2-52・・・文化祭1日目
文化祭の準備に大忙しの日々を過ごしていたら、あっという間に初日になってしまった。
俺らのクラスは工業系らしく、鉄や色んな廃材を使ったオブジェクトを展示している。
動物っぽいのやロボットっぽい作品、授業で勉強したことの集大成だ、といっても基礎に毛が生えた程度だけのクオリティでしょぼいけど。
イベントは今日から開始となる。
ジャンケンは審判員立会いの下行われる、もちろんギャラリーもいるため不正等は出来ない。
参加者は1,000人超えとなっていた為、朝からバトルを行っていく。
全校生徒の2/3くらいか、すごいな。
5日間の最終日に最終戦のイベントが行われるので、朝から色んなところで歓声が上がっていた。
格闘バトルの方は男子側で16名がエントリー、思ったより少ない。
女子側は発表はまだない、たぶん少ないから後日発表なのかも。
バトルはトーナメント方式で4回勝てば優勝で、明日から1試合ずつ行われることになった。
最終日に決勝と3位決定戦となる。
そんなわけで今日は自由行動でクラスのみんなと交流だ、単独の出し物はないけれど展示品の説明とかあるし。
「来たわよ」
振り向くと楓とエレナ・エリーサ姉妹、優二が立っていた。
相変わらず目立つメンツだ、というよりも周りが避けているから目立つんだけど。
特に、ここは男がメインの教室なので、みんな緊張して遠目に見ているだけになってるし。
「ああ、よく来てくれた、と言いたいところだけれど、面白いのは無いぞ?
特に女子には」
「いいのよ、工業系の教室に来たかっただけだから。
それにしてもこんなのよく作るわね、ちょっと面白い形してる」
「そうね、この動物のオブジェクトとかどうやって作ったの?」
エレナとエリーサの食い付きが予想外にいいな、驚きだ。
楓は・・・そうでもないか、そうだよなこれが普通だよな。
「ああ、これは・・・」
「お嬢さん、これは俺が作ったんだぜ。
俺が説明するぜ!その他の展示品を見るなら作った奴から聴いてくれ。
俺は渡部ってんだ、よろしくな」
「そう、じゃあ貴方にお願いするわ。
この動物はどうやって作ったの?」
エレナは興味津々で次から次へと質問を繰り返し、数人と交流をしていった。
エリーサも興味があるようで、ロボットもどきのオブジェクトの作成者と話し込む。
楓は優二と一緒に適当に回って時間を潰しているので、こちらは放置でもいいか。
30分程で一回りし満足したのか戻って来た。
「ねぇ、剣真と正幸は何を作ったの?」
「俺達は廃材でキーホルダーをな、ワイヤーと鉄板の余りで何とも言えない象形文字っぽいのを」
そう言いながら壁に掛けられていたキーホルダーの中から数点を取り出して見せる。
知恵の輪みたいなワイヤーで作った文字っぽいのと葉っぱのレリーフ。
正幸はワイヤーを球形にした立体型と、鉄板を紅葉型に削ったレリーフ。
「面白いわね、日本人って本当に器用に作るわね。
これって売ってるの?」
「いや、売ってないけど、終わったら廃棄処分になっちゃうかな。
彼女とかいる奴はプレゼントするんだろうけど」
そう言ってエレナを見るとガン見している。
「こんなんで良ければ持ってく?」
「えっ、いいの?」
「いいも何も終わったら廃棄処分になるし、このクオリティで良ければだけど」
「じゃあ貰っとく、ハンドメイドだから2つと無いし。
それに剣真が作った物だから大事にするね」
別に大事にしてもらうような物じゃないし、そう簡単に破損するような柔な物でもないけど、そう言ってもらえるなら作った甲斐があるってものか。
エリーサも正幸から紅葉型のレリーフをもらっていた。
姉妹仲良く葉っぱ型か、まあいいけど。
それから暫くしてエレナ達は次の教室に行ってしまった。
嵐が去ったような雰囲気だよ。
教室の外では、ジャンケン大会の決着が次々と決まって歓声が上がっている。
こればかりは運任せだから嫌でも盛り上がるよな、上手くいけばダンスパートナーゲットだし。
更にラッキーチャンスでデート券ゲットだから、こっちに参加するよな、うん。
ウチのクラスも大半がジャンケンに参加。
すでに1回目の勝負はしたらしく、勝率は3割のようだ。
表情を見れば一目瞭然で、負けても運が悪かった、くらいの感覚だったようだ。
ダンスなら普通に誘えばいいし。
ちなみに女子連中はみんな勝っているようだ。
昼過ぎになり、交代で休憩に入る。
そういえば、楓達が去り際に午後から見に来てって言ってたな。
喫茶店でもやってるんだろうか?
先に寄ることにして正幸と一緒に普通科がある校舎へ入る。
楓たちの教室へ進むにつれ人が多くなっていき、順番待ちの表示が。
あの姉妹がいるからだろうかと思い最後尾に並ぶ事にし20分が経過した辺りで、あることに気付いた。
ここ、男子しか並んでないという事、そして隣接する隣のクラスは女子しか並んでいないという事。
正幸と何でだ?とヒソヒソ話しながら待つこと更に10分、教室に入れた。
不自然に長い入口の暖簾をくぐると・・・メイドがいた・・・
しばらく放心状態でいると、メイドの1人が案内をするために近づいて来る。
「いらっしゃいませ、2名様でしょうか?」
「「いえ、失礼しました、教室を間違えたようで失礼します」」
速攻で出ていこうとすると後ろから声を掛けられた、楓に。
「あら、2人共来たのね、こっちよ」
逃げるのが遅かった・・・