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38アリーとワンナイト

「へへへ、それでね、それでねぇ〜お父様がね、へへへ♪ おかしいの♪」


俺とアリーは居酒屋を出ると、何故か宿屋の俺の部屋で二人きりになっていた。


なんか、アリーの雰囲気が変わった。闇落ちから一転、陽気に訳のわからん話を続けている。


気のせいだろうか? さっきから同じ話を5回位聞いているような気がする。


「お父様ったら、『うさぎおいし、かの山』って歌が好きなんだけど、うさぎって美味しいんだと思ってたの、そしたらね、そしたらね、美味しいじゃなくて、追っかけるという意味だったの、うふ、うふふふ♪」


俺のベッドでぽよんぽよんと弾んでご機嫌のアリー。


ぽよんぽよんとはずんでいるのに胸は弾まないのね。言わないけど。


それにしても、アリーはとっても可愛い女の子だ。


幼馴染のフィンも何でアリーを選ばなかったのかな?


やっぱり乳かな。あのエルって女の子、Eカップ位はありそう。


アリーは控えめで、多分C位かな。


いや、乳は大事だ。あの膨らみには夢が詰まっている。だからアリーの幼馴染のフィンは牛乳の方を選んだんだと思う。英断だっと思う。だから、仕方ないよね?


乳がCとEなら自明の理だ。


「ねえ、アル君、一緒のお布団に入ろうよ」


はっ!?


これは俺を誘っている?


アリーは幼馴染のフィンとエルちゃんが今日初めて結ばれると思って、自暴自棄になっている。


「私、真面目なつもりだけど、たまには不真面目なことしてもいいじゃないかと思うの」


「アリー……」


「私、アル君ならいいよ」


そう言ってお布団に顔を埋める。


でも、俺はそんな卑怯なことなんて絶対やだ。


アリーは自暴自棄になっている。


そんな子につけ込むなんて。


「アリー、俺、今のアリーには手を出せない。アリーがフィンを吹っ切るまで嫌だ」


「ア、アル君はどっちなの? アル君て言ってることめちゃめちゃだよ」


「俺は、そんなアリーはヤダ」


アリーは潜ったお布団の中からこう言った。


「じゃあ、さ、一緒にお布団の中で寝よ。私、自分の部屋まで戻る元気ないかも」


「うん、わかった。俺も酔っていて、もう眠いから」


それで俺はアリーとお布団の中に入り、一緒に寝た。


☆☆☆


あくる日、目が覚める。


すぐ近くに人肌を感じた。


アリーだ。無防備に俺の横で寝ている。


「しまったぁ!」


俺は何してるの? またせっかくの合意あるヤリ逃げのチャンスだったのに!


俺の馬鹿野郎!


俺の叫びで目が覚めたのか、アリーが目をゴシゴシして俺を見る。


同じお布団の中にいたことを確認すると。


俺を凝視して、自分が同じお布団の中にいることを確認すると。


黙って、自分の荷物の中をゴソゴソする。


そして、あの黒い短剣を出して来た。


「アル君は悪くないの。私が悪いの、私がアル君を誘惑したからね」


そう言って、アリーは黒い短剣を持って、ジリジリと俺に近づいて来る。


「アリー、ね? 殺人はよくないよ。学校で教わったよね?」


「心配しないで、この短剣は心臓をグリグリしても痛くないよう毒を塗ってあるの。だから痛くないよ」


「嫌、痛くなくても死ぬだろ!!」」


「大丈夫なの。ちょっと刺すだけだから、この短剣は王族の自決用なの。痛くないようにと、知られてマズいことをしゃべってしまわないように何もかも忘れてしまう毒なの」


嫌、何もかも忘れるとか、それ殺人と大して変わんなくない?


「いや、俺、何もかも忘れるとか嫌だよ!」


「でも、アル君のためなの。お父様にバレたら、アル君斬首刑かも、だから」


いや、アリーは勘違いしている。


「ねえ、アリー。勘違いしてない? その、俺、昨日アリーに何もしてないよ」


「えっ?」


アリーは服が昨日のままだけど、どこも着崩れてなんかいない。


「アル君、何にもしなかったんだね?」


「そうだよ。アリーの自暴自棄に付け込みたくないよ」


本当はどうも酔って、冷静な判断ができなかった。


酔っ払うと真面目になるとか、俺、おかしくない?


「アル君……」


アリーは俺のお腹にぎゅっと抱きついて来た。


「アル君、ごめん。アル君みたいないい人に私が悪かったね」


「気持ちはわかるよ。俺も幼馴染に振られたからね」


そんな夜があり、俺達はいつものようにギルドに向かった。


ギルドの扉を開けると、途端に目の前に男が現れて、いきなり土下座した。


それは昨日の嫌な感じの冒険者、ダニエルだ。


「アル様、大変申し訳ございませんでした。俺はとんでもないことを! でも、俺はアル様に惚れこみました。どうか俺を子分にしてください。俺はあなたのようになりたい。だから、お願いします!」


ダニエルはこれまでの姿勢を180度変えて、俺に対して土下座して謝った。


俺は思案した。まあ、パーティに加えるとアリーと親睦を深めるのに邪魔だけど、子分ならいいか。


でも、こいつ、散々言われたからちょっと意地悪しとこ。


「S災害級の魔物を一人で倒すことが出来て、こんな可愛い女の子が彼女だなんて! こんな凄い方を馬鹿にするとか……? お、俺、許せないです!!」


内心ガタガタガタとずっこけた。昨日まで俺をハズレスキルだの落ちこぼれだのと馬鹿にしておいて急にそれを許せないとか言い出したんだが。


「は? 子分? ハズレスキルの勇者パーティの落ちこぼれって馬鹿にしていなかった? 弱いヤツは死ぬほど嫌いって言ってなかった?」


俺はこの調子がいい、ダニエルを生暖かい目で見た。


「そんなことは言ってません。そんなヤツがいたら、俺が成敗します」


わあ……。簡単に自分の言ったこと否定した上、調子がいいこと言い出した。


「ず、図々しい申し出ということは百も承知ですが……」


ほんと図々しいな。


「俺はみなを見返してやりたいんです! 俺、コミュ症で……それでいつもパーティを追放されてたばかりで、いつも陥れられて、本当は俺は何もしてないのに」


ダニエルは更に地面に頭を擦りつけた。


「子分になりたいって……俺はパーティメンバーは募集してないぞ? それでもいいのか?」


「全然構いません! アル様はいずれ、この国の重要人物になる方、俺はあなたにかける。あなたの子分というだけで俺にとっては誇らしいです。俺は……俺はハズレスキルなんです!!」


いや、人のことハズレスキルだと馬鹿にしておいて、自分もハズレスキルとか何だ?


「私からもお願いします。生き方下手なヤツですが、こいつは努力だけでA級冒険者になった努力家なんです。しかし……いつも誤解を受けてばかりで、追放されるのです」


会話に入って来たのはギルド長のバーニィさんだった。


「アル君、この人、見る目はあるようよ。意外と役に立つかもよ」


俺はしばし考えた。意地悪もできたし、意外といい奴かもしれん。


「わかったよ。子分として認める。共に剣を振るった仲間だ。是非頼む」


俺に何故か子分が出来た。

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支援職、最強になる~パーティを追放された俺、微妙なハズレスキルと異世界図書館を組み合わせたらえらいことになった。は? 今更戻って来い? 何言ってんだこいつ?~
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