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2-38・・・離脱

俺たちは現場の近くまで寄った。

警備員が数名取り囲んでいるけど、人質がいるから何も出来ない状態のようだ。

当然か、もし何かあった時に責任は取れないだろうから。

「さて、どうしようか・・・」

「俺が囮になるから、剣真は隙をついて突っ込んでくれないか?」

どうやって?と聴きたかったが、そろそろ女の子も母親も限界だろうと思い、黙ってうなずく。

それを確認し優二は犯人の真正面側へ向かった。


さてと、もう時間がないから今やれる事をやるか。

「知美」

『はい、何でしょうか?』

「あのオッさんにリフレクション掛けられないか?」

『それは可能ですが、あの人も相当辛い目に遭って追い込まれたのかも知れませんよ?

もしかしたらカウンター食らうかも?』

そうなのだ、俺の能力は勘違いしたり、悪意や嫉妬で行使出来ないように楔を付与している。

そうなると・・・ペナルティとして、直前に発動させようとしたリフレクションを自分が受ける事になる。

自分への戒めのつもりなのだ。

「もし酷い目に遭っていたとしても、それを他人にやっても良いという事には繋がらないよ。

それも抵抗出来ない子供とか女を狙うなんて許せない。

だから発動させてくれ」

『解りました、それでは今やっている事を逆に体験させますね。

リフレクション!』

その掛け声と同時に動いていたのは優二だった。

囮となり犯人の注意を浴びてくれた。

そのコンマ何秒かの後に俺が動き、残り1mの距離で背中の丁度正面から見ると肺に辺りに気功をぶち込んだ。

すでにリフレクションで夢を見ていたので、抵抗する事なく吹っ飛ぶように前のめりに倒れた。

優二が倒れる前に女の子を掴んでいる腕を外し、そのままヨロけないように庇いながら母親へ渡す。

この一連の行動は5秒にも満たない為、みんな唖然としている。

この意識の隙間を縫って、そのままの勢いで俺たちは全くの逆方向へ逃げた。

人混みに入れば何とかなると思ったのだ。

その後タクシーで降りた場所で落ち合い、ほとぼりが冷めるまで目立たないように帽子を購入して、イートインコーナーで外を向いて座っていたのだった。


一連の流れを見ていたエレナ・エリーサ姉妹とヴェンダーは一瞬で終わった出来事にびっくりしていた。

楓は何となくそうなるだろうなぁと思っていたのだが、後の3人は何が起こったのか理解するのに時間が掛かっている。

すでにSPに囲まれているので少しの意識放棄は問題無いので楓も放置中。

それよりも、私だったら?

あの2人のどちらかの役割をあの時間で果たせたか?

答えは・・・可であった。

しかし、あの短時間の打ち合わせであそこまで連携が出来るか?

答えは・・・不明。

「私もまだまだかもしれない・・・」

小さく呟くのだった。


暴漢者が警察に連れていかれ、周りの目撃者に事情聴取が始まってしまった。

私たちはSPに護られながらその場を後に出来た。

あの2人に残りの時間の接待を託されていたので助かったよ。

あの人質になった女の子のその後が心配だったけど、今は任務を優先にしないと。


「あの、ごめんなさい」

エレナが詫びてきた、エリーサも同様のようだ。

「なぜ謝るの?放棄したのはこちらなのに」

「人種を差別する言葉を言っちゃって・・・」

「あれがテロで貴方達を狙っていたのかもしれない時に、他人を助けようとするのは論外ね。

護衛失格だわ、だから気にしないで」

「私たち日本人を誤解していたわ、まだまだ勉強不足ね。

パパ達の思いが何となく解ったような気がする」

「そう言ってもらえると嬉しいわ、あの2人にもそう伝えておく」

「俺からも言っておいてくれ、また会おうと。

それに、また楓にも会いたいしな」

「・・・了解」

「そうだ、来年もし会えたら浴衣?着物?で来てくれよ。

今回京都に行けなくてさ」

やっぱりチャラ男だった・・・

ため息をつきながら写真を見せる。

「はいこれ、プリクラの写真。

私はドレスのコスプレだけど、エレナ・エリーサ姉妹は浴衣だから充分でしょ?」

ヴェンダーは3人を見比べ、頷きながら納得したように手帳に挟んでいた。

「2人共いけてるじゃないか、似合ってるぜ!」

サムズアップしながら笑顔で語りかけられた2人は、イラッとして殴り掛かっていたけど華麗に避けられていた。


それから時間が許される限り遊びまくって観光は終了した。

帰りも大型タクシーにてホテルまで。

入り口まで送り届けて任務完了。


駅まで歩いている途中、ちょうど人がいない場所で、

「今日一日疲れたなぁ・・・」

と大きめに独り言を言ってみる。

「・・・そこにいるんでしょ?」

振り向くと剣真と優二がバツが悪そうな顔で立っていた。


「ごめんな、途中退場しちゃって」

「仕方ないわよ、逆にあれで我関せずなら、今後の付き合いも考え直さなきゃと思うわよ」

「「ははは・・・」」

しばらく沈黙が続いた後、

「あの女の子を助けてくれてありがとう。

怪我等大した事無いようだけど、しばらくの間フラッシュバックはあるでしょうね」

精神的な障害が残らないように祈るしかない3人であった。


「ああ、それから日本人に対して考えを改めるって言ってたわ、姉妹の方ね。

ヴェンダーはまた会おうって」

楓からの伝言を聴いて、俺たちの行動に多少なりとも影響があったんだと思うと、悔いは無いかな。

バイト代放棄することになっちゃったけどね。

優二も納得顔だ。


「それじゃ帰ろうか、お腹すいたでしょ?

タダ働きした若人にお姉さんがラーメンでも奢ってあげる」

「「ゴチになります!!姐さん」」


そう言って駅に向かうのだった。

ちなみに、楓のプレゼントは別れ際に渡していた。

俺は気付かないフリしてたけどね。

知美への指輪は寝る前に渡したんだけど、はしゃいでくれたものだから寝るのが相当遅くなってしまった。

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