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2-60 文化祭最終日③

少しクールダウンした辺りで再開となった。

「じゃあ貴方はもし俺に負けたらどうするつもりなのですか?」

「そんなことは天地がひっくり返っても無いな」

「いや、もしもの話ですよ、物事に絶対って無いでしょ?

もしあれば・・・ってくらいの感覚でいいですから」

「そうだな・・・その時は候補から外されても文句は無いな、うん」

はい、言質取りました~。

「そういう事なら、勝った奴がエリーサのフィアンセ候補って事で良いですね?」

「ああもちろんだ、男に二言は無いよ」

「分かりました、それでですね、俺らから出す相手ですが、エリーサに決めさせてもらっても良いでしょうか?

俺が出て、もし万が一勝った時、好みじゃ無いからごめんなさい、じゃ辛いですし?」

「そうか・・・そうだよな、さっきはたまたま君が戦っていただけだもんな、よし分かった。

相手はエリーサに決めてもらうか、それで納得してもらえるなら僕としても助かるし」


「そういう事に決まりました。

エリーサ、代理として君の代わりに戦う奴を決めてくれ。

俺でも良いけど、もし万が一俺が勝ったら・・・今日から俺の物だぞ?」

傍観者として観ていたエリーサに対し、煽るように投げかける。

エリーサは少し考えてから答えを出す。

「分かった、それじゃ代理者として・・・剣真を・・・」

ここで俺が焦り出す。

まさか煽りにそのまま乗って来るとは思わなかったんで。

「・・・選ぶ訳無いじゃない?私の身が危なすぎるわ。

そうね、正幸にお願いしようかしら、ちょうど今から戦う予定だったからちょうど良いわ。

楓もそれで宜しくて?」

楓は黙って頷いていた。


善は急げじゃないけれど、そうと決まれば早いところ事情を説明に行かないと、正幸が待ち惚けになってしまう。

会場に戻ると、正幸がストレッチをしながら待っていた。

会場も超満席になってる、立ち見客が多すぎて身動きが取れない状態だ。

俺と優二の姿を確認した正幸が声を掛けてくる。

「準備OKかい?

こっちはもう身体は温まってるよ、いきなり全開で仕掛けられても対応出来るくらいに」

日頃は大人しいクセに、道着に腕を通すとこうなってしまうのか、面白い性格してんな。

いやいや、今はそれどころじゃない。

「正幸、落ち着いて聞いてくれよ?

実は対戦相手が変更になってしまったんだ」

「へっ?どうして?」

「実はな・・・」

俺たちは先程の控え室の内容を話した。

ただ、フィアンセ候補の所だけは・・・省略したよ。

エリーサが相手を望んでない事だけは、しっかりと強調したけど。

「そうなのか・・・分かった、いいよ勝てるか分かんないけど、強者と戦うのも勉強になるしね」

「助かるよ、それじゃ俺たちは対戦者にOKが出たって言ってくるからもうちょっと待っててくれ」

そのまま優二に控室に行ってもらって、俺は運営席へ事の成り行きを伝えに走った。

いきなりの展開で驚いていたけれど、場が盛り上がるならと了承してくれた。

そのままマイクで対戦者の変更等会場に伝えてもらっていたところ、正幸の相手が入場してきた。

本日一番の盛り上がりであった。


アナウンスでルール説明をしてもらった、初めて見る人達の為に。

頭・左右の頬・胸・背中・腹・左右の脇・左右の太腿にヒットさせれば1ポイント。

10ポイント制先取で決着するという簡単なものだったが。

そして、軽く2人の紹介があってそのままステージの中央に対峙。

礼を交わした後、開始の合図で先ずアレクシスが動く。

前に出たかと思った瞬間、前転宙返りと踵落しのコンボで攻撃。

正幸も避けようとしたが、右肩に直撃して態勢を崩してしまった。

そのまま追撃か?と思っているとアレクシスは何もしない。

「何故追撃をしてこないのですか?」

「あれで終わったら面白くないだろ?こちらはバトルスーツのプレゼンに来てるんだからさ」

「なるほど・・・理解しました、胸を借りるつもりで行きます」

「ああ、次はそちらから来てくれよ」

正幸は少し考え、速攻での正拳突きで様子を見る。

しかし、紙一重で避けられる。

そのままの勢いで右足を基準に回転蹴りを繰り出すがまた当たらない。

避けられたその隙を突かれ、右脇腹に衝撃が。

「正拳ってこういう感じでやるんだ」

言われた通り見事な体幹からの突きだった。

またバランスを崩し、転げそうになっても追撃は無かった。


一度距離を取って深呼吸をする。

凄いな、こんなに強いとは思わなかった、上には上がいることを再認識させられたよ。

ポイントとしては1だけれど、本当は5ポイントくらい持っていかれてたハズ。

負けたとしてもせめて3ポイントは取りたい。

気を取り直し、手わざ、足わざをを繰り出すがことごとく読まれているらしく、当たらない。

それならばと、正面から力比べで組んでも膠着状態になる。

焦りが出始めた頃、

「そろそろ終わらせてもらうとするよ?

今日勝てればその後のお楽しみがあるからな」

「お楽しみ?」

「なんだ、聞いてないのか?今日、君に勝ったらエリーサは俺の物になるんだよ。

そういう約束で戦ってるんだ、今日の夜が楽しみだぜ」

「えっ?婚約者ですよね?別にそんな急がなくても・・・」

「ああ、候補だけどな、今のうちに既成事実を作っておけば俺のもんだろ?

本当はエリーサに勝ったあの剣真って奴に喧嘩吹っ掛けたんだけどな、自分じゃエリーサの婚約者にはなれないって言って、お前に譲ったんだ。

お前に譲る程度なんだからアイツも大したこと無いんだろうな。

俺としてはエリーサ程度どうでもいいんだが、貴族の名が欲しいからな、ふふふ」

「・・・・・俺のダチに・・・・」

「ん、何?良く聞こえないが?」

「俺の友人の悪口は許せない!それにお前はエリーサにふさわしくない!」

その瞬間、アレクシスの体が一回転した。

「えっ?」

そのまま背中から落ちて1ポイント。

しかし、正幸からの追撃は無い。

「てめえ!何故コンボ追撃しない?」

「先ほどお情けで見逃してもらいましたので、お返しですよ」

「ほう・・・俺を怒らせたいようだな?」

「それはこっちのセリフだ!

俺の友達はあんたなんかより全然強い!」

そのまま2人は激突、先程と違うのは正幸のスピードが段違いとなっており、形勢逆転となっている事だ。

お返しとばかりに正幸が前方側転からの回転蹴りを繰り出す。

アレクシスは今回は避け切れず、頭へのダメージをもろに食らった。

今度は追撃があるだろうとガードしていると、また来ない。

「これで貸し借り無しですね、次は畳み掛けます」

その言葉にアレクシスは切れてしまった、格闘家としては最も愚かな選択である。

さっきまでの動きに繊細さは無く、直線的な動きになっていた為、正幸に簡単に腕を掴まれてそのままの勢いで投げられて床に叩きつけられてしまった。

先程と違うところは、そのまま胸に追撃を受けたこと。

これにより累計4ポイントが正幸に入ったことになる。


アレクシスは頭を少し冷やすため、夜のお楽しみを思い浮かべる。

「いかん、子供相手にムキになってしまったな」

「その子供に手を出そうとしてる奴が何を言ってるん?恥ずかしくないのか?」

「フィアンセだからな、別にいいだろ?」

「候補って聞いたような気がしますが?

あ、いや補欠ってやつ?いてもいなくても代わりはいるって解釈もできるけど?」

その言葉にまたアレクシスが切れて向かってくる。

ただ目は冷静な感じだったため、正幸は1メートル手前ぐらいで正拳を撃つ。

見た目、ただの型をやっているように観客には見えたかもしれないが、それは次の瞬間裏切られる。

アレクシスが後方に吹っ飛んだのだ、自分で後方に飛んだように誰の目にも見えただろう。

そのまま壁にぶつかり、気絶したのか動かなくなってしまった。

審判が駆け寄って状態を確認したところ、その後立ち上がり腕をクロスさせた。

試合続行不可能の合図であり、正幸の勝利が確定した瞬間だった。

その結果を受け、本日一番の盛り上がりとなった。



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