2-40・・・2学期と再会と
ショッピングモールでの騒動を少し。
俺と優二に吹っ飛ばされたオッさんは5秒程放心状態だったらしい。
だからトータル10秒程になるのかな、夢の中では大体2ヶ月近く過ごした事になるのかな。
根っからの悪者じゃなかったのかもしれない、たまたま理不尽な事を体験して衝動的に切れたのかも?
しかし、自分がされたからって他人、それも自分より弱い人間に当たっていいって事にはならない。
しばらく反省してもらおう。
凶器等は持ってなかったようで、裁判になっても経緯から執行猶予付きになるかも、前科は付くけど。
しっかり反省してもらって社会復帰してもらいたい。
それはいいとして、あの日の騒動でヒーロー探しがSNSで盛り上がっているようだ。
たかが5秒程度で、それも警備員が周りを取り囲んで(大体5mは離れていたと思う)の大立ち回りだったから、ムービーを撮っていたとしても俯き加減だったし、動きも素早かったからブレまくりの画像しか無いはず!
その証拠に街を歩いていても何も無し、もちろん学校にも問い合わせ無し。
テレビもしばらくはこの話題でいくだろう。
夏休みの間で世間の関心が他に移ってくれることを祈る。
夏休みのバイトだけれど、あれから数件依頼が来た。
あの事件の立ち振る舞いが、警察関係の上層部から漏れたのだろう、福岡行くならいい護衛がいるよ、と。
そんな訳で外国の御子息・息女ではなく、日本の良いところの金持ちの未成年が大半だ、残りは在日している外国の人。
英語もペラペラであるとの話も広がっているようだ。
みんなの詳しい素性は教えてもらえなかったけれど、昔で言うところの華族様の子孫クラスと思われる、喋り方が俺達と違うし。
夏休みの福岡観光と一般人との交流を兼ねているのではないかと思われた、じゃないと若手のSPで良いだろうし。
優二と楓は補習と本来のバイトの関係で出来なかったけれど、俺は悲しいかな全くのフリーだったんで請け負った。
知美と一緒にペアとして参加し、お嬢さん相手にお手つき等無いですよ〜というアピールもバッチリだ。
そんな感じで充実した長い休みを過ごせた。
ちなみにバイト代20万超えたので知美と両親にプレゼント買ったよ。
残りは貯金ね。
時が少し流れ2学期が始まった。
普通に学校へ行って始業式出て、そのまま授業。
やはり高校は違うね。
夏休み補習に参加していた生徒はただ9月が始まっただけの感覚だろうと思う。
俺は長期休みでたるんでいる頭をフル回転させるために、精神集中させていた、多分意味ないけど。
昼休み、教室で弁当食ってぼけっとしていると、クラスメイトの奴が飛び込んできた。
「おい!普通科のクラスに留学生が2人入ったらしいぞ!」
全員、一斉に食い付く。
「おいおい、兄弟、それは女なんだろうな〜?」
「ふっふっふ、兄弟、当たり前じゃないか。
じゃないとこんなに慌てて無いぜ?」
一斉に歓声が上がった。
「いやいや、皆の衆待て待て、大事な事聴き忘れてるぞ!?」
一斉に静まり返る。
代表者が一呼吸置いてそっと質問を投げかける。
「・・・その子達可愛かったか?」
「・・・・・」
報告者は深呼吸して落ち着いた後、答えた。
「パツキンで無茶苦茶きれ可愛かった!」
その日一番の盛り上がりを見せた。
・・・お前ら何を盛り上がってんの?このクラスにも女子5人いるだろ?
ほぼ男子校に近い学校の闇を見た気がした。
昼休みは残り20分程。
留学生が食堂にいるとの噂が流れた為、一目見ようとみんな一斉に食堂へ。
流れについて行けないのが10名程教室に残った。
留学生はそのうちどこかですれ違うだろう、敷地内にいれば、
そう思って残りの休み時間を過ごしていた。
そう言えば5時限目は実習作業だったな、着替えに更衣室へ行かないと。
残ったクラスメイトと一緒に、離れた校舎へ移動する。
しばらく歩くと前方に人だかりがあった。
ああ、パツキンの留学生を囲っているのか〜〜。
どうせ見えないだろうし、時間も無いし、そのままスルーして授業へ向かった。
今日は溶接の授業だ。
アーク溶接のレクチャーを受け、各自自習だ。
板に真っ直ぐ溶接をするだけの作業を永遠と行う。
単純作業だけれど、しっかりと基礎をやっとかないと溶着しない。
溶接棒を5本程使用したところで、綺麗な溶接波に出来たと思う、初日としては及第点か。
みんな各々練習中で似たような成績だ。
班ごとに作業している為、順番が回って来るまでちょっと休憩するつもりで溶接面を外し空気を吸いに外へ。
「「剣真!」」
俺の名前を呼ぶ声が聴こえたんでそっちの方を見た。
そこには若い先生と留学生らしき2人の生徒がいた。
金髪(パツキンの呼び方はやめた)だから留学生だろう、顔もアジア系じゃ無いしね。
校舎案内してんのかな?そういえば俺、名前を呼ばれたような・・・
「剣真!また会えた!」
周りを見渡すが、俺しかいない為
「俺ですか?・・・誰?」
どこかで見たような顔してるけど思い出せなかった。
『何言ってんの?!あんな熱〜い夏を過ごしたのに、忘れたの?私達とは遊びだったのね・・・』
ギョッとして周りに誰もいない事を確認しつつ、彼女達の顔をよく見てみた。
制服着てたのと髪型、それと化粧等していなかったんで最初判らなかったけど、そこにはエレナとエリーサ姉妹がいた。
今更ながらに記憶が一致したのだ。
「えっと・・・なぜココに?」
再会の第一声は間抜けなものだった。