「もう後が無い」と犯人は言った マイナス環境の悲劇
近年、無職の人による凶悪犯罪が増加しています。
彼等が何故、犯罪に及んでしまうのか。
2019年7月18日、非常に心の痛む凶悪犯罪が起こりました。
【京都アニメーション放火事件】
アニメ業界の中でも非常に知名度の高い制作会社が、一人の男によって第一スタジオが全焼。そして、34人もの優秀な未来有る若者達が死にました。
事件当日10時30分頃、ガソリン40Lに火を点け一瞬にして大爆発。建物の中に居た74名の逃走出来る猶予は僅か15秒以下だったと言われています。
このような事件が何故起きたのか。何を切っ掛けにして、どうしてこんな結末に至ったのか。
犯人は言いました。「もう後が無い」と。
職業は無職。幼少は父親のみの家庭に兄と妹のみで、経済的には慎ましいようでした。中学の頃には友人との交流も浅く、卒業アルバムには集合写真には映らず別の場所で撮られていました。
2006年には下着泥棒、2012年にはコンビニ強盗の懲役3年6か月前科持ち。更生保護施設に2016年まで居り、その後は埼玉県さいたま市に在住し、生活保護の対象で精神的な疾患を持っていました。
京都アニメーションを襲った理由は「小説を盗んだから」と「パクりやがって」と言いました。そして「社長を呼べ! 社長に話しがある!」と事件当日に叫んでいました。
一番重要なのは、犯人がどうだったかではありません。
犯人を死刑にとか、凶器の出処とかが問題なのではありません。
このような悲劇が何故起きたのか、食い止める術は何であったのかです。
犯人の言う小説を盗まれたからというのは、京都アニメーションには心当たりが無いそうですが、真相は不明です。ですが、犯人が怒り狂っていた事は真実であり、心当たりが無いにしろ何かしらの対応が必要であったのだと思います。
クレームは宝の山だと、先人は言います。苦情があるという事は、即ち「期待を持っていた」から出て来ます。何も無い場所からはクレームなんて出て来なく、何も生まれません。
しかし大きなクレームがあれば危険信号です。「期待を持っている」人達は【信頼】をしているからこそクレームを出す訳ですが、その【信頼】が得られなくなれば【裏切り】となってしまいます。期待を裏切られた人は何を仕出かすのか分かりません。
信者である程、何を仕出かすのか分からないという事です。
クレームの処理が適切であれば、今回の京都アニメーションも或いは未然に防げたのかも知れません。
人気であればクレームも必然と出て来ますが、クレームを迷惑と思って対応を誤れば、やがてどこかで爆発するのかも知れません。これは、アニメだけでなくどんな企業でも一緒です。
窮鼠猫を噛む、背水の陣といった、追い詰められた者が思わぬ行動に出る諺があります。【信頼】を返せず【裏切られた】とクレームを出す顧客側が思ってしまったなら、仕返しに出て来てしまう可能性も含まれているのです。
「もう後が無い」「失うものが無い」
そう、犯人は言いました。
彼は、マイナス環境でした。プラスになるものが無いからこそ、安易に犯罪を選ぶ事が出来る。
若い頃は仕事にも真面目に通っていた、郵便配達もしていたそうですが、コンビニ強盗を切っ掛けに人生は転げ落ちました。
何故、コンビニ強盗をしてしまったのか。
2012年という時期を振り返れば、2011年に鍵があります。
牛丼屋のすき家連続強盗事件。
深夜に店員が一人というワンオペレーションの牛丼屋は、脅せばいとも容易く店員からお金を奪える。
嘆かわしい事にそんな事件が多発していました。成功したから自分もやろうという人が続出したのでしょう。「すき家は強盗チュートリアル店舗」という皮肉まで出て来た程です。
その時期は人々の強盗を行う事に対し、危機意識が薄れていました。だからこそ、件の犯人も強盗行為を行ったのだと、推測します。事件を起こした直ぐ後に「オウム真理教の犯人も逃げきれなかったから」と自首したそうです。
2016年からは埼玉県さいたま市に住居を置き、1Kに住んでいました。
生活保護を受けている無職です。
彼がどういう心境であったのかは、分かりません。ただ「もう後が無い」「失うものが無い」と度々口にしていました。隣りに住む人にも当たり散らし精神的にも参っていたのでしょう。
深い怒りをぶつけた先が京都アニメーションでした。包丁やハンマーを携えて殺害に及ぶ程に恨みを抱いていました。
もしもの可能性をあげたら、きりがありません。
しかし、道を間違えて就職難になってしまっていたのなら、再度の就職に成功していたらどうなっていたか。
失うものが無いというマイナス環境、それがもし、失うものが有ったとしたらどうなっていたのでしょう。
もう後が無い。それがもし、先の見える幸せが有ったのなら。
マイナス環境が生んだ、巻き添えの悲劇。
マイナスに追い詰められた人が選ぶ、犯罪による悲劇。
そもそも人は何故、マイナス環境に転落してしまうのか。
真面目に学業に取り組まなかったから。進学して良い大学へ行かなかったから。良い会社に行く力が無かったから。
しかし、それに負けた者はどうなるのでしょうか。競争だけが全てなのでしょうか。
心無い人は言います。狼よ生きろ豚は死ねと。
しかしながら、良い会社に恵まれた人でも現代社会は転落する事があります。
売り上げ不振に陥り倒産もしくはリストラ。新しい会社でも上手く行かず、ストレスで病気に陥り止む無く退社等。
無職の人にも、望んで無職になった人は殆ど居ません。
そんな人がマイナス環境に苛まされ、事件を犯すまでに追い詰められてしまう事もあります。
思い返せば、無職の人による事件が多数存在します。
無職の人は、近年増加しています。不景気だから。
ならその不景気の原因は何か、無職ばかりだから。
無職の人は何故、就職出来ないのか、どの会社も経営難だからです。
【消費税の%は無職の%に比例している】
消費税、それが果たして悪なのかと首を傾げる人が多いかも知れません。しかし、消費税は確実に日本を苦しめています。
自分はそんなに窮屈に感じていないと思う人も、実情として多く居ます。けれども、日本全体での1%の消費税は、1%の人が職を失う事に等しいのです。
世界的に見て、日本の消費税は安いんだと思われがちですが、それは消費税に限った話です。
【日本の課税は世界で2位】
法人や個人所得に給与税と、つまり手取りが最も少ない国なのが日本の現状です。そして更に消費税で圧迫を掛けて、あらゆる企業の売り上げを下げに下げて経営不振に陥れ、リストラや倒産する企業が続出します。
ちなみに1位はアルバで観光名所でありダイビングのメッカとも呼ばれる程、美しい海で親しまれています。重課税だとしても失業率は低く、生活水準の高い国です。
消費税10%にもなれば、そのアルバを超えます。
日本の税金は果たしてこのままで良いのでしょうか。
日本より課税の低い国はもっと充実した使い方をしています。全ての学費が免除であったり、育児手当金が豊富であったり。
裏を返せば日本に劣る部分も多々あるので使い方次第ではありますが、それでも課税一位になる程の税金の使い方には不審な点が拭えません。
実状として日本の税金の使い方が、あらゆる企業の未来を閉ざし、無職の人を大勢排出しています。
そして、無職というマイナス環境を呼び、不幸に陥ります。
人は、職を失えば、未来が見えなくなります。
衣食住、人が生活する上で欠かせない三つの要素ですが、この「食」という字には「職」という意味も含まれます。
食べ物に困らない生活をするにはお金が必要。お金を得るには職が必要。人が生きて行くには職も必要です。
多くの人がマイナス環境から挽回し、プラス環境に転じて幸福を得る。
そうなれば必然と犯罪は減ります。
人は犯罪を行う時「罪」と「失うもの」を天秤をかけます。
マイナス環境に居る人の犯罪に対する天秤は「失うもの」が極めて軽い。だからこそ軽々しく犯罪という行為に及びます。もしプラス環境に転じていれば、自身の生活を守る為に「失うもの」が重くなり「罪」を犯す行為に及びづらくなります。
もし「失うもの」が大きいプラス環境に居る人が「罪」を犯す時があるならば、相応たる理由が有る、もしくは「失っているもの」を「埋めたい」時でしょうか。
悲劇は絶対に繰り返してはいけません。
必要なのは犯人をどうこうではなく、悲劇を繰り返さない為に必要なのは何かです。
犯人さえ居なければ事件は起こらなかった、果たしてそれが本当にそうなのか。
今回の犯人が居なかったとしても、また似た境遇の誰かが同じ事を仕出かしたかも知れません。
本当に大事なのは【根本】です。マイナス環境に至り不幸となってしまう、その境遇こそが悲劇の引き金を呼んでいます。
悲劇を繰り返さない為に、マイナス環境の人を作らない為に、我々が行うべき事。
それを賢明に考えていかなければなりません。