07 世の中平穏だ
あれから3日経った。
・・・何事もなく過ぎて行った。
昼間は仕事が溜まってて考える暇無かったから助かったけど。
今日は仕事もひと段落したんでちょっとそわそわしてる、
だって何もしてないんだもの。
あれから鍛錬?して、脳内会話にも慣れてきたところだ。
時々、無意識に声に出してる時があったけど偶々近くに誰もおらず
冷や汗かいたりしたのは内緒だ。
「何も無いな?クリス」
「そうですねぇ、平和なとこですね、新宮町って」
「今は落ち着いてるだけだと思うけどさ、何かあっても困るけど」
休憩時間に念話で会話してる自分見てると・・・
なんかもう厨ニ病通り越してるな。
リアルなんだけど!なんか特別って気がするけど!
クッソ〜ちょっとした事無いかね。
パソコンいじりながら午後からの仕事をまとめる準備をするのだった。
午後より工場内を廻ってみた。
食品製造工場は例外なくケガが多い、だってオートメーション化されてるし巻き込まれたらケガじゃ済まないことが多々ある。
人材も不足してるし派遣さんも毎日いるし危険だらけだ。
「珍しいかい?」
はい、全部初めて見るものですから」
「あまり動いている機械に近づかない方がいい、基本的に何かが飛んできて巻き込まれることは無いと思うけど、クリスは不可視なだけで引っ掛かったらそのまま持っていかれる」
巻き込まれたり潰されたら回収出来ないし機械を停める理由も説明出来ないしな。
「了解です、肩に乗ってますね」
しばらくチェックと案内を兼ねていると、、、
「あの人、なんか動きがおかしいですよ?」
クリスがある人を指していたんで見てみるとなんか頭がふら付いてる。
近づいて顔をちょっと覗いて見ると・・・顔色悪っ!
流れ作業酔いって奴かな、最近入った人だろうか。
現場責任者呼んで対応をお願いする。
休憩時間近かったみたいなんでそのまま先に休憩行くように促している。
休憩しに行く後ろ姿見ながら・・・
「クリス、後衛職の僧侶・銃士で能力承認頼む」
「了解、能力確認。承認OK送ります」
おお、来たよ。
なんか降りてきたって感じがする、すごい違和感だ。
そのうち慣れるだろう。
さて、銃のイメージを固めて右手に具現化させてみる。
よく判らない形の拳銃が手の中に入ってきた。
実際に実弾を撃つわけじゃないから、形は拳銃と認識出来る程度の物だ。
そのまま休憩に行く従業員(女性)に向け撃つイメージを固める。
周りから見ると右手を真っすぐ前に出している姿にしか見えない。
後ろ姿に向かって記念すべき初の一発目は回復弾だ。
従業員の女性は何事もなかったようにそのまま歩いて行った。
「気分が悪くなっただけだから休憩中に治るだろう」
程度が軽い症状だから効果の程はあまり判らないけどシステムの流れは何となく
把握出来たから良しとしよう。
あと4発撃てるけどどうしようか、、、、そうだ山上課長が最近調子悪そうだったから探して試してみよう。
山上は同じ部署の後輩だ、役職は同じだけど役割がちょっと違うのだ。
探していると、、、いたいた、机に座って事務処理していた。
やはりなんか調子悪そうな顔してる。
「なんか顔色悪そうだけど?」
「解る?最近手が回らなくて余裕が無くて睡眠不足気味なんだよね」
まだ40過ぎなんだけど疲れているせいか老けて見える。
この場合でも異能力効果あるんかな?
試しにやって見る事にした。
今度は至近距離から直接な為、肩に触れて撃ち込むイメージで、、、発動。
何事も無かったように廻りの時間は過ぎて行く。
「これ、効果あるんだよな?」
「そういう異能力なんで大丈夫かと」
まあいいか、しばらくしてから様子見てみよう。
他に調子悪そうな人探したけどいなかった。
今日はこれくらいでいいかな。
「クリス、能力解除」
「了解、解除します」
解除されるとなんか入っていたのがす~っと抜け出る感じがした。
これもすぐに慣れるだろう。
「どうでした?、異能力使った感想は」
「イメージは掴んだよ、何となくだけど」
思ったままの感想を述べた。
「さっきの女性、休憩してたら自然に治ってたんじゃないですか?」
「今までのパターンなら回復せずにそのまま帰宅組になる可能性がほぼ100%だよ。休憩後後戻ってこれたら成功かな」
1時間後が楽しみだ。
それから2時間後にそっと見に行くと戻って仕事している女性を確認出来た。
顔色も良くなって楽しく談笑しながら他のパートさんと作業をしてるのを確認して
持ち場に戻った。
「良かったですね、うまくいって」
「そうだな」
山上もなんか顔色が良くなってた。
何気に聴いたらちょっと肩と頭が軽くなったって言ってたから効果あったんだろう。
思ったより地味なんだな、選んだ異能力って。
良く考えたらテレビの向こう側にしか望んだ事が起きてない様な気がする。
平和だからまあいいんだけど。
今日も平穏に過ぎますように。