交流戦-1
とーーーーーーーーてもお久しぶりです。
今後は1話当たりの文字数を減らして、タイトルも〇〇-1、〇〇-2みたいな感じに、今まで1話で出してたのを短く区切って、できるだけコンスタントに更新できるようにします。
「さて、君たちにはこの後訓練に合流してもらうんだが……このまま何もしないと得るものがないどころか、下手すれば失うものも出かねない、互いな」
「ですね。さっき言ったそちらの件もだし……」
おいそこの二人、肩を震わせて笑いを堪えるな。思い出し笑いをするな。
「それに多分、こっち側も同じような問題があると思うんですよ」
身近なところで想像しやすいのは……うん、クラガだな。エリシアとかはぶつからずに上手いこと流しそうだけど、クラガは真正面から衝突しそうだなぁ。
「だろうな。現状は互いが互いを色眼鏡で見てる状態だ。それを解消することが、人員が揃い本格的に訓練を行う初日である今日の最優先課題だ」
「だね。そしてその問題と、あと諸々ちょっとした課題も上手くいけば片づけられる方法がちょうどあってね」
「ああ。それに俺の想定ならそろそろ都合のいい展開が起こるはずだ」
そう含みのある笑みを浮かべこちらを見るロイとアラヤ。
……なんだ。なにをさせる気だ。
その後アラヤの話す計画に引いていると、やや焦り気味のノックが扉から響いた。
***
第一訓練場と呼ばれる広大な敷地。日々兵士たちによって踏みしめられた地面には、彼らの血と汗が絶えることなく染み込んでいる。
その一角で、訓練のものとは違う喧噪を起こしている者たちがいた。
「んだとテメェ、もっぺん言ってみやがれ!」
「ハッ。見た目通りの粗暴さに加えて、頭の出来も悪いようだ。いいだろう。次は理解できるよう、より分かりやすく言ってやる」
騒動の中心にいるのは二人の男。一人は浅黒の肌の冒険者、クラガ。そして彼と相対している若い騎士の男だった。
「君の……いや、君たちのような野蛮人が僕らと共に訓練に励める。ただそれだけの光栄を享受すればいいんだ。的外れな意見など以ての外という訳だ」
「この野郎……!」
今にも殴りかからんとするクラガ。しかし力を込めた右腕は彼と同ギルドの男に抑えつけられた。
「失礼。彼が粗暴で野蛮、頭の出来も悪いという事には同意しましょう」
「おい」
「更に加えるなら、彼には卑劣な狡猾さもあります。なにせ私がパーティに勧誘しようと親交を重ね、あと一歩というところの女性を横から掠め取った実績があります」
「アリアのこと言ってんなら、お前ちゃんと気持ち悪がられてるからな?」
「――しかし! 貴方の先ほどの発言は撤回していただかなければならない。野蛮人は彼だけで私たちではありませんので」
「よーしロイヤードてめぇも喧嘩売ってんな二人同時に買ってやるよ」
抑える手を払い隣に立つ男の襟元を掴み上げる。しかし彼――ロイヤードの端正な顔には一部の歪みも生まれず、笑みを保ったままだ。
「ハッ、身内同士で醜く争って、まさしく野蛮じゃあないか」
「……君が我らの事をどう捉えるかは、この際いいでしょう。――だが! だがしかし! 彼女のことは改めてもらおうか!」
ロイヤードが勢いよく示した先、二人の男に挟まれた金髪の美少女がいた。結構引きつった顔をして。
「……え、何の話?」
「いやあ、アリアのとこのギルドは面白い人が多いねぇ」
「多様な人材がいることは良いことだ……逆もあるがな」
静かに呟き、アラヤは鋭くした目で周囲を見回す。そしてその視線を先ほど待てクラガ達と言い争っていた騎士で止めた。
「報告。何の騒ぎだ」
「ハッ。これは、その……」
「ちょうどいいところに。あんたがこいつらの隊長……や、この二人と一緒にいるんだ、もっと上の騎士団長様か?」
男が僅かに言い淀んだ隙に、クラガが押しのけて前に出た。
「……前から思ってたけど、彼、結構度胸あるよね?」
「……まあ、私の知ってる中では肝の座りは第一位ですかね」
小声で話すアリアとエクシアを意に介さず、アラヤの前に立ったクラガが続ける。
「噂には聞いてたが、流石にどいつもこいつも強ぇな。俺は正直いうと戦闘が本職じゃねぇが……それでもよく分かるよ」
「賛辞と受け取ろう。……で? 本題はなんだ?」
意図してか高圧的な雰囲気を出すアラヤ。しかしクラガは動じない。
「俺の本職は鍛冶師だ。だからこそ言わせてもらう。こいつらは武具の扱いがなっちゃいねぇ」
そう言って指さした先は先ほどまで言い争っていた男、その身に付けている訓練用の武具だ。
軽装の鎧と刃引きされた剣。どちらもあくまで訓練でしか用いないものだ。
「あくまで訓練用、実戦で使うのはまた別のやつ。だから多少雑に扱っても問題ねぇって意識があるんだろうよ……んな舐めた考えでいつまでもやらせる気なのか、こいつらをよ?」
その言葉に僅かに表情を歪めた男を見て、アラヤは事の次第を把握した。
「……なるほどな、事情は把握した。確かに君の言うことはもっともだ。そこの騎士、並びに総員に対し改めて考えさせる必要があるな……が、君のそれは余計な世話というものだ」
最後の言葉に、クラガは目を細める。
「彼の所属隊のものから、既にそういった報告は受けていた、他にも同様にな。そろそろ経験の浅い新兵が調子に乗り出す時期でな。そういったことへの再教育の準備もしていたのだ」
「だから、余計な世話だってか?」
「ああ。こちらにはこちらの、そちらにはそちらの領分がある。このような機会を設けた場であっても、踏み込むか否かの判断は必要だろう」
「そいつぁ、そうだな」
言葉では同意しているか、その声音と表情は正反対の意思を含んでいるようだった。
騎士団長自らの、互いを両分する発言。それはまさに今後の両者の関係に影を落とすものだった。
睨み合いとも言えるほどの張り詰めた緊張。しかしその緊張を切ったのも騎士団長――アラヤだった。
「しかし初めての者同士ではその領分も分かるはずもない。それに今回は合同訓練。馴れ合いは不要としても、不仲になる必要はない。故に」
軽く見まわし、先ほどよりはやや軽い、明るい声音で伝えた。
「紹介も兼ねて、代表者による交流戦でもしよう」
ロイヤード……?誰……?ってなった方は34話をご覧ください。
多分覚えてる人誰もいない説あります。