2-59 文化祭最終日②
優二対エレナの戦い・・・
こちらから手を出せない為エレナさんの出方を待った。
するといきなり突っ込んで来た、無防備で来るか?普通?
衝突する寸前、側面に廻り込んだかと思うと、そのまま右脇腹に衝撃が走る。
ポイント取られたか?そう思って電光掲示板を見ると1ポイントの表示が。
マズいな、こんなに簡単に取られちゃ楓に笑われるな。
「いいの?もう1ポイントよ?」
「まだまだ大丈夫だよ、それに言い訳はするつもりは無いから」
「そう、それは楽しめそうね」
優二の奴、全く動揺してないわね、楓の前でこんなに早くポイントを取られちゃったのに。
次の手で攻めて見ますか・・・
私は左手を差し出す、すると優二は躊躇無く右手を前へ。
そのまま両手で掴み、背負い投げの形へ。
重心を落とし、更に軸足と逆の足で優二のバランスを崩そうとする。
優二は元々の体重・体幹が違う事、自分も重心を落とし持っていかれない様に踏ん張った事から、不発に終わる。
優二としては、そのまま押し倒して寝技に持ち込みたい所だが、性格が災いし出来なかった。
もしやれる男がいたとしたら・・・明日から肩身が狭い学園生活となったであろう。
ちゃんとした試合なのだが。
道着が乱れた為、『待て』が掛かり正す。
その後直ぐに開始となったのだが、エレナは動かない。
まいったなぁ、あれでまだ1ポイントか〜、本当は3ポイントくらい取れると思ってたんだけどなぁ。
もうすでに半分近く時間が過ぎてる、どうしようかな・・・
「ねぇ」
「何かな?」
「ちょっと組ませてよ」
「・・・了解」
俺は黙って両手を差し出す。
するとエレナさんも両手で真正面から組んだ。
へぇ、正中線を基準にバランス良く組むなぁ・・・
そう思っていた瞬間、いきなり頭突きをかまして来た、胸に。
これは同時ポイントじゃ?と思ってたら、エレナさんは額での攻撃だった。
そして、電光掲示板には2ポイントの表示となった。
一瞬、意識がポイントの方に行った為、エレナさんを見失い、そのまま右太腿に蹴りを喰らって3ポイント目を献上。
だがこの時点で4分間が経過し、残り60秒弱となっていた。
ヤベェ、ここまでやるとは思わなかった、でも後60秒も無いので何とか凌ぎ切ろう。
ふぅ、ここまでかしらねぇ。
後60秒無いし、体力も残ってないし、あの技最後に行きますか!
そのまま、また優二に突撃して行く。
最初と違うのは、そのままジャンプして、肩車の逆向きバージョンで優二の顔を股に挟み込んだ。
「ンなん・・ンな!」
まさかの攻撃に対応し切れず、戸惑う優二に追い討ちを掛けるため、そのまま後ろに倒れ逆立ち状態に持っていき、勢いで優二を前方回転させ、ポイントを取ろうとしたんだけど・・・回転出来ない?!何故?
逆立ちした状態で横を見ると・・・片足が私の頭の先にあり、踏ん張っているのが分かった。
「ありゃ〜、これは倒せないわ・・・」
そう呟くと同時に試合終了の笛が鳴ったのだった。
「「ありがとう御座いました」」
「「ありがとう御座いました」」
2つのステージで戦いが終わり、観客から拍手と称賛の声が三方面から出ていた。
これで2勝0敗となり、男子側が勝利となったがファイナル1試合が残っている。
バトルスーツのプレゼンとしては、十分なデータを取れたと思うけど、ガチでやり合った訳じゃ無い。
マスコミや大会運営者用にアピールしたいだろうから、残り1試合は必須事項だ。
正幸も緊張していると思い、2人で声を掛ける事に。
「おい、大丈夫か?」
「ああ、試合前はやはり緊張するな」
心配するほど緊張してはいない様で、一安心。
ここで優二よりアドバイスが。
「楓はスピードがあるからな、それと意外とパワーもある。
打撃はなるべく・・・いなす事だ」
「ああ、分かったよ。
俺も勝ってくるから、待っててくれ」
健闘を祈り、3人でハイタッチをして見送った。
時間になったんだけど、女子側から楓が出てこない。
しばらく待ってても、出て来る気配が無いため、俺と優二が控え室へ。
そこではエレナ・エリーサ姉妹とクロヴィーラカンパニーの社長と、右腕のアレクシス・アリコスキってのがいた。
もちろん、ウィリアム親善大使も。
少し離れたところに楓がいたので、忍び寄って事情説明を要求。
「あのね、エリーサが剣真に負けちゃったでしょ?
それで敵討ちするって言ってあの人が・・・ね」
ため息交じりに話してくれた。
あちゃ~、本当に痛い奴なんだな、いい歳して。
「俺倒してもエリーサが振り向いてくれる可能性は変わらないんじゃねぇか?」
「「だよね~」」
「直接アプローチした方が早いんじゃないかな?」
「何か断り辛いネタが無いと言えないんじゃないの?」
えらい言われようである。
俺達のやり取りに気付いたエリーサが、これ幸いとこちらに逃げて来た。
「剣真助けてよ、あの人が変な言いがかりをつけて来るのよ」
アレクシスって男を指差して非難する。
その対応に困っていると、その名指しされたアレクシス氏がこちらへ来た。
「やあ、そこにいるのは先ほど俺のフィアンセと戦った学生君じゃないか?
確か名前は・・・」
「あぁ、剣真です、川田剣真」
「そうそう、剣真君だったね、失礼」
「それで何を揉めているのでしょうか?」
分かり切った事を確認の為に聴いてみる。
「フィアンセが世話になったんだ、汚名を返上するのは男の仕事だろう?」
「汚名って何でしょうか?先程の試合はただのスポーツだったと思いますが?」
「解ってないね、ビジネスの世界じゃ遊びでも真剣に、そして勝つことが必須なのだよ。
これだから温い考えのガキは・・・」
ここでエリーサが割って入る。
「さっきからフィアンセって言ってるけど、私は認めてないわよ?勝手な事言わないでよ。
それに私は真剣に戦ったし、その結果に満足してるわ」
「君の花婿候補の資格があるのは私だけじゃないか、それとも誰か他にいるのかい?
僕が勝手に名乗っている訳じゃないんだよ?君の父上も認めてらっしゃるし」
ウィリアム親善大使を見るとバツが悪そうにしている。
多分、大人の事情ってのがあるのだろう、簡単に反故に出来ないような。
このままだと話が進まないと思い俺は割って入ることにした。
「あの~、資格って何でしょうか?」
「それはだな、強いってことだ!」
勘違い男がドヤ顔で答えた。
ああ・・・そうですか・・・
「それでだ、俺が強いって事とフィアンセの座を確実の物とする為に、君に戦いを申し込みたいんだ。
もちろん、うちの会社のバトルスーツ着用とルールでな。
俺はフィアンセと会社の利益に貢献できる訳で一石二鳥って奴だ」
「お断りします」
即答だった。
「・・・何故だ!この僕の完璧な作戦の何処に不満があるんだ?!」
「「「「「全部だ!」」」」」
満場一致であった。