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2-53・・・文化祭1日目②

「こっちよ、2人ともVIP席へ案内するから」

「「いやいや!なんで?」」

ふと思いついた様にポケットをまさぐる素振りをする。

「あ〜、俺としたことが・・・財布忘れちゃったよ、ちょっと取りに帰らないとな。

ここ時間制だろ?一度リセットして俺たちまた来るから」

うっかりしちゃったな〜的な言い訳をしながら、そのまま楓の方を向いたまま後退行動を取っていると、後ろから肩を掴まれた。

えっ?と後ろを見ると優二が。

いつの間に?と固まっていると、楓に捕まえられて奥のブースに連れて行かれた。

逃げるのに失敗しました、ハイ。


奥で待っていたのはエレナ・エリーサ姉妹だった。

それだけじゃなく、メイド姿で。

見た瞬間、少しの間見惚れてしまった。

数秒いや数分かもしれないが、一つ言えることは、正幸は確実に俺より60秒固まったということだ。

揺さぶらなかったらそのまま逝っちゃってたかも?

「その格好は何?」

「えっ?メイド喫茶なんだからメイド姿でしょ?」

「何で普通に接客しないんだ?こんな閉鎖空間に引き篭もって」

もったいないよな、この3人が前面に出てくれたら売り上げも伸びるだろうから。

「何故って・・・最初にあなた達に見てもらいたかったからよ、全くそんな事も解らないの?

剣真、あなたモテなかったでしょ?元は良いのに」

あ〜、確かにモテなかったよ!うっさいなぁ、もう!

「確かに剣真はモテなかったわよね、でもあんまり気にして無かったから私も放置してたのよね」

3人にボロカス言われるのをじっと我慢する。

口喧嘩では絶対に勝てないから。


落ち着いたところで用件を聞く事に。

「ところで用件は何?

休憩時間はそんなに無いんだけど?」

「明日からの試合に関してよ、勝てるんでしょうね?」

「そんなのトーナメント表見て見ないと分かんないよ。

この3人がいきなり明日当たるかもしれないし」

「あ〜そこは大丈夫、ベスト4になるまで当たらないから」

なんか運営と裏でコソコソやっている雰囲気だな、あえて突っ込まないけど。

「それなら良いとこまでいけるんじゃないか?

先輩も出るだろうし、簡単じゃないだろうけど」

優二も正幸も頷いている。

話が途切れたところで飲み物とお菓子が出てきた。

数年前から熱源は使っちゃダメらしい、外の露店は許可制で自衛団を編成して見回っている様だ。

そんな訳でノーマルなお菓子にトッピングをしたりして、プレミア仕様にして差別化を図っているようだ。

俺らの組は展示室にしたから、売り上げ競争とは関係ない。

飲み物とお菓子を頂き、用事が終わったと思った辺りで、帰ろうと席を立とうとしたところ、

「あっお客さん・・・3人で3,000円ですよ?」

「「「えっ?」」」

「いやだから3,000円ですよ」

エリーサが確認のため再度繰り返す。

「高くない?」

「いやいや、お客さん。

こんな可愛い娘が3人も相手してくれたんだから、相応の良心的な金額でしょ?」

怖っ!何このシステム。

「え〜っと、財布取りに行ってきて良い?

2人とも教室に置いてきちゃったんだけど・・・」

「お客さん、払えないなら身体で払ってもらいますよ?」

そういうと優二が立ち上がって、俺たち2人を隣の部屋に押し込む。

何なんだ?この流れ?

そして黙ってスーツっぽいのを差し出してきた。

「「なにこれ?」」

「着れば分かる・・・」

そう言って優二が目を逸らした。


着替えたんだけど何これ?

優二は目を合わせてくれないので、仕方なく楓達がいるはずの小部屋に戻った。

「なぁ、何なんだこの格好は?

俺たち教室に戻らないといけないんだけど?」

「あら!聞いてないの?

今日一日あなた達レンタルしてるのよ?

さっき教室に行った時にみんなと話して了解を得たんだけど」

午前中来た時か!

知らないはずの連中に話しかけてるから、この姉妹の社交性すげ〜って思ってたのに・・・

俺たち売られたのか・・・

「見返りは何だ?」

「何も?おしゃべりしただけよ?」

安っ!あいつら最低だ、せめてツーショット写真とか撮れよ!

「そうそう、一緒に写メは撮ったけど、それくらいかなぁ」

「・・・そうか、それなら十分な対価だな。

今日一日サボることにするか」

優二と正幸が呆れた顔でこっちを見ていた。


「それじゃVIP席でのんびりさせてもらおうかな」

「何言ってんの?飲食代身体で払ってもらうわよ」

エレナが笑っていない目と笑顔で突っ込んでくる。

・・・ですよね〜〜〜


「それでは姫、何をすればよろしいので?」

エレナに問いかける。

「分かってるじゃないの、ここに入る前に何か気付かなかった?」

「え〜と、隣のクラスには女子だけ並んで、このクラスには男子だけ並んでた」

「何故だと思う?」

「隣のクラスと提携してるから?例えばここはメイド喫茶、あっちは執事喫茶みたいな・・・えっ?」

そこで俺らの格好を確認する。

「俺らに接客しろと?」

「正解~」

「ちょっとまった!」

正幸だった。

「俺も?俺みたいなやつ執事とか無理だって!

剣真クラスじゃないと似合わないって!完全なアウェー状態になるよ」

一生懸命に自己否定している。

「あら、私のお気に入りがそんなこと言うの?

安心しなさい、あなたはちゃんと真っ直ぐ前を向いて顔を上げていれば上の下よ?

少しは自信を持って胸を張りなさい!」

「いや・・・でも・・・俺は・・・そんないきなり言われても・・・」

「私たちを護っている姿はかっこよかったわよ?

あなたに足りないのは少しのチャラさよ」

その言い回しで・・・いいのか?

正幸は少し複雑な顔をしているけど。

「チャラさってのがよく理解できないけど、胸を張って顔を上げてみることにする」

そう言って本当に顔を上げた。

本当にふんぞり返るっていう立ち方だけど、なるほど、確かに胸を張っていると顔が自然に上を向き目線が真っ直ぐになった。

「正幸、姿勢が良くなっただけでも雰囲気が違うな。

やっぱり異性の一言は効果抜群なのかな?」

「そんなことないって、自分が今どんな風に見えてるか分らないし」

少し照れた風に言ってるけど少しは自信がついたかな?

「よし!それじゃ3人共隣のクラスに行ってきて。

2時間ほど接客してくれれば、そのあとは自由時間にしてあげるから」

そう言われて楓にドナドナされていった・・・


となりのクラスで接客させられた俺たちは、フル回転で働かされた。

ただ、自分たちが思ったよりも女子が好意的に接してくれたのは意外だった。

ちょっとした勘違い感を持ってしまうくらいに。

約束の時間はあっという間に過ぎたことから、楽しかったのだろう。

女子のマシンガントークにはちょっと付いていけないところがあったけどさ。

接客タイムが終わって、気持ちを切り替える事が出来なかった優二と正幸が、楓とエリーサに説教を受けていた。

「勘違いするんじゃないわよ!?」と。

俺はエレナに「ちょっとは勘違いしてみなさいよ!」と説経された。

どっちなんだよ!と言いたかったが藪蛇になりそうなので我慢。

その後、女性陣は反省したのか優しく接してくれたので溜飲が下がった。


良く判らない文化祭1日目が過ぎて行った。



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