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強さの理由

 施設の奥。鍵のかかった部屋の梯子を下った地下室に俺とレイは向かい合って立ち、ニーアは隅で座っていた。

 さっきレイから説明があったが。元々ここは孤児院では無く、今ほど平和では無かった時代に国外からの敵に対抗するために建てられた軍の前線基地だったそうだ。この地下室はその時に避難所として使用されていたらしい。


「昨日ギルドで戦ったときに思ったけど、今まで実戦主体の訓練が多かったんじゃ無い?」


 実戦主体……確かに基礎的なところはすっ飛ばしている感は否めないな。座学というか、知識としての戦い方は勉強した覚えはないし、刀での戦い方っていうのも教えて貰える人がいなかったし。


「そう……だったと思います」

「まあそれでも問題は無いといえば無いよ。身につけた技術や知識が実戦で普段通り活かせる保証もないし。だったら実戦を通して強くなる方が良いよ。けどそれだと、経験したことしか出来ないから想定外のことが起きたときに使える手札が少なくて対応が出来なくなる」


 ……覚えが凄いあるな。俺の場合死んで覚えてるところがあるけど、そんな方法例外も例外だしな。


「けど、それでも問題なくする方法が一つだけある」

「え、基礎を学んで対応力を伸ばすとかじゃなくてですか?」

「うん。自分の得意を誰も対応出来なくなるくらい徹底的に伸ばして鍛えて、押しつける。それだけ」


 まさかの突然の脳筋理論。あからさまに怪訝な顔をしてしまっていたのか、俺の顔を見てレイは説明を続けた。


「勿論それだけで良いって訳でもないけど。けど基礎訓練っていうのはいつか限界が来るし、そもそも無駄な場合もある。例えば私や君みたいな元々の腕力が無い状態で身体強化を使ってかなり強化したとしても、元々腕力がある人と比較すればどうしたって効率は悪くなる。そもそも私は魔法が使えないけど。だったら自分の得意を極めた方が強くなれる」


 まあ言わんとすることは分かるけど、恐らくそれは万人に当てはまることでは無いだろう。確かにレイのあの速さは初見なら勿論、何度か経験したところで対応は難しいだろうが、速さが得意な人が誰しもあの速さに到達できる訳では無い。他の分野に至っても同様だ。だからこそ色んな技術を学び、組み合わせ、あらゆる状況に対応出来る力こそ、常人にとっては強くなれるほぼ唯一の道だ。レイの言っている強くなる方法は、天才とか超人とか、そう言った人種にのみ当てはまる方法だ。……もしかしてそれがSランクの条件だったりするのだろうか。


 そこまで思考を回したところで、さっきのレイの発言に奇妙な点があることに気づいた。


「魔法が使えないって、どういうことですか?」

「どうって、そのままだけれど」

「え、じゃああの速さは?」

「あれは私のスキル。冒険者になってしばらくしてから身についたの」


 そうだったのか。魔力探知で上手く補足できなかったのは速すぎるって事もあったと思うけど、レイさんの魔力じゃ無くてスキル発動の余波みたいなものが魔力と似た反応として辛うじて捉えてたからってことか。


「前置きはこのくらい。頑張って説明してみようとしたけど、やっぱりこういうのは向いてないみたい。多分私が君に教えられるのも一つだけだと思うから」

「それって?」


 俺の疑問に、レイは腰に携えた鞘からソレを引き抜き構えた。


「これ。刀の戦い方。多分教えてくれる人いなかったでしょ」


 レイの構えたのは黒い刀。鑑定眼を使わずとも分かるほど、出来の良さが伝わる刀だった。


「さっきも言ったけど、私は多分言葉で説明するのは苦手だから、見て覚えて」

「えっ」

「大丈夫。寸止めにするようにするし、当たっても峰打ちにするから」

「いやまって」

「大丈夫。出来るようになるまで教えてあげるから」


 それから俺は、今までやりたくても出来なかった刀での戦い方を学ぶことが出来た。それはもうみっちりと。みっちりみっりと。

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[一言] 笑顔が絶えないアットホームな孤児院(訓練場)
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