シーナの秘密-2
自らを指さしたサルヒールに、シーナは深く溜息を吐く。
全くこの子は、一体何を考えて……。
厄介者を見る目になっていることを自覚しつつも、しかし先程のサルヒールの言葉を思い返す。
孤独な生活、ね。
思えば、彼女が私を知ってから何十年だろうか。生きてきた年数に比較すれば短いが、しかしそれ以前のことを思い出そうとすればやや霧掛かった記憶になる程度には長い年数。これは単に昔のことで思い出せなくなっているのか、それとも。
「覚える必要、記憶する価値も無い人生だったと言うことか」
ふと溢した言葉に、二人の視線がこちらを向く気配を感じる。
「どうかしらシーナ。案外、良い結果になるかも知れないわよ?」
穏やかな表情で、諭すようなその言葉に再び溜息が出る。
「……サルヒール、昔からお前はそうやって年上のように……逆だろう逆」
「あら、大事なのは実年齢よりも精神年齢ですよ?」
「……馬鹿にされていないか?」
いえいえい気のせいですよ。
そうやって冗談めかして流す二人のやりとりを見て、クラガは首を傾げた。
……ぱっと見は祖母と孫のやりとりだなぁ。
見た目としても合っている……が、どうやら実年齢で言うなら立場は逆らしい。
確かにエルフはヒューマンやドワーフと比べれば長命。エリシアのようなハイ・エルフなら更に長い……といっても高々十年二十年だ。そもそも二人ともエルフなのだからこのこの考えは全く意味が無い。
眉間に皺を寄せて考えていると、シーナが本日三度目の溜息をついた。
「……サルヒールの傲慢にも呆れ尽きる程ですが、良いでしょう。クラガ、話してあげましょう。私とは何なのか。エルフとは……いえ、この世界に生きる人間とは何なのかを」
「随分壮大だな」
「ええ、壮大で、くだらない話ですよ」
呟き、フルーツジュースを飲んで口を湿らせる。
「そうして話し終えた最後、貴方の反応を持って判断します」
「俺を殺すかどうかか?」
「今の私を知る全員を殺すかどうかです」
躊躇いも無くでたその言葉に、クラガの体が強ばる。
「俺等二人……じゃあ無ぇな」
「ええ。一先ず暁の地平に属する全員。あとはギルドに属する冒険者で面識が強い子達。全員です」
淡々と告げられる声音には、それが嘘偽りでは無いと感じさせる。
つまり理由や方法は別として、気負い無く言える程度にはそれが実行可能ということだ。
「それはまぁ、責任重大だな」
「ええ。ですので心して、そして後悔しながら聞いて下さい。これは貴方があの時、気を失っていれば、聞いていても聞かなかった振りをしていれば始まらなかったのですから」
そうして、彼女は語り始める。彼女の終わりと始まり──そして全ての原因であった、彼の始まりを。
「全ては五百年前。ドラグニールの目覚めから始まります」





