゲフ」


突然、男は仲間の男を斬り捨てる。


「まったく、おしゃべりなブサイクには困ったものだね。だが安心して。俺の子猫ちゃん。今日は最高の夜だ。君を連れ帰ったら、上等な食事、最高級のワイン、そしてこれに上等なセックスがあれば最高じゃないか?」


……こいつ、俺の顔見て言ってるんだけど?


まさか?


「お前、誰と夜を共にしたいんだ? なんか、俺の顔ガン見してんだけど?」


「もちろん君だよ。俺が女なんて相手にする訳がないじゃないか!」


うげっ!


一番ヤバいヤツ来たー!!


「君が俺好み過ぎるからいけないんだ。どこか地下室に監禁して俺なしでは生きられないようにしてあげるからね、俺の子猫ちゃん。今夜君は俺のモノ__へぐっーーー!!」


彼は最後まで言えなかった。


俺がヤツの顔を殴った。


身体強化は使わなかった。


そんな余裕はなかった。


怖いでち。


すると、男の整った顔の鼻は曲がり、歯がへし折れていくつか四散する。


そして、キザで澄ました顔から一変。


「このクソガキがぁ! 下手にでていればいい気になりやがって!!」


「は!? どこに下手に出てた要素ある?」


無いよね?


それに何より、さっきまでのキザで落ち着きのある表情からたちまち鬼のような本性丸出しの醜悪な表情を見せる。


マジで怖いでち。


いきなり殴りたくなるのわかるでしょ?


「せっかく俺のモノにしてやろうと思ったのに、仕方がねえ! ぶち殺してやる!!」


男は剣を抜き放ち俺に向かって斬りつけてきた。


「へぐしっ!!」


おかしな奇声を発する男を俺が殴り飛ばしたからだ。


なんかキザな割には弱いのね。


どうもワンパンでのびたようだ。


そして。


「ヤベ!! みんな逃げろぉ!!」


「そうはいかないわよ!!」


クリスがその聖剣デュランダルを抜き放つと、男たちに襲いかかる。


「ああ!! 合法的に男達をなぶりものにできる! ヒャッハー!!」


クリス、頼む。お前、一応ヒロインな。


こうしてキザな男と人攫いはボコボコにして捕縛した。


そして、流石にこれだけの騒ぎを起こしたせいか、猫耳族の人達、そして族長がやってきた。


「何事ですか? 客人とはいえ、こんな深夜に」


「族長! 人攫いを捕縛しました!」


リリーが族長に向かって、尻尾を振りながら言う。


余程嬉しいのだろう。


なんか、ご主人様に褒めてもらいたいワンちゃんみたい。


こいつ、猫耳族だよな?


戦士のくせに敵前でパンツ晒すとか、可愛い要素しかない。


その上、猫科のくせに犬みたいに懐っこい。


いや、今はそんなリリーをペットとして飼いたいとか妄想してる場合じゃなくて。


「そうか。良くやってくれました。これで我らの心配の種が消えますね」


「はい、ほとんどアル殿のおかげです。一人手練れがいましたが、一瞬で♡ もう濡れそうです!」


女の子がそんな発言しちゃダメだよね?


「さあ、お前ら、背後関係を吐いてもらおうか? バックに組織か何かいるだろう? お前らだけで計画したとは思えん!」


リリーが凄むけど、全然怖くない。


「は、話すから、頼むから見逃してくれ! 俺達ただの下っ端だし」


意外だが、ヤツらは怖かったらしい。


まあ、パンツ丸出しのこいつの姿見たら、一瞬で変わると思うけど。


「俺達を雇ったのはヨナス-ハウゼン伯爵様だ」


誰だよそれ?


「アル君、この里に隣接する隣りの領を治める貴族よ」


「ありがとう、アリー」


王族がいると助かるな。


「そ、それと俺達はーーーーーーー」


「それがわかったなら、あなた達に用はないわね」


何か重要そうなことを言いそうなことを言うか言わないうちに。


族長がその男の首を突然刎ねた。


「え?」


「な!」


ひえっ!?


びびった。


族長って、かなり綺麗な若い女の子だ。


それが突然、無造作に男の首を刎ねた。


「黒幕がわかった以上、あなた達に存在価値はないわ。人攫いは死罪。人族との掟により、猫耳族の法であなた達を処分します」


「ひゃ!」


「ピャ!」


アリーとリーゼが嬌声のような叫び声をあげる。


次々と男達の首を刎ねる族長の顔には笑みが浮かんでいた。


「さあ、あとは黒幕をどうにかすればいいわね」


歪んだ笑みを浮かべた族長は宣言するが。


どう考えても、口封じだ。


この人攫いの真の黒幕。


それは族長以外に考えられないのだから。

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支援職、最強になる~パーティを追放された俺、微妙なハズレスキルと異世界図書館を組み合わせたらえらいことになった。は? 今更戻って来い? 何言ってんだこいつ?~
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