2-57 文化祭4日目②
「な・何言ってんのよ!
それ勝っても負けても結果は一緒じゃない!」
楓さん、まさかのお冠である。
その為、俺たちの抗議が無視されてしまった。
「別にいいじゃない、減るもんじゃないし」
エリーサの無茶な言い分が炸裂。
「「「「そう言う問題じゃない!」」」」
日本人全員一致の叫びであった。
「何が無理なの?」
エリーサからの疑問に俺は丁寧に答える。
「あの、日本人は挨拶でスキンシップしないからそういうのは慣れてないの、解る?」
「あ・・・それで・・・」
エリーサには思い当たる事があるようだ。
「挨拶でスキンシップしてたわ・・・」
はぁ、何やってんだよ。
「因みにどんなスキンシップ?」
「顔をお互いの肩に触れ合いさせる感じかな、こんな感じに」
そう言って俺に見せるように正幸を引っ張り込み、洋画で見るような挨拶を見せた。
「お〜、生挨拶だ〜」
関心している横で実際にやられた正幸は放心状態だった。
「それやっちゃダメよ!」
楓の意見に俺も同意見だったので一言。
「それ、勘違い野郎量産システムだぞ、ほら正幸を見てみ?」
顔が赤くなっている男が立っていた。
落ち着いた所で会合を再開。
「商品は勝った方が何が一つお願いするって事でいいだろ?
どうせこの6人以外にお目当ての人いないだろうし」
「「「「「了解」」」」」
よし、これで話が進む。
「それじゃ最終確認をするぞ?
1、俺とエリーサ、優二とエレナ、正幸と楓が戦う。
2、戦いは新型の道着でモニターを兼ねて行う。
3、正幸と楓は10ポイント制のガチ勝負でファイナル戦
4、残り2組はセミファイナル戦で同時に試合開始
試合時間は5分、その間は俺と優二は防御のみ
姉妹は5ポイント取れば勝ち、俺たちは逃げ切れば勝ち
戦闘中は2m以上離れない事
大まかにはこれでいいかな?」
みんな頷いている為OKと判断。
その後は夕方の集合時間まで解散となった。
夕方になる頃にはジャンケン大会の18名が決まっていた。
なんと16名が女子で男子は2名、女子強ぇぇぇ。
ダンスパートナー券はこれでゲット出来た訳だけど、みんな誰を誘うんだろうか。
後はトップ3を狙ってまたジャンケンか。
こちらも盛り上がっているなぁ。
そんな事考えながら実行役員室へ向かっていた。
「失礼します」
部屋に入るとみんなもう来ていた。
というか、校長と教頭、学年主任クラスまで勢揃い。
何事かと思いながら空いている席へ着いた。
「それでは関係者全員揃った所で明日の打ち合わせを致します。
校長先生、宜しいでしょうか?」
実行委員長からの指名に一つ咳をし話し始める。
「え〜、明日格闘技戦を行う事は皆さん知っていると思います。
明日の試合で、ウィリアム親善大使が日本に持ち込んでいる新しい道着のテスト運用の為、無償で使用させてもらえる事になりました。
そこで・・・日本初披露という事で、マスコミと格闘技関連組織が視察に訪れる事になりました」
ここで部屋の中が騒つく。
そりゃそうだろう、普通の学校の文化祭なんだから。
「皆さんの心配する事も分かりますが、明日は浮き足立たないように行動して下さい、私からは以上です」
校長と入れ替わるようにエレナが立ち上がった。
「それでは私から補足を。
明日使用する道着とシステムは、後1時間程で続々と搬入されます。
そのまま体育館へ運び込み、明日の準備に取り掛かりますので今日は立ち入り禁止で御願い致します。
先生や責任者の方はそのまま立ち合って頂きたいのですが宜しいですか?」
校長を見ると黙って頷いている。
「それでは明日、私共の国のテクノロジーを見て頂きたく思いますので楽しみにお待ち下さい」
そう言ってカーテシーにて挨拶して着席した。
「それでは質疑応答を行いますが、いますか?」
実行委員長の言葉に俺は手を挙げる。
「はい、それでは川田くん」
「はい、それでは質問なんですが・・・明日マスコミとか大会関係者が来るって事ですけど、これって何かで報道されるって事ですよね?」
これに対して校長とエレナが答えた。
「そうだな、もちろん編集して放送するまでには、学校の映像確認と放映許可が必要になるから安心してくれ」
「私達の国のカメラマン映像を撮るけど、こちらは道着と判別システムのPRがメインになるからね、あまり顔とかは映さない様にするつもりよ?
気になるなら関係者皆さんで精査してもらってもいいわよ?
場所借りてモニターまでしてもらってる訳だし、友好な関係を続けたいしね」
そう言って校長を見て笑っている。
「それではもう一つだけ。
明日身内である大使の前で試合するのは俺と優二だ。
変則的とはいえ・・・姫にワザと花を持たせる様な事はしないけどいいのか?もちろん、楓にもだ」
俺たち3人共に負けるつもりは無いという意思表示をする。
たまたま向かい合わせに座っていた為、お互いに睨み合う形になってしまった。
「そんな事気にしてたの?
安心しなさい、勝負の世界にそんな甘えた考え持ち込んだら絶交だからね!」
そう言って笑顔に戻る。
俺は少し恥ずかしくなり黙って3人に頭を下げた。
「俺からは以上です」
そう言って着席した。
その後は特に質問はなく、解散となった。
学校関係者は明日の準備がある為慌ただしく職員室に走って行った。
今日の生徒の居残り申請は却下だろうな。
明日の事を考えながら教室に戻っていると、エレナから声を掛けられた。
「剣真ちょっといいかしら?」
「ああ、何?もしかしてさっきの事怒ってる?」
「当たらずも遠からずってとこね」
「どういうこと?」
「明日、私たちのパパとヴェンダーと護衛+開発した会社の社長とその右腕も一緒に来るのよ。
実はその社長の右腕ってのが・・・その・・・エリーサへアプローチを掛けててね、明日突っかかって来る可能性があるのよ」
「へぇ、エリーサのいい人なのか?」
何だよ、母国に良い人いるんじゃんか・・・
その問いに首を横に振る。
「あんな下半身だけで生きている男なんて違うわよ。
はっきり言って女を道具としか見ていない屑野郎よ!」
怒りが収まらないようだ。
「もしかしてエレナにも手を出そうとしてた?」
「ううん、私には許嫁がいるから・・・」
「そうか、それでエリーサにか・・・」
ここでエレナが意外そうな顔で問い詰めて来た。
「えっ?それだけ?」
「えっ?何か突っ込む所あったか?」
訳が分からず問い返す。
「私があれだけアプローチしたのに、いざとなったらお前相手いるんかい!とかないの?」
「ああ、そういう事?
だってエレナ程綺麗な娘、相手がいないのはおかしいじゃないか?
貴族みたいなものだから、てっきり生まれた時からもういると思っていたから。
それに、いい奴なんでしょ?」
「まあ、そうね、あなたみたいに鈍感だけど、とても素敵な人・・・」
惚気っぽくなってきたので話を戻すことに。
「それでエリーサには許嫁がまだいないんだ?」
「16になった時に正式に仮に決まるから、猶予が後1年も無いけど」
「それが何故明日突っかかって来る?別に関係ないのでは?」
「それが大ありなのよ、エリーサが負ける→右腕が勝者に挑む→勝利する→婚約者候補アピール出来る。
という具合にね」
「それってエリーサの気持ちは無視なのか?」
「貴族系ってねそんなものよ」
それであの時のエリーサの顔が陰っていた訳ね。
「それで、もしもだけど、その右腕が挑んできてこちらが勝った場合は・・・下剋上出来るのか?」
俺の意味合いを理解したのか、エレナは笑顔で頷く。
「もちろんじゃない、力を証明すれば誰だって資格はあるわよ?
それに・・・気に入っていると思うわ、彼の事。
数年後の事までは面倒見切れないけど、今のままじゃ妹は不幸になる、それだけは絶対阻止したい」
それなら明日の勝負絶対に勝ちにいかないとな。
それから30分程掛けて2人で作戦を練るのだった。