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2-45・・・週始めの揉め事

月曜日になった。

いつもの時間、いつもの優二との待ち合わせ、いつもの電車・・・のはずだった。

「どうした?」

「い、いや、何でもないよ?」

「ふーん、あ、そうだ。

昨日高城選手からサインボール貰ったんだ、優二にもはい」

そう言ってカバンからボールを出す。

それは真っ新なボールでは無く、ちょっと使い込んだような汚れ具合。

「マジか!これリアルなやつじゃないか、それに日付も付いてる!

なんでこんな・・・の・・・」

そう言いながら、何故持っているか悟った優二は語尾が尻窄みになっていく。

「どうしたんだ?今日はおかしいぞ?」

そう言われた優二は一言だけ。

「昨日、俺、野球中継見てたんだよ、バイト先のモニターで」

そう言って目をそらす。

「へぇ、見てたのか、へぇ・・・」

昨日のことを思い出した。

「あの・・・あれ、テレビ中継されてた?もしかして」

現地のモニターにしか映ってないと思ってたんだが(もちろん多少の映像は覚悟してたが)テレビでもか?

優二は目をそらして首肯した。

「そ、そ・うか」

・・・・まあいっか・・・仕方ない、俺はあそこに一緒にいただけだし。

忘れよう、うんそれがいい。


そうこうしているうちに楓がいる駅に着いた。

「おはよう~」

「おはよう」

「お・・はよう?」

俺、ビビってるようだ。

「??なんで挨拶が疑問形なの?」

楓が解らないといった具合で聴いてきた。

あ、これはもしかして観てない?のか。

「いや、ちょっと考え事してたんで、深い意味はないんだ、ごめん。

改めておはよ~~」

「あ、う・うん、おはよ」

そのまま学校まで他愛もない話をして過ごした。


学校に着いて教室へ。

教室に入ったと同時に異様な雰囲気を感じ取った。

中心にいるのは平君で、いろんな輩に質問攻めになっていた。

曰く

なぜプラチナシートに留学生と一緒だったのか。

なぜあんなに親密なのか。

付き合っているのか。

彼女たちとどこまでいったのか。

彼女たちの3サイズは。

等々と。

最後は関係ないんじゃないかと突っ込みたくなったが。


そうこうしているうちに、入口近くで黙って聴いていた俺も見つかってしまい、ターゲットにされてしまった。

そりゃそうだ、俺も多少映っていたのだろうから。

平君としてはターゲットが移って多少安堵していたが、男子の追求から女子からの追求へ変わっただけなので、逆に困ることになった。

「おい、川田、あの娘たちとはどうなってんだ?」

「どうなっていると言われても、護衛とかの依頼で時々街に出かけているだけだけど」

「じゃあ、昨日の野球観戦はなんだ?」

「あれはエレナたちが親父さんの知り合いから貰ってきて、生で見たことないから見たいって言ったから一緒に行っただけだよ、まさかプラチナシートとは思ってなかったけど」

「付き合ってるのか?」

「・・・いや、それはないよ。

元々、オジさんの伝手で護衛のバイトしたのがきっかけだっただけ」

「3サイズは?」

「・・・いや、そんなの解るわけ無いでしょ?自分で聴いてくれ」

何なんだ最後の質問は。

そのあと、ホームルームのチャイムが鳴るまで質問攻めになってしまった。


月曜日朝からの授業はいつもならば気怠いんだけれど、今日ばかりは助かった。

静かなのがこんなに気持ちを落ち着かせるとは。

いつもと同じなのだろうが、気付かないものなんだと改めて気付かされたよ。


そして賢者モードに入ったまま昼休みとなった。

「さあ、行くか。

下僕の60分モードへ」

平君へ促すと苦笑気味に笑っていた。

食堂に着くと昼食中の4人が。

俺たちも食事を取ることにした。

離れて食べると優二のライフポイントが減りそうだったので、同じテーブルに掛ける。

対面で座るつもりだったけど、何故かエリーサが平君を隣に誘った。

俺もエレナに引っ張られて隣になり、優二と楓がペアとなった。

どうしてそうなった?と思えるくらい自然に分かれてしまい周りの視線が・・・痛い。

俺のライフポイントもガリガリ削られていくようだ。


飯を食べ終わって喫茶側へ移動。

「二人とも聴いたわよ~~、立派なナイトだったらしいじゃない?」

楓がニヤニヤしながら言ってきた。

聴きやがったか、くっそ~

平君はまだ会話に慣れてないため顔を赤くするだけだ。

とりあえず反撃をしとく。

「あれで手が動かなかったら男じゃないだろ。

そんな奴、楓だったらお断りだろ?」

「まあ、そうだけどさ」

よし、楓の出鼻をくじいたぞ、これで追及は無しだな。

あとはエレナ・エリーサ姉妹の対処だ。

「二人とも楓と同じ考えだろ?」

「そうね、あの時はとても頼りがいがあったわね、と言っても一瞬の出来事で動けなかったと言ったほうが正解かも」

「私も視界には入ってたけど、ただボールが近づいて来るのを見ていただけだったわね。

二人が止めてくれなかったら直撃コースで今頃どうなってたか」

「「まあ、その時は責任取ってもらったけど?」」

「「シンクロすんなよ!」」

思わず2人で突っ込んでしまった。

周りからは黄色いこえが飛んでくるし、勝手に美化されてるし。

なんかどっかの王子様っぽいイメージにもなってるし、勘弁して。

昨日のことはもう学校でバレているっぽいから、これ以上傷が深くならないようにしようと誓った。


と思っていた時期がありました、5分程前に。

「ねぇねぇ、俺たちのほうが護ってやれるぜ?

腕っぷしも上だし」

声がした方を見ると、2年生だと思われる男3人組が立っていた。

登場するだけで黄色い声援を受けるぐらいだから、有名なのだろう、容姿の面で。

確かにイケメンだ、どっかのアイドルグループかよって言いたくなるくらい。

護衛兼ボーイフレンドの事を人づてに聴いたんだろう、名乗りを上げたという事になるのかな?

姉妹は冷めた目で見て、1年生のクラスメイトは誰?という目で先輩を見ているが、容姿の面で圧倒されているようで誰も声を出さない。

俺と平君は黙って成り行きを見守る。

あの2人の留学期間は来年の8月までだから、2年生ならば問題なし。

沈黙を破り最初に声を発したのは勿論あの姉妹だ。

「あなた方は誰ですの?」

エレナが感情を込めていない声で問う。

「俺たちは2年の普通科の者なんだけど知らない?俺たちの事」

何か変なポーズしてアピールしてる。

それがいつものきめポーズなのか黄色い声が飛んでいるぞ。

「知らないわよ?誰?」

エリーサが答えた。

「そうか〜、俺は烏丸って言うんだ、この2人は山科、久我(こが)だ、よろしく」

1人ずつちょっとした決めポーズで挨拶する。

ちょっとウザい、母さんが嫌うタイプだ。

「俺たちと付き合ってれば将来玉の輿かもしれないぜ?あくまで候補だけどな」

周りには憧れのため息と、失笑の空気が流れた。

失笑の空気ってのは、もちろん1年生の姉妹を知っている人々の事だけど。


「貴方達、面白い冗談言えるのね?」

空気が一瞬で変わってしまった。



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