2-50・・・週始めの揉め事⑥
「先輩方〜、何やってるんですか?」
半分バカにしたような口調で問いかける。
「いや〜、何というか・・・なぁ?」
仲間内3人でバツが悪そうにコソコソと何か言っている。
「良い所を見せようとするのは理解できますが、演出してはダメですよね〜、それもわざわざ女の娘を危険にさらしてまで」
「「「・・・・・」」」
ここで楓が割り込む。
「先輩〜、先輩達が雇った輩ですけど、この公園に来る前に別のグループと揉めて警察沙汰になった様ですよ〜」
「な、何でそんな事分かるんだ?冗談だろ?」
恐る恐る烏丸先輩が聞く。
「私達、警察関係者ですから。
何でエレナ・エリーサの護衛として雇われていると思っているんです?
それに、社会のルールも守れない人は最低ですよ?
タバコとかお酒とかタバコとか」
何故に2回言ったの?とツッコミたいけど、あいつタバコ嫌いだからな。
何も言えない先輩方。
「それに、本当にカッコいい人って、自分はルールを守って勝負するし、例えズルをした人に負けたとしてもカッコいいんですよ?真っ直ぐで。
見た目の事じゃなく、生き方に1本筋が通ってる。
ズルして勝つのは負け犬のやり方だよ?情け無い」
この言葉にここにいる全員が納得したような顔をしていた。
というか反論出来ねぇ〜。
「まあまあ、その辺でいいんじゃない?
もうこんな時間だし、付き合ってくれた娘達も今日は疲れたでしょうから、解散って事で。
明日、昼休みに結果発表しますので、皆さん顔を出してくださいね?
プライドがあるなら欠席って事はないでしょうから」
最後はエレナのキツイ締めで解散となった。
最後の言葉は、誰に向かって言ったのかは分からない程馬鹿じゃないだろうから、明日はみんな顔を出すだろうと思う。
そんな訳で、再テストという名の1日が終了した。
月曜日、学校に行くと何事も無かったかのように普通の風景だった。
工業科だから昨日の事がこちらまで広まっていないのだろうと思ったんだが、学校全体が静かだ。
つまり、いつも通りの展開。
ちょっと拍子抜けだけれど、なんか助かった?でいいのかなと。
しかし、一緒にいたあの3人娘が学校で何も喋らない事ってあるのだろうか?
こういう事は直ぐに女子の間で広まりそうなんだが。
そんな悶々とした1日を過ごし、昼休みになった。
今日は弁当は無しで、食堂で食べる事にしていた為平君と向かう。
いつもの場所にいつものメンバーがいるはずなので、定食を購入しテーブルへ。
そのまま楽しく食事を済ませて喫茶室側に。
そこにはすでに3先輩が待っていた。
相変わらずのイケメンぶりで周りには花が咲いている。
リア充爆発しろ!と周囲の眼が物語っているのが分からんのかこの人たちは。
本当にブレないな、この人たちは。
「それでは皆さん揃ったところでテストの結果を発表したいと思います」
エレナの一言でイベントが始まる。
周りは今日の事を知っている生徒ばかりなので、食い入るように見つめる。
「発表の前にまず、5名の方前へ」
この5名はもちろん、俺・正幸と烏丸・山科・久我先輩だ。
無言で横並びに立つ。
「それでは・・・最終確認です、来年8月まで護衛兼ボーイフレンドの役をやる人。
皆さん、やってくれますか?」
んっ?話が違くね?結果発表だったのではないかな。
今更意思表示?えっ?
そうこうしている内に3先輩方が前に出た。
周りはキャアキャアうるさい。
「俺達は無理だ、辞退する」
その言葉に周りの時間が止まったかの様に静かになった。
思わず、えっ?となり呆けてしまった。
なんとか頭を再起動させて、俺達も前に出る。
「俺達も・・・」
「俺はやるよ、護衛をする」
正幸何言ってんの?あんなに嫌がってたじゃないか?
マジマジと正幸の顔を見る。
そんな正幸は、俺の顔を真っすぐに見つめ
「昨日みたいな事があったら嫌だろ?ここで断って誰かに任せて、もし彼女たちに危害を加えられたとしたら、俺は自分が許せなくなると思う。
せっかく護る力があるのならば、やるだけの事はやっておきたい、だから任務を請け負うことにするよ。
これは俺個人で考え抜いたことだから、剣真は自由に選んでくれ」
・・・そんなこと言われたら断りずらいじゃんか、全く女性に対してコミュ障の癖して・・・
俺も覚悟を決めますか!
「俺もやるよ、何かあった後じゃ後味悪いし、1年間の役職と思えばいいしな」
2人の決意表明の後、3先輩はそのまま辞退することを正式に意思表示した為、俺たちが引き続き付き合う事が決定となった。
「それでは、騎士殿」
エレナ・エリーサが立ち上がり右手を出す。
俺たちは何も考えず右手を握ろうと(握手)したところ、楓から頭を叩かれた。
「「なっ何?」」
2人のシンクロ率が完璧に合っていた為、周りからは笑いが起きていた。
「「???」」
「まだ解んないの?騎士と姫と右手と言ったら・・・」
「あ〜そういう事?」
正幸に顛末を説明すると顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
俺だって恥ずいよ!
そんな中、姉妹は右手を出しっぱなしで根気よく待っている。
こりゃ通過儀礼ってやつをしないとダメなんだろうな。
覚悟を決め跪き右手の甲に軽くキスをする。
俺がエレナ、正幸がエリーサに。
「「これからよろしくね?」」
俺たちは頷くしか出来なかったけど、なんか誇らしく思っていた。
外野はキャーキャー・ブーブーうるさかったけど。
エリーサが一瞬の隙をつき、正幸の耳元で何か囁いた。
びっくりしていたが、そのうちに落ち着いて微笑んで何か言い返していたので、変な事を言われたのでは無いのだろう。
ボーっと2人のやり取りを見ていると、俺もエレナに引き寄せられた。
何を、と言いかける隙を与えず頬にキスをされた。
「えっ?何を・・・」
「野球場でのお礼をまだしてなかったからね」
言い終える前にそんな事言われてもなぁって思ってると、周りが勝手に盛り上がっていた。
もうどうにでもしてくれ・・・
その日から公認となってしまった。
落ち着いたところでエレナから一言。
「今年は文化祭あるんでしょ?
私達からイベントのお知らせがありま〜す」
悪い予感しかしなかった。