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初めての転生。初めての召喚。

 日常は退屈だ。フィクションのような刺激溢れる生活などどこにもない。

 全くないと言えば語弊はあるが、そんな生活を送る彼らはいわば物語の主人公だ。人は皆、自分の人生の主人公だと誰かが言ったが、だったら俺みたいな平凡な人生は誰の目にも触れないどころか、その機会すらない駄作だったというだけだ。


 とはいえ、人生は既に完成された物語とは違う。ある程度は自分で舵が取れる。それに考え方、視点を変えれば、退屈なことだって少しは楽しくなる。

 仕事をタイムアタック形式にしてみる。成功すれば普段は目も向けないお高めのお惣菜を買って帰る。その程度のことだ。他の人からすれば退屈な日常の一部だろうがこれは俺の人生、物語だ。どうせ俺しか見ない駄作なんだから俺さえ満足できれば十分だ。


 そんな人生を辿って今日で二十六年目。仕事も定時で終わらせ、ちょっとどころかかなり良い弁当と惣菜を買い込み、日時指定で注文したパソコンを迎え入れるために帰路についている最中。

 パソコンに関してはちょっと金額的に無理をしちゃったが、誕生日なんて物語で言えばかなりの重要ポイントだ。無理するくらいが丁度いいだろう。


「きゃあああああ!」


 上機嫌で帰っていると、前方から女性の悲鳴が聞こえてきた。俺の足は考えるより先に動き、すぐにもみ合いになっている男女が見えた。悲鳴を上げて抵抗している女性と、痺れを切らしたのか右手を振り上げた男。電灯に照らされた右手には鈍く光るナイフが照らされていた。


 そこで駆け出したのは退屈な日常から抜け出せると思ったからか、それとも別の何かか。


 その答えが分かるより先に、胸が焼けるように熱くなり、遅れて襲ってきた激痛が徐々に意識を刈り取っていった。


 ああクソ。何してんだ俺。


 薄れゆく意識の中、視界の端で遠ざかる男の背中と涙目で体をゆすって呼びかける女性を確認出来て、少なくとも無駄死にではないと安堵する。


 あ、この子けっこう可愛い。ここで死ななかったらこれを機に仲良くなれねぇぁなぁ……死にたくねぇなぁ……。


 そうして俺は目を閉じて――そして開くと、目の前にはあの女性ではなく、厳つい巨大な竜が覗き込んでいた。


「ぅわぁぁぁぁああああああああああああああああ!!」

「ゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 俺と竜は同時に悲鳴を上げ、あまりに大きな竜の悲鳴は目の前の俺を容赦なく襲って再び俺の意識は途絶えた。

ちょっとだけ改稿しました。


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― 新着の感想 ―
[一言] てことは実際は 「ぅわぁぁあ─────────────── 「ゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」 みたいに音として自分の声が聞こえてない訳だ。 声デカすぎぃ!
[一言] 面白そうです。今週後半に最近の章にアクセスしてみます
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