二人の思い
「アリアさん、こちらは?」
ロイヤードはクラガとエリシアを見ると、こちらへ紹介を促してきた。
「私の友人です。クラガさんは私の武器を作ってくれている専属鍛冶師さんで、エリシアさんは……」
あれ、そういや貴族の娘って言わない方が良いのか? 前なんかケーデに誤魔化してたし。
「初めまして。エリシアと申します。アリアさんとは少し前にご縁がありまして、それから仲良くしてもらっていますの」
俺が困っているのを察したのか、エリシアは自分でロイヤードに挨拶した。
なるほど。取り敢えず貴族ってことは言わない方が良いらしいな。
「初めまして。私はロイヤード=ウェリブと申します。先ほどの話では貴方方も冒険者になりたいとのことでしょうが……」
ロイヤードは一度言葉を切るとジッと二人を見た。
「……ふむ。エリシアさんは中々の魔力をお持ちのようだ。それにエルフの方にしては珍しく剣術も得意とお見受けします。ですがそちらは並みといったところですね。クラガさんは……鍛冶師というだけあって腕力だけはあるようですが、それ以外は……」
凄い。見ただけでそこまでわかるなんて。
しかしクラガへの言葉が馬鹿にするような物言いで無意識にムッとした表情を浮かべてしまい、それはエリシアも同様だったようだが当の本人は何も気にしていない様子だった。
「へいへい。おうアリア、待たせて悪かったな。打ち直し終わったぜ」
クラガはロイヤードの肩を掴んで退かせると、荷物を下して一振りの刀を差しだした。
「わっ、もう出来たんですか!?」
「おう。だけど出来は前以上だぜ」
以前竜の目に襲われたときに無茶な使い方をしたから鞘は砕けてしまったが、刀の方も刃こぼれやら結構なダメージがあったらしい。クラガさんに直してもらおうとしたのだが、未完成でもあの程度で砕けるなんて俺のプライドが許さないとかで、一から打ち直してもらっていたのだ。
「さっさと仕上げしてぇんだが、今日か明日空いてるか?」
「どっちでも大丈夫です!」
「じゃあ今日やっちまうか!」
「これは……。先ほどの言葉、訂正しましょう。貴方の鍛冶師としての腕は素晴らしいもののようですね。私の武器も貴方にお願いしたいほどです」
クラガの打った刀を見て、ロイヤードはクラガに謝罪した。こいつ基本的に根っから嫌な奴ってわけではないんだよな。そのせいで嫌い切れないし、変人であることは間違いないけど。
「悪ぃな。さっきも言ってたが俺はこいつの専属だ。俺の腕はこいつの為だけに振るおうって決めてんだ。まあそこのエルフ女にもやってやってるが、そこは仲間特典ってやつだな」
「ちょっとエルフ女はあんまりでは!?」
「はは。流石アリアさんのご友人。良い方たちですね。お二人を邪険にして貴女を勧誘しても嫌われてしまいますね。それでは本末転倒です。いつかパーティ同士の合同訓練、という形で是非ご一緒しましょう」
「ええ、それなら是非」
ロイヤードはそう言い去っていた。ほんと、変態でさえなければただのいい奴なんだが……それよりも。
「そういえば、二人ともどうしたんですか? さっき冒険者になるみたいなこと言ってましたけど……」
「みたいじゃなくて、そのまんまだよ。俺らも冒険者になりに来たんだ」
「どうしてまた」
「あーまあ、な。特に深い理由はねぇよ、な?」
分かりやすく誤魔化すクラガに、エリシアは呆れたようにため息をついた。
「クラガさん、ここは下手に誤魔化すより素直に言った方が良いですわよ。ボロボロになって守られるのは気に入らないって」
「んなっ、そんな言い方してねえだろうが!」
「意味としては同じでしょう。それに私だって同じです。後ろでただ守られるより、横に立って支え合いたい。そう思って冒険者になろうと決意したんです」
そんな風に思ってくれていたのか。……ちょっと嬉しいな。
「……あれ、エリシアさん。ご家族の方は……絶対反対したんじゃ」
「ええ。お父様は元々貴族の娘という立場に縛られず、自分の人生を歩んでほしいとは考えていたらしいのですが、それでも命の危険が付きまとう冒険者は流石に中々納得して下さらなかったのですが、アリアとクラガさんのお陰で助かりましたわ」
「え、私ですか?」
何かしたっけ? と首をひねると、クラガが苦笑いでエリシアの腰に差してある木刀を指さした。
……ああ、説得か。
まあ最終的に双方納得したのだろう。そうじゃなかったらラウド経由で冒険者になれないように根回しとかしてるだろうし。
「それじゃあ二人ともこれから試験なんですね。受付ってもう済ませました?」
「おう。ついさっきな。戦闘試験なんだっけか?」
「はい。勝ち負けというよりは内容でみたいです」
「ふーん。まっ、勝つに越したこたぁねぇだろ」
「あはは……」
そういえば。エリシアは魔法と木刀で戦うってのは分かるけど、クラガってどうやって戦うんだろ。後ろに背負ってる袋に入ってるのかな?
聞こうとしたが、それより前に受付から二人が呼ばれそのまま教官にそれぞれ連れられ訓練室へと歩いて行った。
うぅむ。気になる。さっきはとっさの言い訳だったけど、二人とパーティを組むってのはかなり理想形な気がする。どうせなら受かってほしいし……ちょっと覗きに行くか。
そう決めると外から覗き込もうと一度外へ出た。
次話三人称戦闘回です。一番書いてて楽しい内容ですやっほう





