2-47・・・週始めの揉め事③
イケメン3バカ先輩と約束をした日がやってきた。
そこには、エレナ・エリーサ・楓が待ち合わせ場所に立っていた。
3人共に膝上スカートに上着はどっかのアイドルグループかよって格好をしている。
姉妹は帽子をかぶっており長い髪を下ろすスタイル、楓は相変わらずのポニーテールだ。
「ねぇ・・・もう一回確認するけど、なんで私もここにいるのかしら?」
せっかくの日曜日に駆り出された楓が、不思議そうに唸っている。
「だって相手が3人いるのに、私たちが2人じゃエスコートにならないじゃない?
それに・・・嫌々ながらもバッチリお洒落に気を使ってるじゃない?」
楓の格好をチェックしながらエレナは笑顔で返す。
「そりゃ2人の引き立て役だとしても、精一杯抵抗はしないといけないじゃない?」
「引き立て役ねぇ、負けないわよって主張してるんだと思った」
エリーサの目にはそう映っているようだ。
「私も女の娘だからね、そう思わない娘はいないと思うわよ?」
そういうガールズトークを10分程している間に、3組程ナンパに遭っている。
その都度エレナが英語で返しをしていた為、撃退出来ているのだが。
「しっかし遅いわねぇ、あの3先輩方。
もう時間になるってのに1人も来やしないわ」
そうなのだ、男とは言え仮にも先輩なのだから、待たせちゃ悪いと思って約束の15分程前に到着したのだが居なかった。
もしかして時間を間違えた?
と思ってメールを確認するが日時は合っている。
仕方なしに定刻まで待つ事数分、ギリギリになって3人が現れた、それも歩いて。
「やあ、待ったかい?ちょうどいい時間だったと思うけど」
烏丸先輩だ。
「うん、こっちは15分くらい前に着いたからそんなに待ってないよ」
楓が返事する。
「なんだ、そんなに早く俺たちに会いたかったのかい?」
「それならもうちょっと早く出ればよかったな」
山科・久我先輩の発言である。
この時点でエレナ・エリーサは、ちょっと御機嫌斜めだったのだが、お試しデートでいきなり終了させる訳にもいかない為、なんとか気持ちを押さえつけさせる事に。
「ほら、2人とも我慢して、はい深呼吸〜」
「「・・・」」
よしなんとか踏み止まってくれたわ。
「よっしゃそれじゃペアになろうか。
そっちの方がエスコートし易いからな」
そんな訳でペア割が男子基準で終わった。
先輩方は180超えの高身長だった為、誰が横に来ても映えるのだがその中で1番背が高い久我先輩が楓と。
烏丸先輩がエレナ、山科先輩がエリーサという事に。
「さあ行こうか」
各自横に立ち、肩を抱いてさり気なく誘導するところは慣れなんだな、と感心。
駅から目的の場所に移動中も、退屈させない様な話をして時間経過を忘れさせてくれる。
気付けば20分程歩いていたのも感じさせないくらい。
こういうところはさすがだな、と感心すると楓であった。
剣真や優二ももうちょっと勉強かな、と。
歩いて着いたところはお洒落な店だった。
喫茶店?いやお酒を飲む雰囲気の店っぽい、イメージ的にはカクテルが出てきそうな・・・
一般の高校生じゃ入れない、というか入らないよね〜って店。
エレナとエリーサは慣れてるっぽい感じで落ち着いてるけど、私は居心地悪い。
そうしている内に6人でそれぞれペアの席へ着く。
あ〜、なんか分からない長ったらしい名前の飲み物をオーダーしてるけど、なんだろ、お酒じゃ無いよね?
みんな落ち着いて話をしてるけど1人浮いちゃってるわ、私だけ。
本当に居心地が悪い・・・
「楓ちゃんどうしたの?こういう店初めて?」
「はぁ、そうです・・・」
「ここは俺たちの奢りだから気にしないでよ」
そう言いながらタバコを吸い始める。
えっと思いながら周りを見ると3人共に吸ってる・・・
日常茶飯事なんだろうなと思ったのでスルーした。
お茶をして次に向かった先は、ホテルのプールバーだった。
3バカ先輩はさっさとビリヤードへ。
私たちも誘われたんだけれど、そういう遊びをする格好では無かった為、見学することに。
勝負に徹している先輩は確かにカッコいいなぁとは思う。
実際、周りの視線を集め尚且つモテポーズを意識的にやっている先輩を見ると納得だ。
そんな勝負をしている人達は放置して、3人でテーブルにてケーキを注文。
そのまま甘い物をネタにガールズトークをすることに。
「ねぇ、楓はあの先輩はどう?」
「どうって?」
「彼氏候補って事よ、中々のイケメンじゃない?お金持ちっぽいし玉の輿じゃない?」
「そんなの興味ないな、でも好きになった人がそういう家柄だったら受け入れるよ。
そんなことより、あの3人はどうなの?チェンジするの?」
この場合のチェンジは勿論、来年の8月末までの護衛兼ボーイフレンドってやつだ。
「う~ん、今のところは退屈させない人達ってとこよね。
話を振るのも上手いし、モテモテなのも判るな」
「そうね、ただ女の娘の扱いに慣れすぎてるってのは要注意かも」
エリーサも概ね好印象のようだ、但し要注意が入ってるけど。
「そうなんだ・・・それなら仕方ないね」
ここでお試しテストの話は終わったが、女の娘が複数集まったら恋バナしかないという事で、時間まで永遠と続いたのだった。
それから軽く夕方までカラオケへ。
今時の店は狭く、ペア用が半分以上占めているようで、大部屋は空いていなかった。
そんなわけで2人×3部屋となり、2時間ほどバラバラとなる。
まあ、先輩方はそれが狙いで口説くのだとは思っていたけれど、みんな分かっているので誰も何も言わなかった。
問題があるとしたら・・・
「ちょっと、先輩近すぎですよ!」
「ここ狭いんだからさ、隣同士密着ぎみなのは仕方ないじゃんか?」
楓だった。
何気なく手を握ろうとしてきたり、ソファーの背もたれに手を置きそのまま肩に手を乗せてきたり、やる事が自然すぎて逆に感心するくらい。
組手だったら良いんだけど、これはマズい。
あの自然な笑顔は、モテる人間の余裕さを表しているようで怖い。
こういう風に口説かれるのだろうなと、感心・呆れ半々で2時間耐える事になった。
エレナ・エリーサ姉妹は、元々挨拶でのスキンシップで慣れていた為、密着程度では動じない。
その程度で満足しているのか、それ以上の事をして嫌われて、護衛チェンジを拒否されるのを警戒しているのかは不明だが。
ただ一つ言えることは、チェンジしたら1年以内に遊ばれて終わるだろうなぁという事だけであった。
『『普通ならばそれでも良い思い出になるんだけどね〜』』
そんな1日を楽しんで夕方に終了。
別れ際も爽やかに去って行く3先輩方。
「あ〜、これ勝ったなという自信の現れなんだろうなぁ、これからはいつでも口説けるから、余裕な背中見せてます的な。
うん、確かにモテるだろうな、普通ならば」
明日以降にあの姉妹がどういう審判を下すか分からないけれど、とにかく終わった〜只々疲れた。
そんな感想を抱きながら女子側も解散したのだった。