42リーゼの事情
俺とアリーはリーゼの話を聞くことにした。
「店員さん。オーク肉のシャブシャブサラダお願いします」
アリーは朝から飛ばすな。
「店員さん。小籠包3人前とローストビーフ3人前もお願いするのです」
……まさかリーゼも大食い?
しかもこの子奴隷なのに、そんなのお構いなく、主人の俺になんの断りもなく。
「なあ、アリーもリーゼも朝からそんな勢いで食べるとお腹壊すとかないの?」
「なに? アル君、心配してくれるの? 大丈夫よサラダはどんなに食べてもカロリー0だし、お腹になんの負担もないよ」
絶対違うと思う。
「ご主人様は私の美貌が崩れると嫌なのです。しかし、タンパク質は太らないから大丈夫なのです」
いや、小籠包は思いっきりでんぷん質だろ?
それと、少しは遠慮しろ! このクソ奴隷!
ヤラしてくれないとか、俺に何のメリットもないぞ。
何とか返品かクーリングオフしたい。
「店員さん、お寿司3人前お願いします」
「店員さん、チーズの盛り合わせ10種追加お願いするのです」
できれば二人共返品したい。
リーゼは言わずもがなだが、アリーも食事のお金払ってくれないの。
「アル君、お腹のウォーミングアップが整う前にリーゼさんの事情を聞いておこうよ」
「そうなのです。私の不幸な事情は知っておいて欲しいのです。しかし、ご主人様の脳で貴族間の話とか理解できないのです。簡単な算数でも不具合起こしそうな顔をしているのです」
だから、顔で物事判断するな。
「まあ、貴族のこととかは私がわかりやすくアル君に説明するからね」
「では、先ずは私が何故不当に追放されたか説明するのです」
リーゼはかいつまんで自分の境遇を説明してくれた。
「私、可愛いから、魔法学園ですごくちやほやされていたのです。それで、アホな男に貢がせたり、思わせぶりなこと言って男を弄んでたのです」
はっ?
同情する余地、何処にあるの?
「それでね、何か隣国の王子様が私に色目使ってくるから、何か二人の間になんかあったかのような匂わせとかしたのです。それと婚約者に色目を使って来るムカつく女に散々意地悪したら……そうしたら……婚約者に婚約破棄された上、断罪されたのです」
「えっ!? 婚約破棄されたの? それって?」
う〜ん。悪役令嬢系の話だなきっと。
巷の女性向けの読み物で人気がある話だ。
実物に会うのは初めてだけど。
「やり返しましょう! アル君、もちろん手伝ってくれるよね?」
「あ、ああ、アホな婚約者とかだろ? それならざまぁすべきだと思う」
「そ、そうなのです! 私をこんな酷い目にあわせるとか酷いのです!」
俺はそれがよくあるアホな婚約者の間違いかと……最初は思ったの。
「でね、私があのアホな婚約者にちょっかい出してくる馬鹿女に嫌がらせしたのです。そしたら婚約者が切れたのです。その上、私を婚約破棄した上、修道院送りにしたのです。さらには移送中に襲われて、奴隷にされたのです」
そうか。奴隷にされたのは盗賊の仕業か。
やっぱり非合法だな。
多分、身分証とか偽造して奴隷にしたな。
「リーゼさん!」
アリーはリーゼの手をぎゅっと掴むと、リーゼに聞いた。
「で、そのアホな婚約者の名前って誰? 私達が絶対ざまぁしてあげるからね」
「ありがとう。アリーさん。私、悔しいのです。あのアホな婚約者の名前はルイスなのです」
「へ?」
あれ、アリーの様子が変だ。
「あの、リーゼさんの婚約者さんてもしかして、第3王子のルイス?」
「そうなのです。親が勝手に決めただけなのに、ちょっと他の男の子とデートしたり、プレゼントもらっただけで怒るし、私という者がありながら、ミアという女に入れ込んで、私をないがしろにするとか信じられないのです」
気のせいかな? ないがしろにしてるのリーゼの方が酷くない?
「あのね。リーゼさん? ルイスからは婚約者が散々学園の男の子に気のあるそぶりをして振りまくる上、妹のミアをマジで暗殺しようとしたからやむなくって聞いたわよ」
「へ? あのミアが妹?」
「そうよ。ミアはこの国の第8王女よ。私とか違ってお母様が帝国の皇帝の血を引いてるから、普通暗殺とかバレたら斬首刑よ。それが可哀想で一芝居打って、婚約破棄と修道院送りで済ませたの」
は? 気のせいか?
リーゼの婚約破棄って自業自得っていうか、かなり穏便な措置じゃないか?
そもそも恋敵だからと言って暗殺とか、頭おかしい。
「えっと、なんでアリーさんはそんなに王室事情に詳しいのです?」
「だから私、この国の王女だから。ルイスは仲のいいお兄さんだし、ミアも仲しの可愛い妹よ」
「嘘なのです! それは妄想なのです! 王女がこんなフツメンと一緒にいる訳がないです!!」
俺を巻き込むな。
「私の母様は平民なの。だから政略結婚には使えないから自由にさせてもらってるの」
「う、嘘……なのです」
「そうね。じゃあ、これ見ればリーゼさんも信じてくれると思うな」
そう言うと、アリーは胸のペンダントを外した。
そして、俺たちの前に見せた。
そこには双頭の鷲の細工が、つまりこの国の国章が象られていた。
この国章、つまり紋章を持つことを許されているのは王族のみ。
俺はつい、アリーの前で土下座していた。
「何をしてるの? アル君?」
「いや、なぜかその紋所みたいなの見たら、身体が勝手に動いて」
「きっと、ご主人様は前世で悪人だったのです、フツメンだし」
リーゼ、お前が言うな。それと顔で区別するの止めろ。
それにお前は本物の悪人だろ?
悪役令嬢って、本当は悪い人じゃなくって、目がキツいだけとかだけで、皆の心を鷲掴みにするいい方向のヤツだろ? お前は正真正銘の悪人じゃねえか!!
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