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最強の冒険者

 あのメンバーの中で誰が一番強いかと問われれば、迷いはするが少なくとも私ではないとは答えられる。

 スキルによる光矢──正確には違うのだが──の強さは十分に自覚している。限られた空間……例えば避けようのない一本道で使えば文字通り必殺の攻撃だ。しかし裏を返せば、開けた場所なら躱しようはいくらでもある。勿論それに対する策はいくらでもあるが、もし場所が限られた空間では無く、そして相手がレイだったなら私の攻撃はほぼ全て無意味に終わる。

 魔方陣の精製から光矢の射出。その速度も合わさり実質的には発動から命中までは一瞬だ。だが一瞬さえあれば彼女には十分すぎる時間だ。この時点で私はもう一番強いかという対象からは外れる。





 私達の中で誰が一番強いか……? 迷うけど、私に聞くより他の人に……え、シーナがそんなことを?

 嬉しいけど、でもやっぱり私じゃ無いよ。そうだね……もし敵だったらって考えると、ガヴァールとはあんまり戦いたくないかも。

 ドワーフの力で振り回す斧も怖いけど、あの人、色んな仕掛け作ってるから、何してくるか分かんないの。みんな私が瞬間移動してるみたいっていうけど、私はただ速く動いてるだけ。だから途中に罠が仕掛けられてても反応されてしまうし、対応が間に合わないかも知れない。実際罠なんて無かったとしても、あるかもしれないって思わされたら私は全力では動けないから。





 俺らんなかで誰が一番強いかだぁ? んなもん俺が最弱に決まってんじゃねぇか! そりゃまあそこらの奴らには負ける気はしねぇが、戦闘力特化の化物共にかなうわけねぇだろうが。だからこうしてチマチマ道具でそのさを補ってんのよ。

 しかし最強ねぇ……うぅむ、ガルシオ。あいつは厄介だな。色々都合よく考えてだが、ほかの奴らは対策方法は思いつきはする。ただガルシオはなぁ……あいつ何してもすぐ治るだろ? 雁字搦めに捕まえたとしてもなんだかんだ抜けられそうな気がしてなぁ。当たれば即死の何かしらも思いつかねぇって訳じゃねぇが、当てるためにはあいつに相当間抜けになって貰ってようやくだしな、ガハハ!





「よし、おっさんはあとで一発殴るぞ。……つーか誰が一番強いかって、ぞろぞろ連れ立って聞きにくんじゃねぇよ」


 心底呆れた様子でガルシオは目の前の見知った集団に肩を落とす。


「まあそう言うな。お前だって俺らの力関係をこれっぽっちも考えたことねぇとは言わさねぇぞ。あと殴るのは勘弁してくれ」

「ねぇようっせーな。つか隣に座んな」


 にやにやと笑みを浮かべながらガヴァールは背を向け座ったガルシオの隣に腰を落とす。シーナ、レイも続いて座り、目の前の光景を見る。


「まあ、アレだな。俺が言うんであれば、アレには混ざりたくねぇな」


 げんなりした表情でガルシオは正面を指さした。


 場所はシーナの故郷でもあるヴォクシーラ。そのギルドの地下に作られた訓練場。その中でも一番広い部屋。行われているのはとある二人の模擬戦。


 少女は不規則な軌道で宙を移動しながら相手の死角へと回り込み、青年が対応しようと反転したときには既に姿は無く、上空から刀を振り下ろす。青年は強引に構えた大剣を振り上げ斬撃を防ぎ、そのまま背後から迫っていた火球に向けて少女を斬り飛ばす。

 少女は飛ばされたまま身を翻し、刀を床に突き刺しその上で片手逆立ちをするようにして火球を躱す。更に刀に両断されるように進んだ火球は2つに分かれ、左右からの挟撃に動きを変えた。

 左右の火球に正面からの少女の斬りかかり。青年はその場で軽くジャンプし、背後の床から自分に向けて土台を突き出させ、それを足場に跳躍。全ての攻撃を躱す。

 更に少女の攻撃は手数を増やす。自身の影を実体化させた多人数化。それによる遠距離近距離の連係攻撃。息の合った二人では無く同一の思考だからこそ出来る一分の隙も無い攻撃に、青年は全て紙一重で防ぎ続ける。


「どちらか一人と戦えならまだ承諾するが、あれに参加するのは遠慮したいな」

「アリアとは戦いたい。エクシアはいらない」

「ハッハッハ、いらないか! あいつも可哀想にな。あと当然俺もごめんだ!」


 均衡を保っていた二人の戦闘だが、お互いの実戦経験の差が出てきたか。アリアの動きに乱れが出始め、最後にはエクシアの勝利に終わった。


「あー! また負けた!」

「おつかれ。や、アリアとの模擬戦はほんと勉強になるよ。昔に比べたらどんどんギリギリになってきちゃったし」

「次こそ勝ちますからね!」


 床に伏せ肩で息をする二人にレイとガヴァールがタオルと飲み水を差し出す。


 礼を言って受けとる二人に、ガヴァールはニヤニヤと楽しげな笑みを浮かべながら先程自分が受けた質問を投げかけた。


「私達の中で誰が一番強いか、ですか?」

「どうしたんです急に」

「いやぁ、俺自身も興味無いわけじゃ無いが、あっちのお嬢さんがな?」


 そう言って指をさした先にいるシーナ、の傍にいる見慣れないエルフの少女だった。


「初めまして! 私、先日ヴォクシーラギルドの冒険者になりましたシーナ様の一番弟子、コニスっていいます!」

「一番どころか一人として弟子をとった覚えは無いのだがな」


 呆れたシーナの言葉など意に介さず、コニスはアリアとエクシアに駆け寄る。


「私、シーナ様がすごいパーティに所属されてるって知って、あの強いシーナ様のお仲間ってどんな人達なんだろうって気になったんです!」

「それで誰が一番強いかってことまで話が転がったのか」

「おう。因みにシーナから始まって、レイ、俺、ガルシオ、んでお前らって順番で来てるぜ」

「個人の解釈入りすぎて参考にならなさそうな順番になってません……? 私絶対そんな順位じゃ無いですって」

「んなこと言ったら俺が最下位に決まってんじゃねぇか。適当で良いんだよ適当で」

「そんな質問者の前で……」


 困った表情を浮かべながらアリアは少し考える。


「……いやまあ、エクシアさんには模擬戦で負けっぱなしなので、取り敢えずエクシアさんの方が強いですかねぇ」

「そう? 本番想定なら変わってくると思うけど……でもそっか、何でもありの想定でも良いんだっけ?」

「はいっ! もう何でもありで!」

「じゃあ──」


 エクシアは振り返り、自分たちの模擬戦での万が一のために備えて待機してもらっていたが、全く出番が無く隅でうとうととしているパーティ随一の回復魔術師を指さした。


「──何でもありなら、ぶっちぎりでニナかな」

「……ふえっ?」

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